接合電圧の温度係数
シリコン半導体の接合電圧はふつう0.5~0.9Vの範囲で使用される。
その接合電圧の温度係数が負の値を持つことはよく知られているが、文献によって-1.7~-2.2mV/℃の値が示されることが多い。
実は接合電圧の温度係数は、大きく接合電圧に依存する。接合電圧が大きくなると温度係数は小さくなる。
-40~+100℃の範囲でダイオードの接合電圧を様々な電流条件で実験したことがある。
シリコンダイオードでの実験式はΔV/ΔTj=(-1.25+Vj)/T(Tは絶対温度)を得た。ダイオードに流す電流に応じて接合電圧が変化し、高電流密度になれば負の温度係数の絶対値は小さくなる。接合電圧Vj=0.65Vで温度係数は-2mV/℃になる。電流が小さければ温度係数の絶対値はもっと大きくなる。電流密度が高ければ、小さな絶対値の温度係数になる。拡散電流が支配的か、再結合電流が支配的かでも、Vj換算で数10mV変化する。
この概算式は、多分今は九州に居られるYさんの半導体物理による解析で妥当性を検証できた。
シリコン接合の温度係数は一言で言うなら約-2mV/℃であるが、広い範囲の電流密度条件では倍近く変化する。
シリコン接合の温度係数は、大きくVjに依存する。
観測されるシリコン半導体のpn接合電圧の温度依存性は大電流領域になると大きな+の温度係数を持つ寄生抵抗の影響で、絶対値が低めに観測されることもある。
半導体は大きな温度依存性を持つ。この対処方法が、実回路での成否を分けることもある。
理論の検証のある実験式は貴重であると考えるアナログエンジニアである。
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