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2007年8月 1日 (水)

竹とんぼ

私が子供の頃、竹とんぼつくりが流行った時期があった。

よく飛ぶ竹とんぼの持ち主は栄光に輝く。人気者になる。

そして、周りの子供達はよく飛ぶ竹とんぼを作ることに精を出す。

必要な道具は錐とナイフ、材料は竹。

今だから説明できるが、翼は中心部の迎え角を比較的大きくし、外周は中心からの距離に比例して迎え角を小さくする。迎え角を大きく加工すれば、その反力で抵抗が大きくなる。飛翔は回転体のモーメントとで効くから、翼の外周の質量を大きくした方が、蓄積エネルギーが大きくなる。したがって、強度の許す限り、自分の加工能力の許す限り羽の外周を厚くした方が有利である。

しかし、子供の力では、軸を手のひらの中で擦りながら羽の回転数を限られたストロークの中で羽の回転数を上げなければならない。軸の形状も重要な要素である。

軸の長さと質量は飛翔の安定性に大きく寄与する。一種のスタビライザーなのだ。均一な太さの竹ひごでは十分でない。下側の質量を大きく太くした方が有利である。しかし、羽側の径を細くしすぎると、軸がすぐに抜ける。

子供の頃、中学生時代までは色々な試みを竹とんぼで行った。よく出来たものは、10m以上まで上昇し、穏やかに戻ってきた。試行錯誤で掴んだ自分流のバランス感覚、これは仮想現実では得られない実体験である。少しずつ改良を積み重ねて、肌でものつくりを支配する要素を受け止める感性がこの時代に養われたように思う。

当時にも羽だけ飛ばすプラスチック製の竹とんぼがあった。おなじ方式で、市販品の性能を上回る竹とんぼを作るのは容易ではなかった。

旧来型の竹とんぼは、今でも観光地のお土産としてよく売られている。そして、結構よく飛ぶ。このレベルの竹とんぼを作るのは容易でない。今の子供達で親が指導しない限り作ることはしない。遊びの中にも工学の原点がある。この経験のない子供達に、色々な理科教育の実験デモを見せても意味がすくない。のではないか。

おもちゃも含めて、デジタル、反応の速さと作戦を競うゲームの世界とは異なる鮮烈な世界が、手作りおもちゃにはあったのだ。

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