マイクロパワー回路
汎用の個別部品を使って組むアナログ電子回路で低消費電力化を図る。これが消費電流数10μA以下で動作させるマイクロパワー回路の正体である。
回路電圧は数V以下で、当然、周辺回路の抵抗値は性能の許す範囲で高抵抗を用いる。ICもそれ相応の物をつかう。
半導体のスケーリング則を考慮したよりも少ない電流で回路を動作させるので、マイクロパワーOPアンプは高速性は望めない。トランジスタの使用条件もデーター資料に記載されているよりもかなり低い電圧電流条件である。
バイポーラトランジスタを使用した回路では、VBE+飽和電圧+αの電圧がないと回路を組むことが出来ない。
センサとのインターフェースが多いアナログ回路では、センサインピーダンス一定のまま低電圧化を行うと信号レベルも比例的に低下する。多くの実用センサでは、その時代時代の加工技術の許す大きな寸法比を用いているので、信号レベルの低下、すなわち外来ノイズに対する許容値が厳しくなるとともにS/N比の低下が生じる。
集積化する際のプロセスを低電力化に特化すれば、ある程度の条件緩和が可能と考えているが、集積回路寸法を小形化すれば高抵抗はより創りにくく、半導体の寸法縮小によりDC特性は得にくい方向である。能動素子の微細化に伴う静電耐力の問題も残る。
最近、いくつかの学会誌で無線を用いた「センサ ネットワーク」の記事を目にしている。しかし、センサ/計測の本質的問題(と考える)S/N比やアナログ回路、電力供給の問題を扱っているケースはあまり多くない。
センサネットワークの議論は通信技術に指向しがちであるが、物理世界の宿命を背負ったセンサエレクトロニクスの世界にも目を向けていただきたいものだ。センサシステムがユビキタス時代になれば、新しい世界が広がることは確かである。しかし、大電力を使用して、例えば電磁場を時系列的に変動させて計測するセンサシステムも数多くある。そのような中でセンサネットワークシステムが実用になるには、電源の問題とセンシングのために必要となるエネルギー、耐環境性などの問題を直視する必要があると考えるアナログエンジニアである。
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