L負荷のスイッチング
インダクタンス性の負荷をオン・オフする機会は結構ある。ソレノイド、電磁弁やパルスモータなど電子回路で制御したいアクチュエータの多くは強い物理力である電磁力を使用しているからだ。
←写真はLR負荷有限の立ち上がり、対下がり速度で重い負荷を駆動した波形。上段駆動波形。下段コレクタ電圧波形(20V/div)
純インダクタンスLと両端電圧V、インダクタンス電流I、時間Tの間に成り立つ法則は、電圧の向きと電流の向きを逆方向にとって
V=L・dI/dT である。どの項が原因でどの項が結果であるかに関係なく、この式が成り立つ。
早い電流の時間変化があれば、高い電圧が発生する。電圧をかければ電流の時間変化が生じる。
インダクタンスはコイルを巻いて製作するので、無視できない抵抗分Rがある。インダクタンスを電子スイッチでオン・オフする場合を考えてみよう。電子スイッチがオンになると出だしの電流変化はdI/dT=V/Lで、L/Rの時定数の数倍の時間が経過するとI=V/Rになる。
インダクタンスはターンオンの時には穏やかである。ゆっくり電子スイッチをターンオフさせるなら、V=LdI/dTで予測される電圧が電子スイッチに発生する。十分早いオフ・スイッチングを行うと、電流変化速度が速いので、電子スイッチの降伏電圧の電圧Vmが発生し、dI/dT=Vm/Lとなる。高い電圧で電子スイッチが降伏し、インダクタンス電流はV/Rの初期値から急激に0電流へ変化する。
この状態は、電子スイッチにとって好ましい状態ではないので、インダクタンスに逆並列ダイオードを接続しておく。すると、電子スイッチの電流が突然0になっても、ダイオード経由で循環電流を流すことができる。インダクタンスを流れる電流は急変できないので、ダイオード電流の初期値もV/Rである。
簡単な微分方程式になる問題であるが、途中の論議を数学抜きでやろうとすると「逆起電力」などの新たな用語が必要となり、そしてわからなくなる。
RCの1次遅れ回路は良くわかるが、インダクタンスになるとその電流変化がわからなく人が多い。インダクタンス回路のオフ時は初期値が有限で、かつ電子スイッチが急速にオフしたときの電流経路が明示的に記載してなければ、動作を理解できるものではないと思う。
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コメント
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高校のデキン科卒業して40年の俄技師です。
現在EVモータ(PMモータ)の巻線疵検出を「逆起電力」を使って顕在化が可能かチャレンジしたいと考えています。
技術力が伴わないので、先ずはぶっつけ本番で10Aで約250Vpが得られました。
本文を参照してみて、検出に必要な電圧は約10倍以上のため、近日中に100Aほど流して実験しようと考えます。
結果がよければ報告したいと考えます。
投稿: 伴 晴男 | 2007年10月26日 (金) 18時42分