電源回路の設計
トランス絶縁ドロッパ式の電子回路電源,DC-DCコンバータの電源いずれもリスクの多い割りに難しい回路である。
電源設計ができればアナログ回路設計者として一人前とさえ言われる。
ドロッパ式なら,まずトランス・ダイオード・コンデンサを含む回路が非線形で,シミュレーションをそれなりのモデルで行うか,設計図表を用いないと平滑後の谷電圧を予測できない。
トランスは抵抗負荷定格出力時に公称電圧が得られるようになっている。したがって,無負荷時には出力電圧が上昇する。このことを考慮しないで設計すると回路の耐圧不足となる。
ドロッパ式安定化電源回路の主トランジスタへベース電流を供給する抵抗の決定戦略も重要である。高すぎると最小動作電圧降下が保証できない。集積回路などではこの部分が定電流回路を使うので,2-3Vで済む。
電源回路は短絡を想定する。その保護回路と短絡時の安全動作領域が不完全であれば,負荷短絡時に連鎖故障を生じる。
コンデンサは高リプル状態で使用するので,その電流定格も守らなければならない。
大出力回路であれば,起動時の突入電流の制限も行う必要がある。
難しいのだが,付加価値は低くく評価される。従って,電源回路を自前で作るメーカーは減りつつある。しかし,3端子ICレギュレータの扱える電圧を越える高い電源を得ようとすると,自前でレギュレータを設計することになる。熱設計も詳細に行わなければならない。
SWコンバータともなれば,トランスを自前で設計するのがふつうである。
かくして,電源回路はアナログ回路の多くの要素を含み,かつトレードオフ関係になる項目も多い。
セミナーなどで電源回路の設計法に関する要望も多くでるが,アナログ回路の粋のひとつである電源回路を短時間で真面目に実践的に教えることはかなり困難であると考えるアナログエンジニアである。
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