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著作

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    アナログ電子回路設計入門 (1994.12)、コロナ社: 実践アナログ回路設計・解析入門 (2005.1)、日刊工業: オペアンプ基礎回路再入門 (2005.7)、日刊工業: ダイオード・トランジスタ回路入門 (2005.12)、日刊工業: スイッチングコンバータ回路入門 (2006.9)、日刊工業: これならわかるアナログ電子回路基礎技術 (2007.6)

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  • 電源を含む精密アナログ電子回路の設計・開発、およびその教育、技術指導。センサ・アクチュエータシステムの構築。電子機器の不良解析指導および再発防止指導。解析主導型設計の推進と回路シミュレータの実践的活用指導。技術的側面からのプロジェクト管理指導。

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2008年10月

2008年10月31日 (金)

hパラメータは万能か

H hパラメータとは,ハイブリッドパラメータの略称で,下記の式により定義されている。

V1=h11・I1+h12・V2

I2=h21・I1+h22・V2

この能動4端子回路は電気・電子回路を学ぶときよく出てくるが,トランジスタ(バイポーラ)の特性を広い範囲で表現できるものではない。コレクタ接地回路(エミッタフォロワ回路)では,モデル式と実際の入出力関係がhパラメータでは大きく異なるので,実務で使ったことはない。

h11はたんにhiと表され入力抵抗と呼ばれる。

h12はhrと表され逆方向電圧利得と呼ばれる。

h21はhfと表され電流利得である。

h22はhoとよばれ,出力アドミタンスとなる。

これらのhパラメータの値は,トランジスタの動作条件により大きく変動し,実務では定数と考えることはできない。

たとえば,エミッタ接地のhパラメータ/入力抵抗はhieと表現されるが,データシートにはほとんど記載されない。hieの値は,能動状態のトランジスタでは,hie=VT/IBでほぼ近似できる。(VT:熱電圧,kT/q,常温で26mV)普段使われておりデーターシートに記載のあるのはhfe位か。

hrはVCEとVBEが低い電圧では,動作条件により大きく変動する。

hoはアーリー効果に強く依存し,かつ直接的にコレクタ電流に依存する。

hパラメータは,初歩的な回路教育にはそれなりの効果があるが,実務ベースでは広い動作条件で成立するトランジスタモデルに基づく回路解析の教育が必要と考えているアナログエンジニアである。

ちなみにMOSFETのhパラメータを考えたらどうなる。多分モデルそのものが作れないであろう。

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2008年10月30日 (木)

積層圧電素子

圧電効果を利用して,微小な変位をリニアに制御する素子である。積層化することにより,所望の変位を0-150V程度の電圧で制御できる。

変位の大きさは素子全長の0.1%程度である。50mmの素子で50μmの最大変位が得られる計算になる。これではあまりにストロークが狭いので,多く弾性変位拡大機構が使われる。

回路側から見ると,圧電素子は容量負荷に見える。

C=1μF,V=150V,時間T=1msとすると,回路の平均駆動能力は0.15Aに達する。

150Vで0.2Aのピーク出力のリニアアンプはIC回路では実現が難しい。そこで,個別部品で組むアナログ回路の出番となる。出力トランジスタの運転条件が厳しいので,電流制限回路を装備してピーク電流を見積もれるように配慮,トランジスタの安全動作領域にも留意する。

微小位置決め装置の要となるアクチュエータ-,回路系だが,大きな容量負荷を安定に駆動するにはそれなりの位相補正が必要となる。

不感帯はほとんど無いのだが,大きなヒステリシスループを描くので,変位の回路系へのフィードバックを必要とする場合も多い。

なお,圧電素子を引っ張り応力が生じる状態での使用方法は保証されていない場合が多い。

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2008年10月29日 (水)

電源回路教育

最近,しばしば電源回路の設計手法の教育をして欲しいという話がある。

しかし,簡単には引き受けられないのだ。電源回路は,オペアンプ回路,発振回路,トランジスタなど使う素子の種類が多い。ドロッパ式の電源を自作するとなると,IC化3端子レギュレータで扱えない電圧と電流領域の安定化電源を作ることになる。元のコンデンサ入力の平滑回路は非線形回路だ。

スイッチング電源なら,エネルギー収支や電流の増減から入出力関係が決まる。

どちらのタイプの電源も熱設計を含めたアナログ回路の総合技術に近い。電源専業メーカーが成り立つ由縁である。

電源は,多くのメーカーでは専業メーカーからの購入ユニットである。しかし,標準化された電源ユニットでは対応できない場合に自社で設計・製作することになる。

電源設計は地味な世界であるが部品の性能を熟知して設計しないと信頼性の高い電源を得ることはできない。初学者にとっては厳しい世界である。主トランジスタひとつ見ても,熱設計,安全動作領域ASO,ベースまたはゲートの駆動方法,過電流保護などの課題がある。

スイッチング電源だと,コントロールICを使うケースが多いので,個々の品種のSWレギュレータICの特性についても語らなければならない。各種規格への対応も必要である。

このような事情で,アナログ回路の基礎技術が不足している状態では,電源回路教育がまともな時間では成り立たないと考えるアナログエンジニアである。従って,急がば回れ,の考えでオペアンプ,トランジスタ・ダイオード教育を行ってから,電源回路教育に入りたいと考えることになる。

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2008年10月28日 (火)

本質安全

労働安全の分野でしばしば使われる言葉,本質安全。

不安全状態が極めて低い確率でしか生じない装置,環境を本質安全と呼んでいる。

電気・電子機器を極めて低いエネルギーレベルで動作させれば,爆発性ガスが存在しても着火の危険性が極めて少なくなる。これが本質安全防爆の基本理念だとアナログエンジニアは考えている。その基準は多数回の実験により定められ,もっとも危険な状況で10^-6~10^-9の点火確率が多重故障下において実現されている。

一般的に不安全事故を生じさせないロジック/論理はある事象が起こらないという「否定の証明」である。否定の証明は難しく,しかも前提を設けた上での論理構築になる。

「本質」という言葉は軽々しく使うべき言葉ではない。「絶対」という言葉も避けなければならない。「全て」もそうだ。ひとつの例外?が存在すればその論理は否定できる。

世の中には,絶対的に,全て,本質的に, という言葉を使いたがる上司も残念ながら多数存在する。これらの言葉は,自分の技術者生命を賭けて使うべき言葉であろう。

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2008年10月27日 (月)

容量負荷

安定化電源では,出力側に容量があると起動時に,その充電電流が突入電流となる。起動時には負荷電圧不足の状態にあるから,安定化電源は最大出力電流を流す。

もし,その安定化電源に電流リミッタ回路が意図的に挿入されていなければ,主トランジスタのhFEとベース電流で大きなピーク電流が流れる。安定化電源がSWレギュレータならば,主SWのトランジスタのON期間は短時間で最大となり,大きな起動電流が流れる。この過渡電流を制限するには,主トランジスタの電流制限回路が必須である。

ないと,起動時に定格を越える電流が数m~数10msの間流れる可能性がある。コンデンサ負荷は起動時においては,安定化電源回路にとっては短時間の負荷短絡と類似した状況となる。

CV=IT C:容量, V:電圧 I:電流 T:時間

Iが制限電流であれば,時間Tがわかる。

多くのコンデンサ負荷では,0.1-1Aくらいの負荷電流を必要とする回路が多い。時間は短いものでは10ns,長いものでは数msの時間で電圧を変化させる。

電源,SW回路を問わず,意図的に最大電流が決まるような回路構成にしないと,トランジスタの定格を守りにくいと感じているアナログエンジニアである。

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2008年10月23日 (木)

素子モデルと式

多くの工学では,基本的な物理・化学の現象を表す式を元にして現実の課題を式として表す。この表現式を用いて,戦略を立ててシミュレーションや実験,試作をおこなう。

基本的な物理・化学現象をあらわす式は数多くあるが,極めて高い精度で成立するものもあれば経験則に近いものもある。

電磁気現象に関する公式はかなり良い精度で成り立つものが多いと感じている。

電子回路では,素子の数式モデルから出発し,キルヒホッフの法則などを用いて文字係数のまま多元連立方程式を解くことで,回路特性を公式化する。

この過程で,私は移項の失敗や各項間の次元の不一致などかなりの頻度で生じる。(中・高校レベルのミス)

この対策として,より簡略化したモデルで予備計算を行い,次に本番の計算をおこなったりする。複雑な課題では同じモデルを使ってシミュレーションで解の妥当性を確かめることもある。

次の段階は試作となる。アナログ回路ではたびたび予想外の現象が生じる。回路のダイナミックレンジの端や負荷駆動能力の限界付近での予想精度は線形領域より劣るので,その挙動を現実の部品を用いて種々の側面から検討するのだ。そして,予測と現実の偏差をもとに,さらに詳細なモデルを構築していく。この繰り返しである。

確実な式の変形能力,結果の見やすい整理方法などは,経験で培った。

式は強力であるが,定性的説明に比べると凝縮された結論であるがため実感が湧くまでには,種々の数値を与えて自分の感性となるまでアナログエンジニアはケーススタディを行う。

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2008年10月22日 (水)

箱根の秘密箱

_2367 先週,箱根に宿泊。

目的は義父母の卒寿のお祝い&ひ孫との初対面。

90歳であの行動力はすごいな。

そこまでの年齢になるには,あと30年近くある。色々な方々とコンタクトしなければ,そして動いていなければ と思う。

箱根で出会った秘密箱。開けるには14ステップの操作が必要である。木工品であるが精巧な造りである。構造的にインターロックがかかっているので,私は最初開けるのに苦労した。我家のさちは説明書も見ずにすらすらと開けた。コツは押して駄目なら引いてみる。その時点で動くところは動かしてみることらしい。私にはできない業である。数学系と工学系の違いなのか。

箱の外装は,箱根の寄木細工。会館に立ち寄り工程を見学した。模様の線やブロックは総て木を集めて接着し特定の角度で切り出し接着したものを大型の鉋でスライスしたものである。箱の後ろに見えている模様は,そのスライスした化粧板で厚みは0.1mm程度。スライスしないまま製品にしているものもある。

箱根寄木細工,面白いそして独特の風合いを持つ。模様の形成プロセスも面白い。同じ手法を幾度も繰り返し,見事な模様をつくる。

アナログエンジニアの設計手法もまた,しつこいほどの類似した計算の繰り返しかも知れない。

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2008年10月21日 (火)

バリスタ

屋外設置電子機器では,筐体の外に出入りする電源線や信号線を経由して大きなサージが回路に侵入することがある。

誘導雷サージなどもその一例である。

この場合,サージアブソーバーの目的でバリスタを使うことがある。バリスタの吸収エネルギーが数10~数100ジュールのものが電子機器用途では使われる。

必要に応じてバリスタ回路の後段にLCフィルタやツェナーダイオードでさらに保護する。

バリスタ容量数100~数1000pFと大きいので,高周波信号の線間電圧制限には使いにくい面があるが,その効果は顕著である。多段保護する場合には,一番外側の保護素子から内側の素子が壊れるように耐サージ設計を行う。このようにすれば,保護素子が破損したとき,おおきなサージが入ったとして諦めがつくし,顧客にも説明しやすい。

大型の電気設備においてもそれなりのサイズのバリスタを使い,雷害を低減していると聞く。

屋外機器では,意外に大きなエネルギーをもつ単発サージが侵入する場合があり,耐サージ能力はシステムの信頼性に影響を及ぼすと考えるアナログエンジニアである。

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2008年10月20日 (月)

補助電源

最近はだんだんと少なくなってきているが,トランス絶縁された複数の電源を用いるとアナログ回路の設計の自由度が高まる。絶縁された電源(フローティング電源)は回路上では電池と同じ様に,自由にGNDと異なる回路部位に配置できるので,アナログ回路を簡略化・高性能化することが可能である。

浮いた電源を使うと,定電流回路やハイサイドスイッチング回路などにおいて,アナログ回路回路が著しく簡素化できる場合がある。浮いた電源では,流れ出した電流は確実にその電源に戻り,かつGND電位と基本的に無関係に回路を組むことができる。

絶縁型DC-DCコンバータの回路形式は種々存在し,磁気マルチバイブレータやリンギングチョークコンバータ(RCC)などが使われる。

これらは複数の巻き線をもつパルストランスを自作し,また絶縁型DC-DCコンバータの動作をよく理解しておく必要がある。

プリント基板上の高さ制限のある場合には,コアの選択肢が制約される。過去に確立された電源技術であるが,いまやアナログ回路技術者の中でも,この技術を伝承されている方は数少ない。

電源コントローラICメーカーの技術資料に従って非絶縁DC-DCの定数を,ICメーカーの提示する式に従って求めていくだけの場合が少なくない。

電源,されど電源。電源は電子回路の総ての電力を扱うために,確立された技術とは言え中堅回路技術者にとっても易しい回路ではないと考えるアナログエンジニアである。

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2008年10月16日 (木)

オペアンプ回路

集積化されたオペアンプを使いこなすのに必要な知識と計算力はトランジスタ回路に比べて少ないと感じているアナログエンジニアである。

オペアンプを用いた回路のDC的基本特性は,仮想短絡の概念とキルヒホッフの法則を用いることにより,簡単に求めることができる。

オペアンプ回路を設計するのに必要なオペアンプの2次的特性を考慮する場合にも,多くのICユーザーは内部回路に深く立ち入らないで済む。

これは,オペアンプ自体が,種々の一般的な場面では負帰還増幅器としての制御安定性を意識する必要が無いように設計されているからである。各種保護回路も備えている例が多い。

しかし,オペアンプの内部回路は数10個のトランジスタ,抵抗,コンデンサで,おもに構成されている。アナログ回路としては中規模あるいは小規模の回路だろう。

集積化オペアンプでカバーできない電圧・電流領域を扱う場合には,トランジスタ類を用いてオペアンプ自体を自作することになる。これが案外難しいのである。集積化オペアンプで使われる回路技法も取り入れて,発振防止や過電流保護なども備えなければならない。過大入力時の動作も配慮することになる。

アナログ回路のブラックボックス化はオペアンプ回路や3端子レギュレータから始まったように感じている。

しかし,今もなお優秀なアナログ回路を作るには,トランジスタレベルまで,場合によっては半導体製作のプロセスまでブラックボックス化しない執念が必要となる。

そして,ブラックボックスとなりつつあるオペアンプ本体やアナログICは専門家集団により支えられている。

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2008年10月15日 (水)

配線パターンの抵抗

配線パターンの抵抗は意外にある。

0.1mm幅,長さ10cmの銅箔プリント基板では1Ω近くある。

2層基板,多層基板あるいは集積回路中のパターン,厚膜HICでも異なるので,自分の良く使う条件で配線抵抗の目安を計算して覚えておくことが,DC的な配線・レイアウト方針決定の重要な要素となっている。

最近のデジタル回路では,基板上での配線遅延も無視できないので,タイミングの厳しい複数配線の長さ,太さを揃えることも多い。近接した並行配線では配線間の容量も考慮する場合がある。

スルーホールやコネクタの抵抗も数10mΩ存在する。細い電線でmのオーダーで配線すれば,ケーブルの導線抵抗も無視できない。

低速・精密アナログ回路では,要所はCADに頼らずパターンの太さ,経路も手書きで指定するのがアナログエンジニアの常である。そして,自分のための回路図は,配線・レイアウトを意識した表現としている。

配線といえども,奥が広い。

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2008年10月11日 (土)

弦の交換

複合弓(コンパウンドボウ)では,弦に取り付けたのぞき穴(ピープサイト)と押し手の先にあるサイトで照準を合わせる。中央の弦を交換するとフルドローしたとき弦に取り付けたピープサイトが横向きになることが多い。

弦がほつれて来たので,中央の弦を交換した。在庫がなく2週間あまり待ってようやく射場へ。

ピープサイトの粗い調整は,中央の弦の捩れの度合いを変えて行うのだが,右に左に捩ればよいかなかなか判断がつかない。試行錯誤で2時間格闘。ようやくピープサイトが見えるようになった。調整が難しいのは,弦の撚りを変えてもそのままピープサイトの向きに反映されないからである。

近距離で試射。まずまずの見え方。矢が少し上方向に集弾する。30mで数10射。ピープサイトの向きが少し横向きになる。照準位置が5mmほど以前より変わる。50mでもやはり5mm照準が変化した。

久しぶりの実射。この間,3時間。疲れた。次週にもう一度調整が必要。

コンパウンドボウはメカが複雑なだけに,調整箇所が多い。弦が弓になじむまでしばらく時間がかかるだろう。

それにしても弦を捩ると,カムの突起に弦のループをはめ込むのに時間がかかる。弦の捩り具合を変更するには,機械的に(ボウプレス)弓をしならせなくてはならない。しかし,よく調整されたコンパウンドボウは的中率が高い。通常のリカーブボウより,高速の矢を少ない力で発射できるのだが。

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2008年10月10日 (金)

センサエレクトロニクス

センサは今では電気的信号をデジタル信号処理が可能な形態で送出することが多い。

センサそのものは,人間の五感に代わって測定対象から物理・化学的過程を経由し多くは電気量の変化をもたらす。

多くのセンサは,磁場や電場あるいは適当な温度を与えて動作する。場合によっては,センサを電子回路の負帰還ループに入れて信号の前処理を行う。

このような操作を行うのはアナログ電子回路であり,センサエレクトロニクスと呼ばれる。

センサエレクトロニクスは多くセンシング場を形成するための励起回路部分と,微弱信号増幅部分とからなる。

センシング回路を構築するためにはセンサそのものの検出原理を十分理解する必要がある。さまざまな効果や現象を理解し,かつセンサとデジタル回路の狭間の中で最適解を見出すのがセンサエレクトロニクスである。

しかし,その回路をアナログ回路システムとして構築する技術者は払底し,センサエレクトロニクスを教えることのできる教師も激減している。そして,さまざまなセンシングシステムが次第にブラックボックス化している。この状態でよいのだろうか。身の回りにはさまざまなセンサが使われ,センサエレクトロニクスを経由して便利な機器が使われている。

便利な機器が溢れかえっている現在,ブラックボックス化しつつあるセンサとセンサエレクトロニクスあるいは物理・化学現象まで遡ることのできる人材の育成は国運をかけての急務であると考えるアナログエンジニアである。

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2008年10月 9日 (木)

原初的安定化電源

Photo 図は原初的安定化電源回路例。

元電源VINから抵抗R1を経由してツェナーダイオードD1に電流を流し,基準電圧VZを得る。その電圧をバイポーラトランジスタQ1のエミッタフォロワで低インピーダンス化して安定化された電圧Voを得る方式である。

この回路の出力はエミッタフォロワの性質から,Q1のVBEが26mV×ln(Io2/Io1)で変化するから,10倍の負荷変動があると約60mVの出力電圧変動を生じる。

同時に,ツェナーダイオードに流れる電流Izは,Ix-IBであるから,出力電流Ioの増加とともにIzが減少し,ツェナーダイオード電圧Vzが減少する。(負荷変動),IBはQ1のベース電流。

従って,この回路は出力電流の増加とともに出力電圧Voも減少する。抵抗R1にかかる電圧はVIN-Vo-VBEであり,入出力電圧差が小さいときにはIXは大幅に変動する。商用電源の変動幅は±10%が前提であるし,小容量のトランス経由の電圧であれば,軽負荷時の電圧はもっと上昇する。R1の選択と,入出力電圧差の設定がとても難しい。元電圧が上昇するとIxが増加し,Vzも増加する。(電源電圧変動)

この回路は負荷短絡保護も行っていないし,設計も意外に難しい。しかし,最小構成の安定化電源回路であるので,実使用する場合もある。

もし,負荷が急変した後で,数秒から数10秒の長い時定数の負荷変動があるなら,Q1の接合電圧とD1の温度変化を考慮すればより正確に安定状態の出力電圧の変動を予測できる。

簡単な構成の回路は意外に解析が難しい。回路シミュレータには,自己加熱による特性変化は通常考慮されていない。

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2008年10月 8日 (水)

ツェナーダイオードの動作抵抗

ツェナーダイオードは定電圧ダイオードとも呼ばれる。

この素子の使用目的の多くは,変動する電圧源からほぼ一定の電圧を得る目的や電圧の制限の目的に用いられる。

この際,ツェナーダイオードの電流変化ΔIzと電圧変動ΔVzの比から,動作抵抗r=ΔVz/ΔIzが定義されている。一定の電圧を得る目的では,元電源に対して抵抗とツェナーダイオードを直列にして使用するので,動作抵抗rが判ればツェナー電圧の変動を計算できる。

しかし,動作抵抗は電流Izの関数である。

10V以下の低い電圧では,動作抵抗は大きく動作電流Izに依存する。

数ボルト付近では,動作抵抗rはIzにほぼ比例することが多い。

このことは,抵抗とツェナーダイオードの直列回路でのVzの変動は,元電圧を高くしない限り,その変動の低減率があまり変わらないということを意味する。ツェナーダイオード回路は,動作抵抗rが一定として考えると性能予測を誤る。低電流領域で過剰な性能を予測することになる。

動作抵抗は定数ではなく,電流の関数と考える習慣がついているアナログエンジニアである。

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2008年10月 7日 (火)

安定化電源

電源回路の設計をたった3時間で教えてくれと頼まれたことがある。不可能な話なのでもちろん丁寧に断った。

安定化電源回路は大きく分けて,スイッチング電源と商用トランスを用いた電源の2種類がある。

いずれも目的・仕様に応じてさまざまな回路形式がある。電源は回路全体の電力の供給を行うので,高信頼性とともに,負荷短絡,起動時の過渡現象などをきちんと制御しなければならない。

たかが,電源と見なされることが多く,コストもサイズも厳しい要求がある。設計する立場から言えば,技術的には結構難しい部分がいくつかある。放熱設計もきちんと行わなければならない。

このため,汎用品は専業メーカーが担当する場合も少なくない。

商用トランス絶縁,コンデンサ平滑,ドロッパ式電源回路構成の安定化電源でも,きちんと設計するためには以外に高度なアナログ回路技術が必要である。コンデンサ入力整流平滑回路の部分だけを見ても,交流を整流してDC出力のリプルの谷電圧を計算するのも,非線形方程式になるのでシミュレーションするか,膨大な数値計算をするか,設計図表を使うしかない。いずれの場合にも,トランスとダイオードのパラメータの同定が必要になる。発熱するダイオードと熱に弱い電解コンデンサが近接する配置になるので,その手加減が問題だ。そのあと安定化電源回路部の設計が始まる。

たかが電源,されど電源。リスクが大きくコストもかけにくい。何よりもユニットの主役ではないのでできて当たり前なのだが,主回路以上に設計的に難しい部分がある。かくして,電源回路設計をやらない花形回路設計者が増えていく。

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2008年10月 4日 (土)

照準器の修正

アーチェリーでは,ベアボウ部門を除いて照準器を使用できる。

基本は,着弾の中心に照準器の位置を合わせればよい。

これは,着弾中心が下にずれているなら照準器の位置を下に下げる。上にずれているなら照準器の位置を上げる。左右も着弾のずれ方向に照準器を移動させる。

照準器の移動距離lは,着弾誤差Δと競技距離Lと目と照準器の距離Sで決まる。

l=Δ・S/L である。

lは70cm前後であるので,7mの距離ではΔ=10cmなら照準器の位置は1cm変えなければならない。

Δ=10cm,競技距離70mなら照準器の位置移動は1mmである。

70mで10点中心に合わせるには,10点の半径が6.1cmなので,コンマ1mm台の調整になる。

アナログエンジニアの身体能力は,70mで10金を狙えるほど姿勢が安定していない。

照準の正確な調整には,それを支える射の安定性が前提となる。

工学においても,それぞれの技量に応じて見える世界が違ってくるような気がする。

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2008年10月 3日 (金)

トリマ抵抗

トリマ抵抗の分解能・安定性は固定抵抗より通常劣る。抵抗値にも依存するが1回転形で1/200程度,10回転形の高精度品で1/2000程度出ればよい方である。

トリマの分解能を調べるには,3-1ピンを電源に繋いで,2ピンの電圧をどのくらいまで調整できるか調べてみるのが手っ取り早い。ドライバーで回し,離すときにも設定値は変化する。叩いてみれば,振動やショックに対する設定安定性もある程度把握できる。

トリマは固定抵抗に比べて温度係数が大きいものが一般的なので,ユニットとしての温度影響にも寄与する。

トリマの分担する調整量が多いと,設定困難になる。少ないと必要な調整範囲をカバーできない。

調整機構に使われるトリマ抵抗の定数設定や挿入箇所の選定には案外手間がかかる。その回路ユニットのばらつきをきちんと予測する必要があるからだ。

調整機構を適切に設計できるようになれば,アナログ回路屋としては熟練者の域であろう。

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2008年10月 1日 (水)

不確かさ

測定には誤差がつき物である。

測定値の値は,使用する計測器に依存して,国家標準との差異を生じる。

高精度で校正された機器を用いるなら,それは2次的標準として使用できる。

アナログエンジニアは電圧・抵抗・質量の0.1%以下の標準を自宅に備えている。

複数回,上位の機器と校正の機会があれば,自分の使用する計測器と国家標準との系統的偏差を調べることができる。

通常使用する電気計器は国家標準と1%程度の差異を生じている。温度依存性や経時変化は使用する機器の部品に依存する。

DC電圧標準で言えば,確度0.03%クラス。

抵抗なら0.01%クラス。金属箔抵抗の高級品をあるピッチでそろえている。

それらを元に基準電圧発生器を自作している。確度0.01%程度,温度係数5ppm/℃程度のものである。

アナログエンジニアは4桁以上の測定値は,測定機器や測定条件を明示されない限りその値を信用しない。さまざまな誤差要因が存在するためである。

0.1%を越える測定は簡単ではない。アナログが介在するためである。デジタルで言えば12Bit分解能からそろそろ確からしさの問題が付きまとう。大学で機器測定の誤差や測定原理を教えることが少なくなっていることを憂う。

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