パワートランジスタ1
100Wのトランジスタを使って,100Wの電力損失がある回路を設計できるか?
答えは,普通否定的である。
パワートランジスタの許容コレクタ損失は,ケース温度25℃で決められている。
ケース温度を25℃には多くの場合保てない。
自然対流空冷であると,フィンの冷却能力(℃/W)が1℃/Wを切ることは実装上かなり難しい。
環境温度も25℃より高い50-80℃を想定する。
大抵の場合,コレクタはケースと同電位であるので,トランジスタと放熱フィンの間で絶縁シートを使う。
絶縁シート部分では,その熱伝導率に応じた熱抵抗がある。絶縁シートとトランジスタケース,絶縁シートとフィンの間にも接触熱抵抗がある。
量産ベースで考えるなら定格逓減も必要になる。
多くの場合,パワートランジスタは接合からケースまでの熱抵抗を元に電力定格が決められている。データシートで与えられたケース温度と接合温度の上限から熱抵抗を計算し,各部の熱抵抗を加算して,設計環境温度で接合温度が指定値より低くなるように,冷却条件を設定するのだ。
かくして,100Wのパワートランジスタは,どちらかといえば低い方の数10Wくらいの電力しか扱うことができない。
パワー回路では切実な課題である。
『人気blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【人気blogへ,押す】
« マークシート試験 | トップページ | IH鍋 »
「電子回路」カテゴリの記事
- 電流増幅器(2012.04.18)
- 高電圧回路(2012.04.10)
- 金属箔抵抗(2012.04.07)
- SW電源(2012.04.06)
- アナログ回路の信頼性(2012.04.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント