バイアス電流1
オペアンプのバイアス電流を考慮した入出力関係は,図の回路を解析することにより定量化できる。
問題の形は,オペアンプが入力バイアス電流IBが±入力端子に流入し,その他の特性は理想的であると仮定の下に,回路の入出力関係がIBの項を含まないようにR3の値を求めよ,という課題である。
結果はR3=R1//R2となる。//はR1とR2の並列抵抗値の略記である。
解き方は,まずb点電圧が-R3IBとなることに着目する。
点aも点bと同じ電圧に制御される。
この回路を式のまま解けば(数行の式の変形),求める答えが出る。
反転増幅器では,R3が実際に存在する回路と,R3が短絡された形で示される場合がある。
バイアス電流IBが±入力端子に等しく流れれば,反転増幅器ではR3により,その効果は消去できる。
しかし,アナログエンジニアは稀にしかR3を挿入しない。
理由はオペアンプの+入力端子と-入力端子に流れる電流が等しいとは限らないからである。汎用オペアンプのデーターシートでは,その差は数倍ある。J-FET入力オペアンプではバイアス電流と同程度である。
したがって,R3を量産ベースで使用して性能向上に寄与できるケースはあまり多くない。
R3のある図の反転増幅器は,このような理由から初学者に提示すべき回路ではないと私は考えている。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
私が新入社員だったうん十年前は、先輩の設計した回路には必ずR3が入っていましたね。データブックにも入れるように記述されていたと思います。今は(私の周りでは)そんな回路は見たことがありません。
投稿: T_NAKA | 2008年3月 4日 (火) 12時54分
T_NAKAさま こんにちは。
R3の効果は限定的ですね。反転増幅器の+入力端子に外来サージが入る可能性は少ないし,今は多層基板が主流なので,ジャンパ線代りに抵抗の下をラインで引っ張る必然性もなくなりました。
今でもR3を必ず入れる方も少ないがいるようです。
投稿: 5513 | 2008年3月 4日 (火) 13時30分