最終稿
紙ベースの原稿とその電子データのCDを同封し、添え状を入れ、EXPACK500の封を閉じた。
これで、執筆は終わり、本になるまでの一連のプロセスは出版社に委ねられる。
今度の著作もアナログ電子回路に関する。新しい試みとして、手解析と実験とシミュレーションをワンセットにして章を構成したことだ。主要部分は1回路1章で3要素を同時に記述する。全15章、原稿ベースで200pを少し越える。
それぞれに特有の課題をもつ基本的回路を題材に、解析・設計・実験およびシミュレーションを対比させている。このような形式の書籍は非常に少ない。著者の力量と解析精度がそのままでる。題材は、アナログ電子回路における基礎的な課題が表面化するように回路定数と回路構成を選択した。
基本的回路であっても、解析とそれに基づく設計過程を明らかにし、ほとんど同じモデルでのシミュレーション結果を対比させることは有意義である。アナログ電子回路においては、とくに若い世代のうちは、基本的な問題、課題を含む回路を深く理解し実用化することが重要である。ハンドブック的知識より優先度が高いと考える。
解析・設計・実験結果・シミュレーションを並べてみると、結果の解釈段階での問題部分が見つかることもあった。
最後まで扱いを迷ったのは、対数増幅器の利得係数の10%の相違である。観測された実験結果と設計値は見かけ上一致していたが、設計温度と実験温度の相違を考慮すると食い違いが大きくなり、確証できない領域に入っている。
実験の便宜上、小信号トランジスタのコレクタ電流を10mAまで使う設定としたので、トランジスタの接合温度が30度ほど上昇していたのだ。0.1mAから10nAの領域では理論値とよく一致していた。
最終稿を送付して、疲れがどっと出たアナログエンジニアである。
企画立案から、章構成のイメージ作成、出版社へのプレゼンテーションが平行してすすんだ。今回の著作の売りは、実験結果との対比であるので、11回路と実験用測定器の自作も行った。それを含めて3ヶ月。あっという間に経過した。
今回の著作スタイルは、アナログ電子回路の教授者のための実験ネタの形式にもなっている。特殊機材、特殊部品を使用せずに見せることのできる世界を提示したつもりである。
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