劣化の制御
形あるものは時間の尺度はともかくとして,永遠に存在するものではない。
「劣化の制御」は設定された製品寿命期間中にそのシステムが大過なく動作するための実用上極めて重要な技術である。
モノが何をできるかではなく,いつまで使命を果たすかの予測技術が劣化の制御に直結する。
傷が残るか否かは,材料,負荷の程度,環境に依存する。
昔は半導体は経年変化に伴い特性の変化を覚悟して電子回路を設計する必要があった。
電解コンデンサにおいては,3級アンモニウム電解液から4級アンモニウム塩に各社こぞって移行したとき,大きな問題が生じた。恐らく加速試験における加速率が異なる条件での寿命推定の誤りであろう。
金属疲労に伴う悲惨な事故例はコメット機の空中分解が有名である。低サイクル疲労破断である。御巣鷹山に墜落したジャンボジェット機は補習した隔壁の応力集中による金属疲労である。
電子回路においても,経年変化は存在する。難しいのは傷が累積するかどうかの見極めである。
微細化したICの中では高電流密度の中での,配線材料の移動(マイグレーション)が問題になっている。
高電界下の固体絶縁では部分放電に伴う劣化の進行が流体絶縁とは異なる様相を示す。
モノの損傷を40数年にわたり,追跡した経験のあるアナログエンジニアにとっては深刻な課題である。
日本の工学技術は無数の失敗経験に支えられ,その失敗を真面目に対策することで進歩してきたともいえる。
劣化の制御を扱う研究者に敬意を表したい。
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