SPICEのマクロモデル
オペアンプや一部の電源ICでは,回路シミュレータのマクロモデルが使われている。
オペアンプのマクロモデルは,入力段はトランジスタモデルを使い周波数特性やダイナミックレンジを数式で表現されている。
オペアンプのオフセット電圧やバイアス電流はよく表現されているが,特定の型名を指定すると入力特性は総て同じとなる。したがって,計測増幅器などのように2個のオペアンプの特性の差が問題になる回路においては,非常に良いシステム特性が結果として得られる。
マクロモデルの内部の数式モデルとその限界についての記載のある書籍は非常に少ない。
大部分は数式化されているので,オペアンプの内部回路の特性が影響する電源ノイズなどの解析は通常意味がない。出力ダイナミックレンジについても(電源電圧-固定電圧)の形である場合ほとんどなので,負荷電流による出力ダイナミックレンジやその温度変化などは現実と異なる。
必要に応じSPICEにより,テスト回路を組み現実と比較しておくことが重要である。マクロモデル以外の基本デバイスも,自分が解析しようとしている特性項目に関連するテスト回路をSPICEで組み,そのモデルの限界を調べておかなければならない。
手計算でどのような項目が問題になるを知らずして回路シミュレータを使う事は,あまりにも危険である。
アナログエンジニアはSPICEも含めたCAEツールを結果の予測や問題となる観測場所を決めることなく,CAEツールを使う事はない。
マクロモデルは計算時間の短縮に有効であるが,その分現実の回路との乖離を強く意識して使わないと,間違った結果を得ることになる。
私には,解析に使うモデルを知ることなくCAEツールを使う勇気はない。
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昨日の東京は低温,小雨。神田川沿いのソメイヨシノは咲き始めているが開花は遅れるだろうかな。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
こんにちは、いつもアナログ回路の本質に迫る記事を楽しく読ませていただいています。
コンパイラはCPUのハードウエアを隠し、OPアンプはトランジスタ回路を隠す。こういったブラックボックス化は、私のような電子工作初級者にとって難解な部分を見えないようにすることで、扱いやすくしてくれる効果があると考えています。
よそから入手したSPICEモデルも、こういったブラックボックスの一種ですが、『シミュレーション』という言葉がつくと、なぜか計算結果を無条件に信じてしまう人が多い気がします。(私も例外ではないのですが・・・)
投稿: gomisai | 2009年3月27日 (金) 03時46分
gomisaiさま おはようございます
>コンパイラは・・・・隠す。
うまい表現ですね。同感です。
ブラックボックス化が進むでも,ひとたびトラブルが生じるとその箱を開けざるを得ない。シミュレーションはモデルまで遡って見ないと,どのような現象は表現できるのかわかりません。ここが厳しいところと感じています。
投稿: 5513 | 2009年3月27日 (金) 05時21分