無安定マルチの発振
雨上がりの撮影なので、写真をクリックして拡大すると、雌しべの下に水滴が付いているのが見えます。
2石無安定マルチ バイブレータは、かなりいい加減な回路定数でも現実には発振する。
2石無安定マルチバイブレータは直流的には、両トランジスタがONで安定である。交流的には、反転増幅器(インバータ)2段のAC増幅器=正帰還回路である。
この回路の発振は、電源の立ち上げにより行われる。早く電源を立ち上げると、回路の非対称性により、どちらかのトランジスタのコレクタエミッタ間電圧が一方より早く低電圧になるので対称性が崩れ一気に、その時点の振幅(全振幅より小さい)で起動し、2サイクル目から定常発振する。
しかし、回路シミュレータSPICEを使う際、DC電源を発振回路電源とし、対称回路とすると起動しない。SPICEは過渡解析の開始に際して、コンデンサを省いてバイアス計算を行うから、両トランジスタがONの状態になる。
発振が電源起動に依存して開始することを知っているなら、早い立ち上げのパルス電源モデルを使うであろう。しかし、SPICE上で発振することはない。SPICEで同じ部品を使うと、完全に対称回路となってしますからである。計算精度が高いので、2つのトランジスタが同じように挙動し対称性が崩れないまま両オンの状態に至る。起動方法は、回路のR,C,トランジスタのいずれかにわずかな違いを入れておけばよい。10kΩの抵抗なら、10.1kΩなどのように片方のみ誤差を入れればよい。
今回、非常にゆっくりとした電源立ち上げによる完全対称無安定マルチバイブレータのSPICE上での起動に成功した。予想したように、ループ利得が+1を超える付近の電源電圧で正弦波発振を経由して全振幅発振に至る。このSPICE解析にはいくつかのコツがある。
一発起動と遅い電源立ち上げによる正弦波発振経由の発振を組み合わせれば、SPICE上でも必ず発振する回路を構築することができる。
アナログエンジニアは発振の本質が見えたと感じている。コンデンサの片側に初期値=残留電荷を入れてDC電源でSPICE上で発振させる方法は、現実には極めて考えにくい不自然な起動方法である。こんな発振手段がまかりとっているようでは、使う方もサポートする側も発振の理解不足と言わざるを得ない。
それでも、2石無安定マルチバイブレータはSPICE上でのテスト回路としてよくつかわれるのである。
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コメント
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私は大学3年で電気機器についての
勉強をしていますが、講義に
ついていけていない気がしています。
技術の進歩の速さを実感しています。
投稿: こんにちは | 2009年7月19日 (日) 02時28分
電気は見えないので、機械系よりも抽象度が高い分判りにくい部分があると思います。電気計測分野をしっかりと勉強すると徐々に電気が見えるようになります。
そう言う私は、大学では電気系は及第点すれすれでした。
最近は、パワーエレクトニクスが多くなって、ますます実世界の電気が見えにくくなりました。
投稿: 5513 | 2009年7月19日 (日) 19時24分