回路屋の育ち方8
←庭に1株だけあるガク紫陽花(ただし,去年の撮影),遅咲きの品種かもしれない。現在の実物は花芽がようやく揃い始めた段階。
アナログエンジニアにはトップになれるカリスマ性が足らない。従って,良くて参謀的存在となりがちである。
不遇の時には,トイレで幾度泣いたことか・・・・。自殺を必死に考えた年もある。綺麗な死にかたなど無かった。家族がとりわけ「我家のさち」が傷ついた私を支えてくれた。
その時代は,どんな仕事でも引き受けた。多くは,失敗開発の再開発や弱点を持つ設計の再設計などである。このような場合,成功しても表に出ることはまず無い。ひどい場合には,他人の名前が,その開発者のキーマンとしてクローズアップされた。ゴーストライター的存在に近い。
その状況の中で常に実行してたのは,特許と学会発表では重要なものは,トップネームあるいは単独名で業績を既成事実化することと,技術的な電子透かしのような部分を社内文章に組み込んでいたことである。手を汚していない人間が知りえない事実のキーワードを残し,かつ,その技術を知らないと実際には製品かできない部分を秘匿した。特許では,自分にしか破ることが出来ない穴を埋め込んだこともある。転職のことを考えてのことである。
不遇の時代であるから,ハングリーであり獲得した仕事を仕上なければ,次の仕事にありつけない。逆に,さまざまな仕事で高い成功率を維持する本能的やり方を身につけた。
これが,その後の自分を形成した。真実がわかる,判らないとやれない職種:研究所のキーマンや品質保証部門の方から評価を戴いた。
アナログエンジニアが表舞台に立ったのは,平成3年の技術士(電気・電子)登録の後からである。当時の科学技術庁長官は山東昭子氏である。この年以降,次第に表舞台にも出る機会が増えた。
技術士(電気・電子),労働安全コンサルタント(電気安全),論文博士(東京大学),大学向けのアナログ回路教本と毎年,ステータスを上げた時代もある。
アナログエンジニアは自分を知る人間のために全力を尽くす。それが私の美学のひとつである。裏切りは許さない。ただし,報復する力と立場を得たときにしか実行できないが・・・。精密アナログ回路は単に私の表の顔に過ぎない。
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コメント
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アナエン先生にそんなご苦労があったとは。だから、あのようなかゆい所に手が届く教科書が書けるのですね。マイナス経験を愚痴ではなくプラスに昇華するのがプロフェッショナルですね。勉強になります。
投稿: アマサイ | 2009年6月15日 (月) 20時58分
アマサイさま こんばんは
お褒めに戴き恐縮です。
従来の大学教科書で私は教える自信がありませんでした。それで,自分が判るように本を書きました。
投稿: 5513 | 2009年6月15日 (月) 21時15分
初めてコメントします。
先生のことは、アナログ電子回路設計の本が出る前から存じていました。前職がY社で差圧○○○を開発していました。先生の居たH社のIさん(そのままですね)の博士論文(W大応物?)などもずいぶん読み込みました。先生の特許も読んでいます。EとかEIとかセンサとか名前がついていたのを覚えています。バルーン効果とかゆうのも。たしかSICEの論文も読みました。
競合他社から見ていると技術のHを代表するような人でうらやましかったですが、このような苦労があったとは驚きました。
私は、今独立して、FA製品の輸入販売や自動機の設計製造をしています。アナログ回路やセンサには全く関係ありません。独自製品を作ろうとしていますが、日々の雑務におわれ、先立つ物がなく、ズルズルしています。独自製品としては、MEMSセンサを考えています。
では。
投稿: 大谷技研 | 2009年7月 6日 (月) 00時03分
コメントありがとうございます。
私の若いころのライバル社のY社さんの方ですね。お名前が判れば、特許で知っている方か面識あるかと思います。容量式が得意なのに、H社のひずみゲージ方式の妨害特許を出せるY社さんの余裕をいつも羨ましく思っていました。ハープセンサの博士論文も読ませていただきました。
いつも、思うことですが、競合他社のエンジニアさんとは、いつの間にかライバルの領域を超えて、仲間意識が出てくるような気がします。EIセンサは私の発明で、初めての3D-MEMS構造で、ハープセンサと同様に学術価値も高いものでしたが、特許以外の情報は永らく秘匿しておりました。
Siダイアフラムの非直線性は、バルーン効果により実用領域が制限されますが、構造の高次元かにより、約1桁ずつ実用領域を本質的に広げてきました。
細かい連絡のやり取りは、ブログ記載のアドレスへ。いつかリアルでお会いしたいものです。
投稿: 5513 | 2009年7月 6日 (月) 10時52分