回路屋の育ち方6
←図はダイオードの温度特性の実測値。エミッション係数が2弱の素子。横軸:電流,縦軸:端子間電圧。
アナログエンジニアは若い頃から半導体の温度特性と深く係わっている。
図は小信号用ダイオードの温度特性の実測値で,-40℃から100℃まで広い電流範囲で測定している。回路上,ダイオード,トランジスタの温度係数を精密に予測する必要があったためである。
測定温度が区切りの良い数値になっていない実測値である。ダイオードの接合電圧が負の温度係数をもち,しかも,高電流側で温度係数が小さくなっていることが判る。したがって,接合電圧の温度係数を,たとえば-2mV/℃と断定したらそれは間違いである。使い方により,温度係数は倍以上も違うのである。
電子回路の温度係数を決める要因となる部分で,非対称回路では回路の温度特性予測に欠かせない概念である。
測定から,もう30数年経過するが,この品種は今も市販されており秋葉原で簡単に手に入る。
この実験結果は後に一緒に開発を行うことになったYKさんにより,半導体物理から理論式にまとめられた。ダイオードとトランジスタでの温度特性の相違も定量的に良く合う式であった。
その後,YKさんとはさまざまな形でお付き合いさせて頂き,半導体物理の世界も知ることとなった。
単体ダイオード,トランジスタで組む回路における私の集積回路的発想はこの時代に遡る。半導体の温度特性に関するアナログエンジニアとしての定量的原体験といえよう。
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コメント
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流石5513さん、30年も前の作成データを未だに大切に保存されているとは・・貴重ですね。
私もお世話になったダイオードです。
半導体の温度依存性には悩ませれました。
投稿: mako | 2009年4月23日 (木) 15時03分
MAKOさま こんばんは
このデーターは1冊目の本に使いました。そのとき会社の承認を得ているので,その原稿図表を掲載できました。
投稿: 5513 | 2009年4月23日 (木) 18時28分
お疲れ様です。
ダイオードの温度係数は、
約-2.2mV/℃と本によく書かれています。
これほどまでに特性がかわることを、
あまり意識したことがありませんでした。
勉強になります。
1個での温度特性はわかりました。
ダイオードは、個々の温度特性のぱらつきが気になります。
製造ロットによるばらつきはあるのでしょうか?
投稿: おとん@ワークシェア休日 | 2009年4月24日 (金) 13時31分
おとん@さま こんばんは
1個の特性では何も判りません。ある接合電圧での温度係数を予測できるだけです。
数10個測定しますと,接合電圧のばらつきのヒストグラムは得られます。私の経験では,ロット内ばらつきとロット間の平均値のばらつきは同程度だと考えています。
投稿: 5513 | 2009年4月24日 (金) 19時33分