理想化ダイオード回路余禄
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この回路は入力Viが正のとき,オペアンプの-入力端子(点a)がわずかに正となり,オペアンプの出力は負方向に振れる。すると,点aとオペアンプの出力間のダイオードD1が順方向になり点aは仮想短絡,オペアンプ出力はダイオードD2が逆方向で,点aの0Vがそのまま抵抗を介して出力されて常に0V。
負入力では,同様に考えてD1が逆方向,D2が順方向になるので反転増幅器と同じ動作をする。 これで,精密整流ができる。
アナログエンジニアは若い頃,この回路に出会ったときちゃんと理解するまで1週間かかっている。
では,D1が無いとしたらどうなるか?この条件は1種の故障解析である。
出力端Voで観測すると,ふつうは全波整流に近い波形がでてくる。正入力のとき,オペアンプの入力端子にかかる電圧がオペアンプの同相入力範囲にあるので,オペアンプのバイアス電流が無視できる。その結果,正入力時にはそのまま入力電圧が出力となる。出力端に負荷RLが繋がっているときには入力が分圧されて出力される。
このような例を挙げたのは,故障解析や不動作時の検討をすることが設計出来ることよりも数段困難であることを例示したかったからである。
ブラックボックス化のレベルをより根源的なものへ,源流の方向に遡らなければならない。難しい。
故障しないプラントはありえない。故障しない装置,器具もありえない。そして,本質安全(ルーツは労働安全,防爆か)は確率的にしか存在し得ないと考えている。
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コメント
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おつかれさまです。
片電源のrail to rail オペアンプを全波整流を回路は、よく採用しますが、あまり反転の半波整流について、今までじっくり考えたことがありませんでした。
非常に勉強になりました。
私は、寿命10年という想定で回路設計しています。
ストレス比50%以下で使えば、ダイオードは寿命が長くいため故障した場合を真剣にかんがえたことがありません。、部品の初期不良およびはんだ不良、イオンマイグレーションによトラブルがあると考えられます。製造現場/サービス部門の人は、あまり何故おかしい動作になるのか、あまり真剣に考えず、あたりをつけて、時間をかけずに、故障しやすいと思われる部品を一つ一つ交換して治しているようです。
製造現場でおかしい動作が起きても、あまり設計者に相談してくることは、まずないようです。
本題のD1がない場合の動作は、非常に意外な動作するんですね。バイアス電流が影響するとは、思いもよりませんでした。久しぶりに頭を使い、勉強になりました。
投稿: おとん@ | 2009年3月22日 (日) 23時44分
おとん@さま おはようございます。
この現象はシミュレータで綺麗に出ます。小型整流ダイオードは起動時の突入電流に関する情報が少ないように思います。
投稿: 5513 | 2009年3月23日 (月) 06時10分