電子回路の大きな電流
扱う周波数と電力はおよそ反比例関係にある。
扱う電力が大きくなると,配線も部品も大きくなるのでスピードが出ない。当時の経験則をかなり上回る周波数・電力積での設計である。キャリア周波数は200kHzを越え,数KW出力のアンプを製作したことがある。
電子回路としての部品を使って,ピーク数kW級のリニアアンプだ。
各部の電圧変化率は1000V/μs,電流変化率は1000A/μsを越えている。
試作段階では,散々苦労した。回路規模が小さなユニットの組み合わせではなく消費電力が大きいので,パワー部が誤動作すると100部品を超える部品のうち,数10箇所も破損する。再びプロトタイプを1週間かかりで組み立てなおし,通電を開始する。無事ヒューズが飛ばないで通電できれば,各部の電圧,電流波形を何とか観測できる。失敗すれば,何の情報も得られないまま,対策案を織り込んだ回路を組み立てる。
やっと出力を絞り込んだ状態で,試作品が動き出す。
しかし,電流・電圧とも大きいので,オシロスコープのプローブを近づけただけで,大きなノイズが入る。肝心な部分の波形を観測するのも簡単ではない。
主トランジスタにはパワーFETを多数並列で使用した。
FETの並列接続では,各FETに流れる電流が均等であるかどうかの確認が必要になる。このくらいの電流になるとクランプオン電流プローブを普通は使うのだが,電流プローブを使うためのループを使うと配線長が伸び波形が変わる。
そこで,巻き線抵抗の素線を使い,1cmくらいにしてそれぞれのソースに挿入して電流波形をモニターした。
素線は半田が溶ける寸前の状態まで加熱されるが,何とか検証に必要な測定はできた。
実機では,ドレイン側は銅のブスバー,パワーラインの基板配線幅は1cmをかなり超える。
多層板を使って静電シールドなども施した。ふむ,出力10kW程度までなら電子回路的設計手法が通用するのだと、しみぢみ感じた次第である。
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