パルストランスの設計
スイッチング電源のキーパーツの一つがパルストランスである。これは購入するものではなく、電源設計者がパルストランスを設計するのだ。少なくともアナログエンジニアは、そのように考えている。
鉄損(コアロス)はコア材と使用磁束密度と周波数でほぼ決まる。通常はフェライトコア材を用いるが、SW周波数が高くなれば使用磁束密度を下げる必要がある。
線材の電流密度は一般に商用電源トランスより高く3-7A/mm2程度までは、自然空冷で使用されるが、2次側のダイオードやコンデンサを近接してレイアウトする必要があるので、実装との兼ね合いで温度上昇を考慮して選択する。
フォワード形コンバータの場合にはインダクタンス値をある程度大きく取ればよいが、フライバック形の場合には、設計値のインダクタンス、使用磁束密度、線材の電流密度を考慮した設計となる。自由度が足りないので、コアギャップでインダクタンス値を調整するのが一般的である。
小容量の場合コア断面積が小さいので、小径の線材を多数回巻き線する。1次コイルと2次コイルを収納できる窓面積も制約条件となる。
1次コイルと2次コイルはなるべく密結合になるよう同心状に巻くが、1次コイルと2次コイルの容量結合が増えるので、目的に応じ結合率を下げてでも寄生容量の低減を図ることもある。
大容量のパルストランスで周波数を上げすぎるとステップダウントランスでは2次側の巻き数が少なくなりすぎる。小容量のステップアップトランスでは、寄生容量の影響が大きくなり、かつ、絶縁耐圧確保のために種々の巻き線構造が採用される。小さくとも電圧が高ければ、絶縁厚さが絶対的に必要になるのでこの部分の絶縁設計が厳しくなる。
パルストランスの設計は、回路設計との兼ね合いで決まってくる。従って、SW電源システムの諸元を考慮して、回路方式が選択される。SW電源トランスは、非絶縁DC-DCコンバータの設計よりも一段と高度な技術が必要となってくる。しかも安価に高信頼品を作らねばならない。
電源回路の基礎知識は、精密アナログ回路の性能に多大な影響を及ぼす。
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