フォト
無料ブログはココログ

このブログについて

  • 著作権の扱い方
    著作権はコメントを含めて投稿者に帰属します。投稿者本人が著作権をもち、責任も持つという意味です。 リンクはご自由にして構いません。 原則公開です。 批判も含めてコメントは公開いたしますが、営利目的などの記事は、管理者権限で削除することがあります。コメントは管理者の承認後、反映されます。 ただし、TBは現在許可していません。

著作

  • 共著:「次世代センサハンドブック」培風館(2008)、「マイクロセンサ工学」技術評論社(2009.8)
  • 連絡先
    私への講演、セミナー、技術指導などのご依頼はこちらまで↓ okayamaproあっとまーくyahoo.co.jp  あっとまーくは半角の@にしてください
  • 単独著
    アナログ電子回路設計入門 (1994.12)、コロナ社: 実践アナログ回路設計・解析入門 (2005.1)、日刊工業: オペアンプ基礎回路再入門 (2005.7)、日刊工業: ダイオード・トランジスタ回路入門 (2005.12)、日刊工業: スイッチングコンバータ回路入門 (2006.9)、日刊工業: これならわかるアナログ電子回路基礎技術 (2007.6)

専門とする事項

  • 電源を含む精密アナログ電子回路の設計・開発、およびその教育、技術指導。センサ・アクチュエータシステムの構築。電子機器の不良解析指導および再発防止指導。解析主導型設計の推進と回路シミュレータの実践的活用指導。技術的側面からのプロジェクト管理指導。

Twitter

新刊

  • 岡山 努: アナログ電子回路の基礎と入門!これ1冊

« 2008年3月 | トップページ | 2008年5月 »

2008年4月

2008年4月30日 (水)

コンパレータの過渡特性

_2186 ←ドウダンツツジの生垣。生垣は心和むけど,年2回の刈り込みをしないと数年もしないうちに形が崩れてくる。肥料をきちんとあげると,花や葉芽の伸びが良いけど,その分,刈り込み量が増える。

電圧コンパレータは,ある入力電圧のところで出力がH→L,あるいはL→Hに遷移する。

微妙なタイミングを検出するには,専用のICを使うのだが,データーシート上からは,遷移時の挙動まではわからない。大きくリンギングしながら遷移するものもあれば,おだやかに単調に変化するものもある。

では,どうやってコンパレータICを選択するか。

回路システムを全部組み,ピン互換の石を種々試して最終性能,システムとしての性能で評価するのが手っ取り早い。

原始的な方法だけど,実働条件で必要な性能をコンパレータの種類を変えて性能に及ぼす効果を調べるのだ。過渡特性は負荷条件にもより異なることが多いので,案外効果がある。

この方法で,出発回路から始めて,当初より10倍程度の時間分解能が得られたこともある。

最近は,基礎検討のあとすぐ基板を起こすことが多いが,試作基板で存分に試験ておくことも案外開発時間の短縮と,性能UPに繋がるのではないか。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月29日 (火)

アーチェリーは加点競技?

_2184 ←庭に咲いたライラックの花。今年は一部の花芽が狂い咲いたが,ようやく花が一斉に咲き始めた。

アーチェリーは,私にとって加点競技である。

男子シングルラウンドは,90m,70m,50m,30mを各36射ずつ射つ。私は62歳。あともう少しなので,競技者としての最低レベルの1000点/1440点満点のブロンズバッジを獲得したい。

アーチェリーの腕前の差は,満点から如何に外れたかで見ると,よく実感できる。

たとえば,90mなら,私の場合は完全に加点法である。90mはなれた直径122cm的を射するが,目標点数は200点:6射33-34点出れば満足のいく射となる。的の中心から6cm外れるごとに1点減る。2点を射っても,次に9点に当たることもあるので,完全な加点法の感じである。

最短距離の30mなら,私の場合には36射300点がひとつの目安だ。的は直径80cm。6射単位で見ると,50点平均なのだが,1本,6点を射つと,残り5本は9,9,9,9,8位が自分にとってベストショットを連発する必要がある。

昨日,全日本クラスの方と一緒に射たせて頂いた。144射1300点を軽く越える方である。仮に1340点とすれば,-100点私は満点-400点程度。この数字がばらつきの程度の体感的腕の差である。

1350点クラスの方は,90mで320点程度の点数をだす。最長距離で10,9,8の連射である。

それでも加点法的感覚だという。多分9が標準で10点だと+1と考えている雰囲気。30mだと,36射で何本10点から外すかの世界である。

一生のうちにシングルラウンド1000点を公式記録会で出したいものだ。明日も天気が良い筈なので,一人シングルラウンドを射ちたいと思っている。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月28日 (月)

アナログ回路さまざま

アナログ回路屋さんといっても,テリトリーはさまざまである。

個別部品で組む回路なら帯域20MHzは厳しい。集積回路の中ではほぼ同じ設計技術で300MHz程度はいけるだろう。

通信技術は,別の体系をもつ。

もっと高周波になれば,分布定数回路になり逆にそれなりの扱い方ができる。

電源回路も比較的独立した世界で,特有の課題群を扱いしかも,コストの制限が厳しい。

デジタル回路もゲート,レジスタレベルで見れば高度でかつ高速のアナログ回路である。デジタル回路設計は,多くの回路設計者にとって,いまやプログラミングに近い手法で論理合成を行う時代になった。しかし,デジタルのタイミング問題が絡む課題が生じれば,アナログがわかる人が居ないと大騒ぎになるのが通例である。

このため,わたしは,いつも自分の得意分野を示したうえでアナログ屋を自称することにしている。

これら総ての分野に精通することはかなり困難である。

現在は,さまざまなアナログLSIが出現し,かつ内部の等価回路が示されることはほとんどない。そのようなASICは指定どおりに使うしかない。ここでもアナログ回路のブラックボックス化が進行しつつある。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月25日 (金)

計測とセンサ

最近では,きちんと計測工学を教えている大学は少ないようである。

計測原理とそれに伴う誤差要因,計測誤差まで考慮して計測値を扱える人がごく少数派となった。

計測なくして科学はない。

インターネットで検索しても,きちんとした説明を行っているサイトにもほとんどヒットしない。

そして,いまやデジタル表示でPCにデータを転送できる機器が好まれる。

工学者なら自分の制作,設計した機器の仕様とその確からしさは把握している。筈だ。

しかし,その機器に使われているセンサの原理や性能限界を知っている方は,稀である。

自分の扱う機器がばらつきがあるなら,その中に使われる部品やセンサにもばらつきや経年変化があることは承知すべきであろう。

MEMSが華やかなセンサの時代であるが,センサのおかれる環境,校正周期,精度などの関係から,それぞれの分野では今も古い原理の枯れた技術が重要部分には使われている。

学術は新しいことをやらないと論文にはならない。しかし,センサ・計測技術は泥臭くかつ長期的視点での根気を必要とする技術体系である。そして,多くの電気的出力を有するセンサ/計測器ではデジタル化の前にアナログ的信号処理を行っている。

アナログ屋は,現実世界とでデジタルを結ぶ架け橋でもある。当然,物理・化学の周辺知識も必要となってくる。アナログ電子回路のみがアナログ屋のお仕事ではないのである。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月23日 (水)

初孫

嫁いだ娘が昨日出産した。

夫も立ち会ったという。分娩室へ入ってから約4h,安産,母子健康。

女の子で,3000g弱,髪ふさふさで生まれた。

我が家の「さち」が付き添っている。わたしにとって,初めての孫。

今日は,私もこれから横浜の病院に行くつもりだ。

娘夫婦はもう名前を決めているとのこと。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日もアナログエンジニアに貴重な1票をお願いします。【押す】

2008年4月22日 (火)

変形ダーリントントランジスタ

Photo 2個の同極性のトランジスタを用いダーリントントランジスタの標準形は右側である,標準形では,インバータとして使ったとき,回路としてのオン電圧はVBE+(VCESAT:2段目のオン電圧)となる。

したがって,集積化ダーリントントランジスタでは,オン電圧が1V前後になる。

低電圧SW用途では無視できないオン電圧となる。

右図のように,初段コレクタを2段目コレクタに接続しないで,抵抗RXを介して電源に直接接続すると,四角の負荷に対して,オン電圧はVCESAT程度の具体的には0.3V以下の低いオン電圧となる。

この方法は,個別トランジスタで簡単に構成でき,低い電源の電圧SWには有効である。

個別トランジスタで組む場合には,初段が高速小信号トランジスタになりやすく,高速SWの際には過渡的に初段トランジスタがダイオード負荷(2段目のVBE)で動作する可能性があるので,必要に応じRXを挿入する。

右側の変形ダーリントントランジスタは,アナログ集積回路中では時々見かける回路部分である。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をよろしくお願いします。【押す】

2008年4月21日 (月)

オペアンプのセトリング時間

高速オペアンプは,浮遊容量やレイアウトに敏感である。このため,レイアウトパターンや電源バイパスコンデンサの種類,定数を例示しているデータシートも少なくない。

たとえば,セトリング時間は,負荷条件,入力振幅,回路利得,温度を示した上で,最終値の0.1%あるいは1%に到達する時間で定義されている。

データーシートを裏読みするなら,セトリング時間は示された条件に依存して,その値が変わりえると解釈することになる。

最近は,高速のオペアンプで増幅し,高速ADコンバータでデジタル化するケースも増えている。量産ベースで考えるなら,実働条件下で,自分の目的にかなった性能が得られているか否か何らかの手段で確認する必要がある。

セトリング時間を例に挙げたが,オペアンプの仕様には典型値のみしか記載されていない項目も多く存在する。

アナログ回路の場合,むやみに高速性を求めることは一般に行わない。必要十分なものを使うのが鉄則である。

高速オペアンプは帯域が広い分,ノイズレベルが高くなる必然性がある。一芸に秀でたオペアンプの品種は,その特徴をよく把握して注意深く使用する必要がある。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をよろしくお願いします。【押す】

2008年4月17日 (木)

編集者さまざま

今週,校正していた2Pの技術コラムのやり取りがやっと終わった。

今日は,仕事で片道7hかけて,クライアントのところに行く。

編集者やセミナー企画担当者は実にさまざまである。

A社の編集者は,ある学会で出合った方である。そのときには自分が専門書の著者になるとは思っていなかった。今から10年以上前のことである。その後縁あって,その会社から大学教科書として体裁として出版した。実務を経験した私にとって,大学の電子回路の定型的な内容とはかなり異なるものであった。それでも,学術教科書としての形を取るための種々のやり方を教わった。分野外のK教授によるところも大きい。

B社は,別件でその編集者や社長と面識があって意気投合もしたが,編集方針の違い(実回路定数の記載)があって書けなかった。

実務技術本を多く出版しているC社の編集者は,私を鼓舞してくれた。そして,実務本の体裁,書き方を教わった。出来上がった本では,目立たない形で字間の間隔を調整して読みやすくしてある。校正の際には,図版や数式が電子データから作られるものではなく,新たに打ち直すので間違いが出やすいことも教えてくれた。いずれの会社も,内容についての修正要求はほとんどない。その分,著者はコメントに敏感に反応せざるを得ない。著者と編集者の良好な関係である。

今回の校正は不愉快な校正作業であった。初歩的な質問・加筆の挙句,分量が増えたので何とかしてくれとのメールが校正前段階で届いた。ふざけるな!著者はその内容について,無限責任を負う。その代わり,改変に対しては拒否権を持つ。編集者は,著者の力を引き出し,見やすいレイアウトを蔭で支えてくれる。これがプロの編集者としての能力である。内容に関して口を挟むことは原則無いが,著者の記述の対象となる読者層の情報もくれることがある。

プロの編集者は大局的に本を見る。著作内容を見る。半可通の編集者は,著者に大きな時間的,心理的負担を与える。

『人気BLogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月16日 (水)

マレージング鋼のボルト

マレージングン鋼(maraginng steel)とも呼ばれ,Ni,Coもかなり含まれるので,高価である。

100kg/mm2を越える高張力材料である。通常の鉄合金は20kg/mm2以下で使われることが多い。

マレージング鋼製のボルトが実際に使われた形を見たことがある。

ふつう,フランジとボデイの固定には通常の高強度鉄材料のボルト・ナットが使われる。

サイズにもよるが,固定部にはボルトの頭が接する位に周辺に並ぶ。しかし,マルエージング鋼製の物では,低圧に耐える設計の物とほとんど変わらない。フランジ厚さに比べてボルトサイズが異様に小さい感じがする。

機械的強度設計の際に強度設計を間違えて,互換性を保つためフランジを厚くボルトを超強度材料にマレージングにしたらしい。

通常の最適設計の機械構造を見慣れていると,物性値が数倍高い材料を使った製品は異様な感じがする。高強度部分の寸法が,違和感を覚えるほど異なるのだ。

このような材料は一般的に,原子力,航空機用途の要所に使われていると聞く。

アナログ電子回路においても,違和感を感じる回路構成の設計にも時々出会う。

このようなときには,特殊部品が使われているかどうかを良く見定める必要がある。

世の中,探せば特殊な材料,特殊な部品が存在すると感じるアナログエンジニアである。

日本では,様々な部品・材料が手に入る。これが日本の国力の一端であると感じる。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をよろしくお願いします。【押す】

2008年4月15日 (火)

インダクタンスの逆起電力

私は「逆起電力」という言葉はふつう使わない。インダクタンスにエネルギーが蓄積されている場合にスイッチングすると,スイッチング前の元の電流の方向で,かつ,もっとも電流が流れやすい場所を経由して流れ,その経路の電圧が電流の時間変化率を決定するからだ。

逆起電力とは,どの場所でどこを基準に測ったとき「逆」なのかとの疑問も残る。しかも,起電力という表現を使用すると,常に一定の起電力を発生するかのような印象を与えやすい。

インダクタンスとSWの直列回路をOFFするとき,インダクタンスの両端を短絡すれば,「逆」起電力は,定義はともかくとして,逆起電力はほぼゼロで,インダクタンスLに寄生する直列抵抗Rがあれば,L/Rの時定数で減衰する。

DC-DCコンバータなどでは,着目する時間がL/Rに比べて十分小さいので,R分のない理想的なインダクタンスとして種々の検討・解析を行う。

逆に,リレーやソレノイドなどでは着目する時間がL/R程度以上で,かつ,電圧一定の場合が多いので,一次遅れ回路として解析する場合が多い。

インダクタンスを流れる電流は急変できないので,一番流れやすいところを経由して流れる。その経路の電圧Vが電流の減少率を定める。そして,その関係はV=LdI/dTである。

SW後の回路図に電流の流れる経路が無くとも,一番流れやすい経路を電流は強引に流れる。

SWがバイポーラトランジスタの場合には,C-E間を降伏させて流れることもまずい設計ではありえる。この状態はデバイスにホットスポットができやすいので好ましい使い方ではない。パワーMOS-FETの場合には,D-S間降伏で使用を許容している品種もある。

逆起電力という言葉をさておいて,議論しなければSW後のインダクタンス回路理解はないと考えるアナログエンジニアである。

『人気Blogランキング』の「自然科学部門」に酸化しています。今日も貴重な1票をよろしくお願いします。【押す】

2008年4月14日 (月)

タンタルコンデンサ

タンタルコンデンサは1-100μF程度の容量のコンデンサとして,アルミ電解コンデンサより少し高級な用途に使われる。

有極性コンデンサであり,基本的に直流で使われる。湿式タンタルコン,固体タンタル(2酸化マンガン,有機電解質)などのタイプがある。長所としては,経年変化が少なく適切に使えば信頼性は高い。

周波数特性は,アルミ電解コンデンサと比べて広く電源デカップリング用として,信号デカップリング用として有用である。逆電圧に対しては,多くのソリッドタンタルコンは0.6V程度以上に耐えるので,シリコンダイオードクランプによる保護が有効である。

したがって,逆直列接続による無極性化によるAC用途にも使用可能である。

欠点としては,故障モードのほとんどが短絡であり,タンタルコンデンサ部での短絡を想定した電源設計が本来必要である。タンタル自身が密度が高いので,たとえば机から落とした素子は使わない方が無難とされている。また,耐電圧は~50V程度なので,高電圧には対応できない。

タンタルコンデンサの設計上の注意として,電圧ディレーティングおよび回路インピーダンスの信頼性に及ぼす影響が大きいので,極力電圧を逓減し,回路的に可能ならばコンデンサに直列抵抗を挿入するとより安全である。

電流定格はアルミ電解コンデンサより多くの場合,同一容量なら低めであるので,直流に重畳するリプル電圧とその周波数に注意を払う必要がある。

詳しくはEIAJの技術報告書が参考になる。

部品の癖を知ることは,アナログ回路設計上欠かせない。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月11日 (金)

基本回路の知識

_2169 ←猫の虫眼鏡。文鎮にもなる。

基本回路とされる回路形式は先人の工夫の跡であり,その回路を徹底的に解析することにより,新しい回路的工夫が付加されオリジナル回路が生まれる。

たとえば一石エミッタ接地増幅器のバイアス回路では,データシートより正確なトランジスタのVBEの求め方が必要になる。

電圧増幅率を誤差20%くらいで求めるには,自分の設計条件下での入力抵抗を求めなければならない。もっと設計精度を上げるには,信号源抵抗やトランジスタのアーリー電圧を考慮する。

低域周波数特性を把握し設計するためには,2-3個のコンデンサを含む回路を等価モデルで計算する必要がある。

高域周波数を予測するには,ベース・エミッタ間に存在する寄生容量:Cobを考慮した周波数特性をモデル化した等価回路を解く必要がある。

プロとしてやるなら,典型値として記載されている条件から,自分の設計条件への補正も重要である。

このような手解析可能な問題を次第に複雑なモデルで解く努力無しには,カット&トライの経験がモノをいうアナログ回路設計過程となる。帯域20MHz以下のアナログ回路では,比較的,回路基板のパターンの影響が少ないので,解析主導型設計が可能であり,自己の回路モデルを実機と計算と対比することを反復すれば短期間でアナログ回路に習熟できる。

しかし,このような設計に必要なデバイスの2次的特性とその効果を述べた本は日本では少数派である。

絵解き・・・,数式を使わない・・・などの本では,この辺りがきちんと記述されていない。結果を少ない労力で欲しがる若者が多いので,勢い本のほうもそれに迎合している側面がある。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月 9日 (水)

回路シミュレータ

電子回路の回路シミュレータは,米国カリフォルニア大学で1970年頃に開発されたSPICE(simulation program with integrated circuit enphasis)から派生・発展したものが多く使われている。

その名のとおり,アナログ集積回路の試作回数を少なくするために開発されたが,モデルベースで電子回路の特性を調べるツールであることには今も変わりがない。

回路シミュレータは,ある程度の部品,半導体デバイスの数式モデルを理解した上で,間違っても良いから設計定数を決めることができる能力がないと使いこなせない。

個別部品で組む電子回路の場合には,目的に応じて半導体デバイスのパラメータを設定する能力も必要である。たとえば,バイポーラトランジスタモデルでは30項目以上のパラメータを設定できるが,解析目的に応じて影響する数個のパラメータさえ正確に設定できれば,かなり実回路に近い解析が可能である。

そのためには,解析まえにどのような回路挙動をするかある程度予測して,その目的に関係するパラメータを把握した上で解析条件を設定し,目的とする測定点を定める必要がある。

回路シミュレータが威力を発揮するのは,手解析で可能な規模を遥かに超える回路やインダクタンスや容量が多数含まれる回路を扱う場面である。

以前は大型計算器上で動作していたが,現在ではパソコン上で結構快適に動作する時代になった。シミュレータは設計能力なくして有効利用は望めないが,手解析では困難な回路起動時の挙動などビジブルに把握することもできる。

いまや,電子回路設計においては,不可欠なツールであると考えている。しかし,過去に一部で喧伝されたようにエンジニアの設計能力に関係なく意味のある解析ができるツールではない。

力のあるエンジニアの能力を最大限に引き出すのが,この手のツールであると私は感じている。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をよろしくお願いします。【押す】

2008年4月 8日 (火)

インダクタンスのSW1

Lr インダクタンスを含む回路を苦手とする電子回路屋さんは少なくない。

図の回路で,トランジスタがONとなり,時定数L/rの数倍の時間が経過すると,Lの電流IはVCC/rとなる。

この後,トランジスタをOFFするとどうなるか?

インダクタンス電流は流れる電流の方向は急には変われないので一番流れやすい場所を流れる。抵抗Rが短絡なら,トランジスタのコレクタを軽油していた電流Iは(L+r)→Dの経路で,初期値I,時定数L/rで減衰していく。このときコレクタにはVCC程度の電圧しか発生しない。〔ダイオード電圧は無視)

R・Dが無ければどうなるか。

もっとも流れやすい箇所は,トランジスタのC-E間である。C-E間を電圧VRで降伏させて,初期値Iから減衰を始める。

V=Ldt/dIの基本式から,(VR-VCC)=Ldt/dIの減少率でほぼ線形に電流Iが0になるまで電流Iは減少していく。これでインダクタンス電流が0となるまで降伏は継続する。この状態は,トランジスタで通常保証されている使い方ではないので,好ましくない。

次に,トランジスタが降伏しない状態になるRを挿入するとどうなるか。

SWオフの瞬間,電流の経路は(L+r)→R→Dに切り替わる。このとき,トランジスタのC-E間には最大RI+Vj+VCCの電圧がかかり,概略L/(r+R)の時定数で減衰していく。

インダクタンス電流は着目する時間内で急には変化することができない。

したがって,SW時間が時定数に比べて十分早ければ,初期値Iの電流は回路の一番流れやすい部分を経由して流れる方向が決まり,その経路にしたがって電流の減衰の仕方が変化するのである。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月 5日 (土)

子猫の引っかき傷

2_2164 我が家に子猫のチャー君が来てから早2週間経過した。

寝姿はとてもかわいいけど,起きているときには,爪と歯を使って猛烈に遊ぶ。たとえば,パソコン椅子に座って作業していると,足下から一気に爪と口を使ってよじ登ってくる。時には,50cmの垂直ジャンプを敢行し,しっかり爪を立てて太腿に手がかりを得て上ってくる。

膝に上った後は,前足と口で飼い主の手を材料に遊ぶ。飼い主が在室の時には動き回るのだ。不在なら,寝床でそっとしているらしい。 おかげで,右手,左足に無数の引っかき傷。

昨日,内科医に別用があっていったついでに手を見せたら,皮膚感染症用の塗り薬をくれた。

薬は「ゲンタマイシン軟膏」,ストレプトマイシンの流れを汲む殺菌作用のある軟膏のようだ。 引っかかれ傷の半分くらいが赤くなっていたが,軟膏を塗るとし半日くらいで赤みがとれ,水にしみなくなった。

昔飼っていた成猫は,誤って飼い主を間違って引っかくと,すまなさそうに縮こまっていた。このステージに到達するのは後何週間掛かるだろう。 我が家の子猫はまだ幼いが,運動能力は水平・垂直とも50cmジャンプができるくらいの運動能力である。その割りに,行動パターンは幼い。

あまり,叱ると猫の性格が悪くなりそうなので,できるだけ穏やかに対応しているが,飼い主の体を認識しているかどうか疑問に思うことがある。 このアンバランスさは,野生だった猫が,子猫時代を生き抜く遺伝的本能なのかも知れない。 爪を目一杯出して猫パンチ,口で感触を確かめ同時に臭いを嗅いでいる。 『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。

今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月 4日 (金)

分圧回路抵抗の絶対値

「電源VIと抵抗R1,R2からなる分圧点の電圧をVoにしたい」

このような問題に電子回路ではよく出会う。

Voから事実上,負荷をとらない場合は簡単で

Vo=R2・VI/(R1+R2)だから,必要な抵抗比はすぐに求まる。

負荷を取る場合は良く考える必要がある。

抵抗の絶対値を選ぶには分圧回路そのものだけではなく,Vo端子に接続する回路の性質を知る必要がある。

その回路が,オペアンプの正相増幅器であれば,分圧回路に使用する抵抗の選択肢は,抵抗の製造可能範囲まで広がる。

Vo端子に接続される回路の入力抵抗が有限なら,R1とR2の並列抵抗が分圧回路の出力抵抗となるから,Voに接続される負荷の入力抵抗分だけ,影響をうける。その影響をどのくらいまで許容するかで分圧回路の絶対値が決まる。

あるいは,負荷による誤差も含めて,結果がVoになるように決める場合もある。分圧回路の抵抗比を決めるだけでも,回路構成の選択と,誤差の扱いの方針を決める必要がある。

比を求める問題単独では易しいが,実践の場ではアナログ設計者が先に述べた種々の要因を勘案した戦略がある。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す】

2008年4月 3日 (木)

1ループ回路

Photo 図はループ1個の回路。

点aの電圧Vaはいくらか? の問いに答えられますか。

キルヒホッフの電圧則とオームの法則で解けます。

答えはVa=R2VI/(R1+R2)+R1Vo/(R1+R2)・・・・(1)

重ねの理を用いれば答えは一発で出るが。

では,Vaが0となるようにVoをVIの関数として求めよ。の問いに対してはどうか?

Va=0とおいて,移項すれば直ちに式(2)がでる。

Vo=-R2VI/R1・・・・・(2) となる。

実はこの回路,反転オペアンプ回路の入出力関係を求める際に使用する等価回路である。

理想オペアンプとすると,-入力端子a点が0Vになるように出力Voが制御されるので,式(2)がでてくるのである。

Va=0ではなくVa=Vioとして同じ問題を解けば,オフセット電圧を考慮した反転増幅器の入出力特性の解析となる。

式(1)は求めることができても,式(2)を仮想短絡の概念を用いて式(1)の導入なしに,求めることができる新人電子回路エンジニアはそう多くはない。アナログ電子回路の基礎教育/訓練はこの辺から始まる。

『人気BLogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をよろしくお願いします。【押す】

2008年4月 2日 (水)

子猫その後

_2165 我が家に子猫がきてから10日経過した。

知人の知人から譲り受けた子猫なので,至って健康である。

写真は私の黒鞄のポケットに勝手に入っていたところをパチリ。

興味旺盛で,まず前足で叩いて引っかいて,その後,口で感触を確かめるのが通常パターン。

起きている間は,室内をかけ回り,少し疲れるとパソコンチェアに座っている私の足を爪を立ててよじ登る。隣のソファーから約50cmをジャンプして飛んでくる。身長の2倍以上まで前足が掛かる。垂直ジャンプで直接上ってくることもある。このときは,前足の爪を思い切り立てるので,私の左足は引っかき傷だらけ。ジャンプするときには,前動作の踏み切り準備があるのでこちらの方も,気持ちの準備はできる。

かなり甘えん坊なので,ソファーに座っていると私の体が遊び場となる。両手の甲も引っかき傷だらけ。腕伝いに肩まであがり,ソファーの背もたれを伝って新たな探索に出る。

まだ,爪の手加減が良くできないようだ。毛繕いなどの姿は一人前だが,時々転んでいる。

猫の子,運動能力が高い割りに,その気持ちは離乳直後そのもの。私の手を乳首に見立てて,前足で口の周りを押しながらチュクチュクと吸ったりしたりしている。目が覚めている間は,飼い主にずっとまつわりつくか,目の前でいろいろなものとじゃれている。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な1票をよろしくお願いします。【押す】

2008年4月 1日 (火)

計測増幅器

Photo 3オペアンプ形計測増幅器は左図のように構成される。

1個のオペアンプは,その差動入力端子端子を帰還に使用するので,差動入力&高入力抵抗の回路とはならない。

2個のオペアンプを使用して,差動入力&高入力抵抗を実現する方法は複数知られているが,抵抗比の影響を受けやすいため一般には利用されない。

3オペアンプ形計測増幅器は,初段A1,A2周辺の素子感度が低く,精度がでやすい。

注意深く設計されたこの回路は,(V1-V2)/2すなわち同相電圧を120dB程度まで抑制できる。2段目の加減算器部分は,抵抗比精度を要するが,さほど厳しいものではない。

この回路は,数Vの同相電圧に埋もれた数mV-数10mV[のDC電圧を増幅するときに威力を発揮する。

初段A1,A2周辺は基本的に対称回路なので種々の誤差要因が打ち消される可能性が高い。

この回路の差動利得AはA=(1+(R1+R3)/R2)であり,同相利得はほぼ1である。加減算器部分は最小利得の1:全抵抗Rで製作されることが多い。この理由は,同相電圧除去比を高めるためにもっとも有利な選択であるからである。

種々の解き方が考えられるが,この回路を理想オペアンプモデルで必要な抵抗比を求めることができる方は,入門レベルを卒業された方と考える。

『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も元気に貴重な1票をアナログエンジニアによろしくお願いします。【押す

« 2008年3月 | トップページ | 2008年5月 »

2021年11月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

現在のランキング