プロトタイプの手作り
ユニバーサル基板を使って比較的小規模な回路ブロックを作る。半田付けで組み立てるのが一般的である。
アナログ電子回路の基礎的性質を調べるための要素試作的側面をもつ。高密度実装や高速回路では実回路と異なる現象が発生するが,そのときには,扱う周波数を下げたり,扱う電力をスケールダウンして回路素子・定数を決める。
ユニバーサル基板には部品を半田付けするためのランドと呼ばれる小さいドーナツ状の銅箔パターンが多数配置されている。
このようなプロトタイプの手作りでは,手書きの回路図を元に部品を取り付けていく。
問題は,設計に自信が持てないときに作ることが多い上,組み上げていく過程で,私の場合1%くらいの率で結線ミスが生じる。
回路図との実物の不一致もあり,手書き回路図に記載した回路が予想どうりに動くかも不明である。
10素子程度の回路規模でも,電源投入(火を入れる)の時には,そろそろと電源電圧を上昇させるのがアナログエンジニアの習い性である。通常は電流制限付の可変安定化電源を用いる。これは起動時の異常動作のチェックに役立つとともに,不具合時の部品損傷の確率を下げるためである。
予想した機能が得られないときには,設計ミスと配線ミスの双方を想定して,特に能動素子周りの入出力関係が,矛盾している場所を探索する。時には,半導体素子の損傷を疑う。ひとたび異常?動作すれば長い推理時間が待っている。手作りプロトタイプの製作規模は10素子前後が多いが,一度だけ100素子を越える完全には設計できていない回路をユニバーサル基板で作ったことがある。このときには泣いた。膨大な時間を費やした。
ユニバーサル基板での不具合は,カット&トライではふつう直せるものではない。自分の回路知識を総動員して,複数のミスも想定しあらゆる測定可能な場所のテスターの指示値からひたすら考える。
多人数の方に回路基礎実験を行う際には,通常は回路定数を全て与えることが多い。そして,その回路は頑健で素子ばらつきも考慮した回路をつかう。それでも,1回の実験で,動かないGrが出てくる。あらゆるミスのパターンがある。そこを適切なアドバイスで動かしてあげるのが指導者の勤めであると思う。
その後ろ姿をみて,アナログ回路屋さんは育つ。
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