ドロッパ式安定化電源
RCからの電流をツェナーダイオードに流し,ほぼ一定電圧を得る。その電圧をQ1によるエミッタフォロワで低出力インピーダンス化して,負荷RLにほぼ一定の電圧VOを供給する。
ツェナーダイオードには矢印の向きに電流を流す必要がある。一方負荷(安定化電源から見れば出力電流IO)の1/hFE=IBもRCを流れる。
この回路は案外設計しにくい。最大出力電流IOが決まっていても,IBがhFEのばらつき,温度変化を受けるので,必要なIBの最大値(最悪値)と最小値の比は簡単に10倍を超える。
通常,Q1にはダーリントントランジスタ結線を使用するので,IBの最大値と最小値の比はさらに大きくなる。
この回路が動作するポイントは,ツェナーダイオードD1に規定以上,規定以下の電流を流し,予想される範囲のIBを確実に流せるようにRCの値を決めることにある。入出力電圧差(VI-VO)が小さいと解が存在しなくなる。大きすぎると安定化電源としての効率が悪くなる。
この回路の場合,VO,IOは与えられているが,RC,VIは自分で決める必要がある。起動時にはトランジスタのVCE耐圧は最大のVI以上である必要がある。VIの最大値が大きくなればQ1のコレクタ損失が増加するので放熱設計で苦労することになる。
この回路に,負荷電流制限回路を付加したものは小容量の実用回路となりえるが,その定数,部品選択は案外難しい。
RCの選択ができれば,アナログ回路設計者としてかなりの腕である。簡単な回路の割りに,設計上の相反する制約が多いので,実際には量産設計にはかなりの確認計算が必要なのだ。
部品数が少ない回路が,設計が易しいとは限らない。出力100Wなら,この回路構成を私は使う事はない。ばらつきの効果の予測と熱設計が煩雑で,しかも良い解が存在しないためである。
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