高速ダイオード
商用周波数用の、いわゆる一般整流ダイオードを30KHzの電力整流用に使ったらどうなるか?
答えは「サーマルラン」である。一般整流用ダイオードは逆回復時間が長く、逆電圧VRが掛かってもしばらくの時間、逆方向に電流が流れ、VR×Iの電力損失により素子温度が上昇する。場合によっては、素子破壊に至る高温まで過熱する。これがサーマルラン:熱暴走である。
高速整流ダイオードFRDはスイッチングコンバータの出力側整流ダイオードなどに使用される。最近では50ns以下の素子も楽に入手できる。しかし、逆回復電流の直接観察は意外に難しい。数ns程度の時間尺度になると、サンプリングオシロスコープなどの高級機材が必要な上、電流測定上の問題がある。したがって、通常の実験環境ではこのような機材を使えることは稀である。逆回復時間は、電圧のスイッチング時間に依存して、異なる回復パターンを示す。理想的には1ns以下のスイッチング時間で逆回復の様子を観測すればよいのだが、適当なスイッチング素子が簡単には手に入らない。
逆回復時の電荷の移動は、ダイオードPN接合容量と似たような挙動を示す。逆回復時間はキャリア寿命と密接な関係があるので、金や白金などの熱拡散しやすい重金属を再結合中心としてドープされているらしい。
低い電圧の整流用途ではショットキバリアダイオードSBDも良く使われる。逆回復時間は極めて短いとされるが、接合容量が小さいとは限らない。
回路シミュレーションプログラムSPICEでは、ダイオードのトランシット時間Ttを指定することにより、任意の逆回復時間を持つダイオードの整流挙動を計算できる。スイッチング波形の特定位置に電流スパイクが出るはずである。
『人気blogランキング』の「自然科学部門」に登録しています。1日1回投票をお願いします。【押す】
「電子回路」カテゴリの記事
- 電流増幅器(2012.04.18)
- 高電圧回路(2012.04.10)
- 金属箔抵抗(2012.04.07)
- SW電源(2012.04.06)
- アナログ回路の信頼性(2012.04.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント