原初的安定化電源
元電源VINから抵抗R1を経由してツェナーダイオードD1に電流を流し,基準電圧VZを得る。その電圧をバイポーラトランジスタQ1のエミッタフォロワで低インピーダンス化して安定化された電圧Voを得る方式である。
この回路の出力はエミッタフォロワの性質から,Q1のVBEが26mV×ln(Io2/Io1)で変化するから,10倍の負荷変動があると約60mVの出力電圧変動を生じる。
同時に,ツェナーダイオードに流れる電流Izは,Ix-IBであるから,出力電流Ioの増加とともにIzが減少し,ツェナーダイオード電圧Vzが減少する。(負荷変動),IBはQ1のベース電流。
従って,この回路は出力電流の増加とともに出力電圧Voも減少する。抵抗R1にかかる電圧はVIN-Vo-VBEであり,入出力電圧差が小さいときにはIXは大幅に変動する。商用電源の変動幅は±10%が前提であるし,小容量のトランス経由の電圧であれば,軽負荷時の電圧はもっと上昇する。R1の選択と,入出力電圧差の設定がとても難しい。元電圧が上昇するとIxが増加し,Vzも増加する。(電源電圧変動)
この回路は負荷短絡保護も行っていないし,設計も意外に難しい。しかし,最小構成の安定化電源回路であるので,実使用する場合もある。
もし,負荷が急変した後で,数秒から数10秒の長い時定数の負荷変動があるなら,Q1の接合電圧とD1の温度変化を考慮すればより正確に安定状態の出力電圧の変動を予測できる。
簡単な構成の回路は意外に解析が難しい。回路シミュレータには,自己加熱による特性変化は通常考慮されていない。
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