弛張発振回路
学術用語では「弛張」、英語ではrelaxation oscillator、私はそれを承知のうえで直訳して「弛緩」の言葉をつかう。
無安定マルチバイブレータは多く対称回路として設計される。ノイズもなく完全に対称であれば2つのトランジスタはDC的に安定な両方ONの状態となる。
現実にはこの状態は極めて稀にしか生じない。
しかし、回路シミュレータでは簡単に発生する。発生しない方がおかしいのだ。
2石無安定マルチバイブレータは、回路規模が小さく手軽に組めるので某大学での卒業研究の題材になった事もある。
このタイプの弛緩発振回路は、何もしないでも各部の波形が時間的に変化するので面白くい。
そこで、
回路シミュレータにこの回路を解析させると、期待する時間変化はふつう生じない。起動しない。発振しないのだ。
回路シミュレータは時刻0で直流点を計算し、その状態から時間変化を逐次計算していく。
私の起動方法を述べる。
時刻0で0電圧の電源を使用する。同時に抵抗か容量に0.1%程度の非対称性をきちんと定数として与える。
その後、短期間で電源電圧をVCCに立ち上げる。
トランジスタにノイズを入れるか、適当にトランジスタのデバイスパラメータを変えても良いが、面倒なので上記の方法で起動する。
回路シミュレータの使い始めのときに、多くの人が解析しようとする回路である。しかし、そこには数値計算の落とし穴がある。そしてベンダーに問い合わせるか(ましな方)、回路シミュレータの使用を諦める。
私は回路シミュレータ無しでは、いまや回路設計者として生活できない。使い方を間違わなければ、便利で自分の能力を1桁UPできる。
回路シミュレータは様々な価格帯の物が市販されているが、基本的な使い方は同じである。
私はプロを自称しているので、個人としてもプロ用のCAE:SPICEを使用している。CAE(コンピュータ エイデッド エンジニアリング)ツールなかでは比較的安価である。
回路シミュレータの普及を願うアナログエンジニアであるが、その前に計算すべき回路の定数を定め、概略計算・波形予測できる基礎技術がないと数値計算は始まらない。
だけど、その設計手法を伝えていきたいと願う。
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