実質ポンド
通常弓(リカーブボウ)の表示ポンド数(弓の強さ)はメーカー指定の長さまで引いたときの張力の強さで、例えば32LBS@27インチのように表示される。その強さのばらつきは親切なメーカだと範囲が書いてある。
引き尺が1割少ないと、どうなるか。多くの弓の最大張力は、ほぼ引き尺に比例するので、表示ポンドの1割マイナスである。しかし、射の際の実感はほぼ矢の速度の2乗、すなわち、矢の質量と弓の効率を一定と仮定すれば、
(引き尺-20cm)×実引き尺/公称引き尺×公称ポンドになるので、
脇から測った手の長さの短い人はダブルパンチで速度がでにくい。引き尺の影響は公称引き重量に直接比例するが、アーチャーの実感である照準変化は弓が与えることができる弓の張力の実質引き尺までの積分値に比例するので、さまざまな簡略計算法が示されている。
この蓄積エネルギーが矢(質量15~20g程度)に伝達される効率ηは競技用の弓で90%前後、古い構造の弓で60%前後と私は間接的に計測している。
初心者用の弓は昔の弓に比べて、伝達効率ηは改善されていると思われるがそれでもηの値がやや小さく、ポンド数が競技用の弓に対し1/2から1/3で、矢も重いので矢速がでにくい。小学生だとまだ手の長さも短いので、初速30m/sは出ていない感じだ。我々の初心者講習会用の矢は安価でかつ比較的軽いオールカーボンファイバーパイプの矢を使っているので、それでも遊園地などの遊びのアーチェーリーに比べて別世界の矢の弾道となる。
数本のリカーブボウの張力Fと引き尺Xの関係を調べた結果、FXの面積(蓄積エネルギー)は概略、(0,0)の点と(公称ポンド,公称引き尺)の点を結ぶFX直線上で、ストリングハイトから実質引き尺まで長さ積分をした値となる。相当強い弓でその値は50Joul程度である。ちなみにBB弾を使うモデルガンは0.5Joule程度である。
20cmは正確な表現をすると、弓を押す左手の接触点から、自由状態の弦の高さ(ストリング・ハイト)である。ストリングハイトが低いと、同じ引き尺でも加速距離が稼げるが、矢先の支点であるアローレストと加速終了時の弦の位置関係が短くなるので、射出時の方向性がストリングハイトに反比例して悪くなる。
マイナースポーツであるアーチェリーの普及は、アーチェーリーの醍醐味を味わえる道具と調整済みの道具による初心者講習会がとても大切である。もちろん、コストパフォーマンスで道具を準備しております。
射場の昨日の10時の気温は27度、湿度は相当高かった。50-30m72射で511点。
『人気blogランキング』の「自然科学」部門に登録しています。今日も元気に【押す】
よろしくお願いします。
« ダッチロール | トップページ | トランジスタのhFEの測定 »
「アーチェリー」カテゴリの記事
- 和弓と洋弓の違い(2012.03.07)
- インドアアーチェリー記録会(2012.02.26)
- 複合弓の張力(2011.12.10)
- 照準器の設定(2011.12.03)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント