磁気マルチバイブレータ
磁気マルチバイブレータの基本形は,無安定マルチバイブレータの2つのコレクタ抵抗をセンタータップ1次コイルに置き換えた回路形をしている。トランスの2次側もセンタータップ形式にすることが多い。無安定マルチバイブレータのような発振周波数を決めるコンデンサはない。
コアの磁束密度Bと電源電圧Vの関係は
V=nSdB/dt n:コイル巻き数 S:コア断面積
であり,半周期T/2の間に磁束密度は+飽和Bmから-飽和(-Bm)に変化するので
f=V/(4nSBm)が発振周期となる。
コアには通常,角形ヒステリシスコアを用いる。角形ヒステリシスコアは,励磁電流の変動に対してBmがほとんど代わらないので,ベース電流で制限される電流に到達すると,転流がおこる。磁気飽和を生じる結果,極めて短時間に電流が増大し,その電流増加を維持できない時点でオントランジスタの飽和が解けて転流が始まる。
磁気マルチバイブレータの発振周波数は電源電圧にかなり直線性よく比例するので,VF変換に使用された時代もあった。
多くの磁気マルチバイブレータの発振周波数は1kHz程度に選ばれるが,注意深くコアを選定し,回路定数を定めると100kHzでも発振する。部品数の少ない絶縁形DC-DCコンバータとなるので,各種補助電源の発生に好都合である。
磁気マルチバイブレータは現在ではあまり使われないが,フローティング電源を必要とする回路では実に便利な回路である。
また,磁気マルチバイブレータの挙動を詳しく解析することは,コアのB-H特性を強く意識させる。
磁気マルチバイブレータの無負荷電流波形はH-B曲線を強く反映する。
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