トランジスタ対の温度ドリフト
理想的なバイポーラトランジスタペアでは,同一コレクタ電流でVBE(ベース・エミッタ電圧)差の温度依存性は0となる。
1: VBEの温度係数を約-2mV/℃とすれば,ペアトランジスタ間の温度差が1/1000℃あれば-2μV/℃となる。
最高レベルのオペアンプではさらに1桁下の温度ドリフトであるから,集積回路中のペアトランジスタは1/10000℃程度まで温度差が変わらないということになる。
2: また,VBE差の温度係数はΔVBEの絶対温度に比例するから,0.1μV/℃を実現するには,ΔVBEは0.3mVでなければならない。
3: ΔVBEはコレクタ電流比の影響も受ける。ΔVBE=kT/q・lnIc1/Ic2であるから,この温度係数を実現するには,コレクタ電流比は0.5%以内の誤差である必要がある。
超低ドリフトのオペアンプはおもにVBEを一致させるトリミングが施されているとされているが,このように厳しくVBE差を制御して製作されている。
サブμV/℃クラスの低ドリフトアンプの出現により,複雑なチョッパスタビライズドアンプを使うことなく低mV増幅が近年は可能になった。もちろん,巧みなパターンレイアウトにより,チップ内での温度勾配も低減した上での性能である。
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