鳳・テブナンの定理
私は当然日本人なので、鳳・テブナンの定理の用語を好んで用いる。Thevenin's theoremを使う機会はアナログ回路エンジニアにとって実践で使用する機会は意外に少ない。
使用する場合の代表例の一つが、不平衡ホィートストンブリッジの中点電圧間の抵抗RLを接続したときの電流値を計算するときに使用する。テブナン定理を2回使用して,2つの脚の電圧と、内部抵抗に変換する。その後、2つの電圧源と直列になる3つの抵抗をオームの法則で解く。この方法によれば、この問題を1分間で数値計算できる。
不平衡ホィートストンブリッジの中点間を流れる電流の大きさを計算することは、ブリッジの平衡状態の検出感度を計算する上で避けて通れない。しかし、この問題を、オームの法則とキルヒホッフの法則で一般解を計算すると30分では厳しい。
テブナンの内部抵抗の概念は、例えば、トランジスタ増幅器の出力抵抗の概念に繋がる。テブナン定理の意味を理解しておれば、トランジスタ増幅器の出力抵抗やその負荷効果を簡単に計算できる。
しかし、定理の証明過程をきちんと述べた本は非常に少ない。一度でも証明過程を理解して辿ってあれば応用が利く。納得したら忘れても良いが、回路理論の定理など納得する過程を経験しなければ、自信を持って使うことはできないと思う。
自分がきちんと納得していない理論なり手法を振り回しても、自分にとっての進歩はない。工学は先人の知恵を検証しながら使うべき技術である。自分がそれなりに辿って納得した手法を駆使し、その上で発展させることが工学者の使命であると思う。
今の時代、納得して理解して技術を活用する教育が希薄ではないかと危惧している。論理思考の連鎖でひとつの技術を教える時間が足りないのだ。
『人気blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も元気に一票を 【押す】
よろしくお願いします。
「電子回路」カテゴリの記事
- 電流増幅器(2012.04.18)
- 高電圧回路(2012.04.10)
- 金属箔抵抗(2012.04.07)
- SW電源(2012.04.06)
- アナログ回路の信頼性(2012.04.05)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
貴殿がそんなに太っていたとは想像もできません。
それにしても適正な体格になって羨ましいです。やはりアーチェリーのお陰でしょうか。
小生、体重は減ったものの全体が減衰、筋力も衰えています。何もトレーニングしてないためかも・・
投稿: mako | 2006年11月 7日 (火) 14時36分
mako様コメントありがとうございます。
1km歩くのが大変なところまで、途中太っていました。ぶよぶよの筋力なし。ズボンはサスペンダー。プールでの水中歩行がきっかけで、今の体型に戻りました。
投稿: 5513 | 2006年11月 7日 (火) 15時32分
はじめまして。
私は静岡に住む24歳の男性で、いま陸上無線技術士の資格を勉強している者です。
ブログを拝見していて、電子回路に非常にお詳しいようなのでもしよろしければわからない問題などの相談にのって頂けないでしょうか?
当方、電気回路に詳しい人間が回りにおりませんので、多少なりともお力になって頂ければと思ってコメントさせていただきました。
お忙しいかと思いますが、もしよろしければメールか、もしくはこのブログ内でお返事していただければと思います。
よろしくお願いします。
投稿: nori | 2006年11月12日 (日) 01時03分
nori様、ご来訪ありがとうございます。ブログコメント欄で回答できる範囲でお答えしていくつもりでいます。私は帯域幅積25MHz以下のアナログ回路屋ですが・・・。 管理人より。
投稿: 5513 | 2006年11月12日 (日) 01時29分
ありがとうございます。
早速なのですが、http://www.nichimu.or.jp/kshiken/pdf/h15_shiken/riku-gi-1/kiso/kiso.pdf
のA-6と、A-7の二番目の回答方法が検討すらつかなくて弱っています。
A-7のpf1についてはわかるのですが、pf2になると、R、L、Cが並列で、どういう道筋を考えればいいのかわかりません。
説明できる範囲で結構ですので、ヒントをいただけないでしょうか。
>5513
ともに、jωL、1/jωCの知識を問う問題です。
A-6:π/2の位相差は純虚数?、実数?。この直並列計算を式のまま計算し、I2とVの関係を求める。意外に面倒な計算。
A-7:力率、jωLの計算はできる模様です。
力率補正回路の問題です。jωに関する2次式となりますが、j^2=-1になりますから、その後で実部と虚部に分けて、力率を計算してみてください。pf2=1になることもあります。
投稿: nori | 2006年11月13日 (月) 23時37分
なんとか回答までたどりつくことができました。以下のURLに解法を載せました。正しい道筋を得られていますでしょうか。
http://i139.photobucket.com/albums/q317/sainappu/kairo.jpg
投稿: nori | 2006年11月16日 (木) 04時15分
nori様
検算はしていませんが、私も本を見ながらこの手順で解きます。
試験の成功を祈念します。
投稿: 5513 | 2006年11月16日 (木) 05時09分
nori様
この問題、本年度の1陸技の試験問題(無線工学の基礎)だと、偶然に発見しました。25問150分のようなので、結構時間が厳しいと思います。答えはA-6が2、A-7がpf2=1を含む3と発表されております。
A-15はウィーンブリッジOSCとも呼ばれています。楽しませていただきました。
投稿: 5513 | 2006年11月16日 (木) 18時10分
回路の方はこの問題が解けるようになって大分自分のものにできてきたように感じます。ありがとうございました。
投稿: nori | 2006年11月17日 (金) 03時17分
ご退職おめでとうございます!
長いお勤めご苦労様でした。
ブログ拝見いたしました。
私が知らなかった5513さんの様々な趣向・考え方等が垣間見え、非常に興味深く見させて頂きました。
物事に対する、真剣でまっすぐな姿勢を見習っていきたいと思っております。
最後になりましたが、退職後のますますのご活躍とご健康をお祈り申し上げます。
いつもご迷惑をお掛けしてばかりの
OK光道より
投稿: OK光道 | 2006年11月22日 (水) 10時26分