パワーFETの高速化
←北の塀際に咲いた水仙。我家のさちはこんなところにも増えた球根を植えていた。
パワーFETは駆動回路次第でスイッチング速度が変化する。多くのFETのスイッチング速度は,駆動源が50Ωでの測定による参考値である。
高速化は駆動源を低インピーダンス化するのが効果的である。1000V/μs,1000A/μs程度を2昔ほど前にアナログエンジニアは達成できた。現在は,より少ない駆動能力で実現できるであろう。
100W級のパワーFETでピーク時のゲート電流を1A近くまで大きくすると,データーシートより短いスイッチング時間を得ることができる筈だ。スイッチング時間を制約するおもな1次要因は,駆動回路のピーク給電能力とゲートの寄生抵抗で決まる。
逆に,駆動源の電流供給能力が低いと時間がかかる。スイッチング時間が長いと,相対的にオン時の電力損失が増えるので,定常状態の時間とスイッチング時間の比率を一定にしないと熱的問題が生じ得る。
不必要な高速化はゲートドライブ回路の複雑化を招くので,必要十分な速度にとどめておくのがBESTであると私は考えている。
アナログ回路はFETのスイッチングだけを見ても,たとえば「速ければ速いほど良い」との単一価値基準で定数を決めているわけではない。複雑に相反する設計要因の中でのバランス感覚がアナログ回路の一側面であろう。
『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な応援の1票をよろしくお願いします。【押す】 ←今,何位でしょうか。
« 設計は果因関係 | トップページ | 回路屋の育ち方5 »
「電子回路」カテゴリの記事
- 電流増幅器(2012.04.18)
- 高電圧回路(2012.04.10)
- 金属箔抵抗(2012.04.07)
- SW電源(2012.04.06)
- アナログ回路の信頼性(2012.04.05)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
お疲れ様です。
パワーMOSの高速化は、難しすぎて得意分野でありません。周囲に得意な人がいませんでしたから。
以前、立ち上がり時間と立ち下がり時間:1ns、パルス幅:数ns、最大電流1~2Aの駆動系でレーザダイオードでパルス変調させようとしたことがあります。今は専用ICが海外製でありますが、当時はパワーMOSの選び方もわからず、結局実現させることができず、あきらめました。
当時、相談相手がいれば、また面白い設計ができたかもしれません。
投稿: おとん@ | 2009年4月 8日 (水) 16時20分
おとん@さま
低電圧,1A級の高速SWですか。個別部品では,通信用のデバイスを使わないと,ちょっと厳しいかも。駆動段が一番の問題だと思います。
1000V/μs,1000A/μsの数字は,ECLの速度くらいです。
投稿: 5513 | 2009年4月 8日 (水) 17時44分
こんにちは
いつも興味深いお話をありがとうございます。
私もアマチュア時代に、教科書では見たことがあったのですが実感した経験がありました。SW降圧コンバータのスイッチ部をバイポーラTrからMOSFETに換える改造をしたのですが、On抵抗の低いFETで効率が悪く、On抵抗が高いのに効率が高いものがあって最初理由がわかりませんでした。
On抵抗の高いFETはゲートの入力容量が小さくその分速くONOFFできスイッチングロスが少なかったわけです。
教科書どおり、導通時の損失とスイッチング損失のバランスを考えることを思い知らされました。
投稿: e-junkie | 2009年4月14日 (火) 13時24分
e-junkieさま
パワーMOSFETのオン抵抗は,耐圧BV(DSS)とチップ面積が耐圧の2.5乗に比例するとされています。
詳細は拙著:実践アナログ回路設計・解析入門の40Pにデーターが記載されています。
ルネサステクノロジ社の方に作っていただいたデーターです。こちらの要素もありそうです。
投稿: 5513 | 2009年4月15日 (水) 05時52分