SPICEで発振させる
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回路シミュレータSPICEでの発振現象は多くのエンジニアが試みる回路シミュレーションである。
しかし,SPICEでの発振を観測するには,発振回路の深い理解が必要である。回路によっても発振の行われる機序が異なる。
よく行われる2石式トランジスタマルチバイブレータでは,通常Cの片側に初期値(残留電荷)を設定し,起動時の非対称性を与える。現実世界では,ふつう残留電荷の無い状態で発振する。発振させなければならない。
アナログエンジニアは,CかRに0.1%程度オーダーで定数を非対称化し,電源をステップ的にVCCまで上げて発振させる。トランジスタ特性に非対称性を入れる手段もあるが,類似の2つのトランジスタモデルが必要になる。これらの方がより現実に近い。実回路では遅い電源上昇率でも発振する。この場合は,2石のトランジスタの正帰還により,ある電源電圧になったとき,正弦波発振を経て方形波発振に至る。これは,ノイズを種にしての発振現象である。
ウィーンブリッジ発振回路では,ノイズの代わりに微小な交流信号を回路に与え,発振周期に比べ長い時間を解析時間に設定する。この方法でひずみ率0.1%以下の正弦波発振も可能である。もし,AGCがかかっている回路構成なら,その回路特有の振幅オーバーシュートもシミュレーションで出る。
積分器とヒステリシスコンパレータを用いた三角波発振回路ではDC電源のみを用いても発振する。ただし,OPアンプのマクロモデルが振り切れ時にも多少は利得を持つように構成されていることが必要条件であろう。
発振回路のシミュレーションは注意深く,そして中途半端なテクニックを使うべきではないと考える。現実世界での起動時の挙動の理解に繋がらないからである。
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