抵抗の定格
様々な抵抗器がつかわれているが,抵抗器には他の部品と同様に電力定格,電圧定格,電流定格がある。
電力定格がもっとも知られているが,使用温度がたとえば150℃で定義されているものもある。このような抵抗器で低角電力を消費させると表面温度は150℃になる。触手すれば火傷する温度である。したがって,定格電力までは使えない。環境温度が高ければ,その分割り引かねばならない。抵抗器の温度係数は,その種類に依存して大きく異なる。
±100ppm/℃の温度係数をもつ抵抗器なら10℃当たり0.1%の抵抗値変化を伴う。高精度を期待する抵抗器では定格逓減が普通に必要となる。電力定格は周囲温度と公称定格値から,それにディレーティング率を掛けて実使用可能なW数を計算する。次にP=V^2/Rから計算したW数を越える可能性のある抵抗値の下限を求める。Vは回路で扱う電圧である。下限値以下の抵抗については,詳細な電力計算を行う。
最近は電圧定格にも留意する必要が生じている。微細なチップ抵抗では,定格電圧が数10Vと低いものがある。定格電圧を越えると抵抗値減少の危険性が増す。電圧定格は回路で扱う電圧を基準にチェックするのが早道である。
電流定格については,結果として電力定格から制限される。
パルス的にサージが掛かる場合にはもっと複雑な計算になるが,サージ電力に静的定格を適用するととんでもなく大きい抵抗が必要になるので,必要に応じてジュール積分を行い,1発のパルスに耐える設計とすることもある。抵抗器の許容ジュール積分値はデーターシートに記載されていることは少ないので,自分でその値を破壊実験により掴む必要がある。メーカーでは,標準的に備えられている抵抗の品種が限られていることが多いので,一度はこの手の実力を把握しておくと良い設計が可能になる。
精密抵抗は精度が高く温度係数が小さいのが売りであるが,その性能を生かすには自己加熱が十分小さい小電力で使用すべきだと考えるアナログエンジニアである。でないと,起動時間が長くなる。
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