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    アナログ電子回路設計入門 (1994.12)、コロナ社: 実践アナログ回路設計・解析入門 (2005.1)、日刊工業: オペアンプ基礎回路再入門 (2005.7)、日刊工業: ダイオード・トランジスタ回路入門 (2005.12)、日刊工業: スイッチングコンバータ回路入門 (2006.9)、日刊工業: これならわかるアナログ電子回路基礎技術 (2007.6)

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  • 電源を含む精密アナログ電子回路の設計・開発、およびその教育、技術指導。センサ・アクチュエータシステムの構築。電子機器の不良解析指導および再発防止指導。解析主導型設計の推進と回路シミュレータの実践的活用指導。技術的側面からのプロジェクト管理指導。

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2009年10月

2009年10月30日 (金)

hoeとアーリー効果

003 ↑巻貝の様に丸まっている我が家の茶トラ。模様が放射状に、ほぼなっているのが面白い。

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hoeはバイポーラトランジスタのエミッタ接地での出力アドミタンスでVCE-IC曲線の勾配ΔIC/ΔVCEである。

しかし、方眼グラフ上では、電流依存性が大きい。

VCE-IC曲線の直線部はコレクタ電流が増すにつれ、急勾配になる。

直線部を左の方に延長すると、-100V前後のところVAで一点で交わる。これをアーリー電圧と呼ぶ。

VCE-IC曲線群を広い範囲で表すには

IC=Is・hfe(1+VCE/VA) と表現すれば、簡単な式で、VCE-IC曲線群を一括して表すことができる。したがって、ΔIC/ΔVCE≒IC/VAとなる。

ハイブリッドパラメータは広い範囲でのトランジスタ特性の表現には十分でないとアナログエンジニアは常日頃感じている。

hoeは基本的ICに比例するパラメータである。hパラメータの言葉を知っていてもそのパラメータを計算・測定できなければ意味がない。

アーリー電圧の測定にしても、条件を選んで注意深く測定しなければVCE-IC曲線群がほぼ1点で交わることはないのだ。大学の先生はこんな基本的測定はやらないだろうな。

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2009年10月29日 (木)

電源電圧による特性変化

電子回路の電源電圧が変化すると、多かれ少なかれ回路特性が変化する。

部品の電圧特性に起因する場合には、即応するので、回路特性の変化は速い。

たとえば、バイポーラトランジスタのアーリー効果などはすぐ影響が回路特性に波及する。

電源電圧が変動すると、基板の温度が消費電力の変化と連動して変わる。この温度変化は、部品レベルだと数秒程度であるが、筐体温度が影響する場合には、時間オーダーのこともある。

回路の電源電圧依存性を低減するには、帰還抵抗や基準電圧源などの温度特性も良好なものを選ぶ必要がある。

精密アナログ回路においては、センサの温度依存性や電圧影響がシステム全体の特性に影響する。回路の消費電力変動に伴い温度を介して特性に影響するのである。

起動後、安定するまでの時間が長い回路システムは温度影響に問題がある場合が少なからずある。

他のルートとしては、スイッチング電源などを用いているときにはそのスイッチングノイズによる誤差が電圧影響に変換されてしまう場合もある。

電圧影響、丹念に温度影響と素子特性の電圧依存性を追跡すれば、定量的に求めることができる。

また電圧影響が大きい場合には、概して、温度特性も良くない場合が多いとアナログエンジニアは考えている。

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2009年10月28日 (水)

ロボット

理系を目指す小中学生の関心は、宇宙・ロボット・アニメが多いらしい。

要するにマスコミに取り上げられ目に触れる分野が多いのだ。

最近では、表情を作る女性型ロボットも話題になった。

しかし、必要なのは人の姿とは全く異なる産業用ロボットや、極限環境下で動作するロボットだ。愛玩用ロボットは玩具メーカーに任せればよい。国費を投じて開発すべき意味合いは薄いだろう。

ロボットは一例に過ぎない。

アナログエンジニアは国の科学予算をすべての大学の教師に分配する必要はないと考えている。基礎研究や要素研究ならいざ知らず、他の研究者がやっていないニッチ研究テーマで補助金をかき集める方も少なからず存在する。

その一方で、最先端の製造現場では、自動化された設備で大量生産しているので、試作段階以外では人減らしが進行している。機械を作れ操作する方は必要だが、手仕事は少なくなる一方である。当然、中途半端な技術者、技能者は不要になる。雇用をサービス業に回さなければ、あぶれる人が多く出てくる。

大学全入時代、現代の工学についていける人材をすべての大学は輩出しているのだろうか。

大学卒と名がつけば、会社の方も組み立て職人にするわけにいかないから、雇用のアンマッチが生じるのは当然である。難しい時代である。

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2009年10月27日 (火)

大雨の中のドライブ

今日は台風一過の秋空。昨日は午後から大雨。

そんな中、午後から家内と隣町に車で外出。横殴りの雨で、カーブミラーを始め、鏡類は雨粒で視認性が極端に悪い。サイドミラーはミラー自体の雨粒と窓ガラスの雨滴で殆ど役に立たない。

車載のフロントサイドビューモニタなどカメラ類は噴き上げる雨滴が付いていて、これもダメ。

愛車はセダンなので、ノーズが長い。少し突き出さないと車庫出しの安全確認も難しい。頼りになるのはフロントウィンドウの視野だけ。

自宅からの車庫出しの際、左側から来た車に警笛を鳴らされた。幹線に出る際の右折れにも時間がかかった。

帰り道は、大雨の中の薄暮時。片側2車線の道のコンクリートの中央分離帯の視認性が極端に悪く、左側車道の白線を目印に運転。ぼけたモノクロ映画を見ているような感じで運転帰宅。

疲れはしなかったが、横殴りの大雨となると、速度を控えめに運転するしかない。前後に超音波センサも備えているが、いつもより検知距離が長め。

視認条件が悪化すると、いくら車載センサがついていても、人間様の注意力にはかなわない。そう、改めて感じた次第である。

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2009年10月26日 (月)

異なる電流値でのVBE

002 ←陸上自衛隊 勝田駐屯地の記念祭での展示品の戦車。

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バイポーラトランジスタのVBEは、使用電流と温度により変化する。

温度に関しては、VBEの温度係数は約-(Eg-VBE)/T Eg:エネルギーギャップ T:絶対温度 で見積もることができる。

VBE差の温度係数なら、ΔVBE/Tである。

個別トランジスタの穏やかな使い方だと、VBEは0.65V位だからVBEの温度係数は2.0mV付近になる。温度範囲が100℃の場合、0.2Vも変化する。

VBEは使用電流によっても異なる。2つの電流値I1、I2でのVBE変化は、ΔVBE=kT/q・ln(I2/I1) k:ボルツマン定数 T:絶対温度 q:素電荷 だから、1点の電流値I1とVBE1から異なる電流値でのVBEが判る。この計算、トランジスタの基本式 I=Is・exp(VBE/(mVT)) VT::熱電圧kT/qから導ける方は多くないだろうな。

電流密度が高くなると、各端子の寄生抵抗(大抵は+の温度係数)が効いてくるのでもっと複雑な挙動を示す。

このような対数・指数の計算をできない電子系エンジニアもたくさんいるようだ。ゆとり教育の世代に多いような気がする。

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2009年10月23日 (金)

ブリッジ回路の温度補償

ひずみゲージなど抵抗性センサでホイートストンブリッジを組む場合がある。センサ出力に比べ、初期抵抗のばらつきは大きく、厳密には温度係数も十分揃っていない。

この状態から出発して、ブリッジを特定の2つの温度点で平衡させる手法がブリッジ回路の温度補償である。

補償と言うと悪いものをごまかす悪いイメージを持つ方もいるが、立派な回路技術である。

各抵抗が金属線ひずみゲージRiの場合には通常、温度係数が低いので、感温抵抗Xと温度係数の低い抵抗Yを少なくともブリッジの2か所に直列、または並列に挿入する。

測定可能な量は、各抵抗の概略の値、励起電圧、ブリッジの不平衡電圧である。

これを元にして2つの温度点で式のままブリッジの不平衡電圧=0の式を立てる。

この式をX,Yについて解くことがブリッジ回路の温度条件を求めることになる。

解を求める過程では、たとえば級数展開して微小項を省略しないと見通しの良い結果が得られないことが多い。

未知数2つ、式が2つなので解は一意的に求まる。

当然、個々に温度試験する必要がある。この負担があっても、センサとしての性能が上がるので、実用されている。

感度の温度補償や、高性能ピエゾ抵抗素子を用いたセンサの高次の温度補償も行われる。補償方式や、使用素子により補償位置や回路方式は異なっていくるので、温度補償のアルゴリズムや使用素子の詳細が明らかにされることはあまり多くない。

センサにおける各種補償は縁の下でセンサを支える重要な回路技術の一つであろう。

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2009年10月22日 (木)

オペアンプの温度特性

001 ←陽だまりに咲いた早咲きの椿?

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オペアンプがDC的に扱える最小電圧を制限するのは、オフセット電圧ドリフトである。通常は温度範囲を示して、μV/℃で与えられる。使用温度範囲×■■μV/℃が誤差となる。

近年は、±0.1μV/℃typ.のものも入手できるので、金属線ひずみゲージアンプなども簡単に構成できるようになった。

このμV/℃は、決められた温度範囲での平均温度係数である。したがって、温度領域によっては、オフセット電圧が2次関数的に変化するものもある。

この限界を超えて微小直流電圧増幅を可能にする手段がある。

その手段は「温度選別」と、たとえば3オペアンプ型計測増幅器などの対称回路によるオフセット電圧相殺回路の使用である。

温度選別はオペアンプ単体を試験回路を装着し、オフセット電圧ドリフトを測定し、オペアンプのペアを作成するのだ。オフセットドリフトが2次関数的に変化するものもあるので、温度測定点は3点使用する。分類のピッチは必要に応じ0.5μV/℃から0.1μV/℃程度が妥当であろう。

アナログエンジニアはこの方法で40年前に、0.05μV/℃のアンプを実用化した。しかも、μパワーオペアンプを使ってである。

分布の中央付近の、μV/℃が小さな物は単体で低ドリフトを要する回路部分用に使用し、高い歩留まりで当時実現できていなかった直結DCアンプを構成した。

測定に要する費用が引き合えば、選別により超低ドリフトアンプを構成する手段がある。

工業計測用途では経年変化も問題になる。そこは、温度を変えて、長期ドリフトの変化の少ない品種を選択した。

この方法を使えば、超高入力インピーダンスと低ドリフトを兼ね備えたDCアンプも容易に構成できる。

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2009年10月20日 (火)

バンドギャップ基準電圧

Ref_0002 ←R.J.Widlarによるバンドギャップ型基準電圧回路。

バイポーラトランジスタ対のVBE差の温度係数はkT/q・ln(I1/I2)からk/q・ln(I1/I2)である。

ただし、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、I1:Q1のコレクタ電流

VBEの温度係数は概略-(Eg-VBE3)/T、Egは常温でのバンドギャップである。

VBE差の温度係数は正、VBEの温度係数は正であるから、うまく加算すれば、0温度係数の基準電圧を得ることができる。1段なら1.25V、4段なら5Vが得られる。何よりも貴重なのは低い電圧で高精度の基準電圧が得られる点にある。

図の出力電圧Voは、Vo=VBE3+kT/q・R3/R2・ln(I1/I2)

温度係数が0となる条件は-(Eg-VBE3)/T+k/q・R3/R2・ln(I1/I2)=0

この条件を入れてVoを求めると、Vo=Egとなり、Siのエネルギーギャップ約1.25Vで0温度係数が得られる。この回路形式がバンドギャップリファレンスと呼ばれる由縁である。

逆に図の回路出力がエネルギーギャップEgで0温度係数となることを知っているなら、VBEの温度特性を計算できる。

3個のトランジスタが完全なマッチドペアなら、およそ抵抗に要求される比精度は1%で100ppm/℃となる。同一電流でのVBEのマッチングの必要精度も同様に計算できる。

この回路とは異なるが、若き日のアナログエンジニアはバンドギャップ基準電圧を含む回路の設計を行った。当時の抵抗マッチングは1%であったため、温度特性の精度不足と量産数不足で実用にはならなかった。

なお、バイポーラトランジスタのVBEの温度係数は中級の半導体物理の知識でも予測することはできる。

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2009年10月19日 (月)

VBE差の温度係数

014 ←我が家の猫の肉球。棚の上に寝そべっているところを、はみ出した足を下からパチリ。

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バイポーラトランジスタトランジスタの基本式は

I1=Is・exp(VBE1/VT)・・・・・・・・・・(1)

Isは飽和電流、VTは熱電圧=kT/q、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、q:素電荷

I2=Is・exp(VBE2/VT)・・・・・・・・・・・・・・(2)

式(1)、(2)を両辺割って対数をとると

ΔVBE12=VBE1-VBE2=VT・ln(I1/I2)・・・・・・・(3)

VBE差の温度変化はVTすなわち絶対温度に比例するので、常温では1/300=3300ppm/℃となる。+の温度係数である。

VBEはおもに電流密度に比例するので、トランジスタペアなら使用電流の比の増大とともに温度係数は大きくなる。

この理由でバイポーラトランジスタ入力オペアンプの直流特性がおもに初段差動対で決まっている場合には、オフセット電圧とその温度係数には1/300℃の相関がある。

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2009年10月16日 (金)

理想的トランジスタ

現実には存在しない寄生素子のないトランジスタはSPICE上でなら、いくらでも作成できる。回路も組むことができる。

hFEが10000でアーリー効果がほとんどないトランジスタを使えば簡単な回路構成で、たとえばスイッチングレギュレータコントロールICの機能を実現できる。この手を使えば、スイッチングレギュレータ全体の詳細特性を丸ごとシミュレーションできる。

単体のトランジスタにおいて、寄生素子のないモデルと、1項目だけ寄生素子を現実的な数値にしてシミュレーションし比較してみると、その寄生素子の効果が良くわかる。シミュレーションは数式モデルに基づいて計算できるので、寄生素子をカットしたり、大きく設定することができる。

寄生素子の効果を知るには、なるべく簡単な回路で特性を調べるのが良い。一挙に複数の寄生素子を設定すると、複雑化する。

実用的回路設計は、寄生素子やばらつきを考慮しながら回路形式と部品の品種、受動素子の定数を選ぶ。

世の中の回路教科書ではあまり記載されていない寄生素子などの影響を自分で調べることができる。

回路シミュレータSPICEにおいて、モデルを複雑化して能動素子をブラックボックス化するだけの使い方では、不十分である。モデルに付随する各種パラメータの意味を十分に理解して使う必要がある。

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2009年10月15日 (木)

アナログは不要か

デジタル回路を使用すれば、複雑な演算が可能になる。多くの設計者にとって、手っ取り早く複雑な機能を実現する手法として定着している。しかし、分業化、LSI化の進展により、ハードウェアとしてのデジタル回路は、回路技術と言うより、FPGAに見られるようにソフト化された技術となりつつある。

デジタル回路もブラックボックス化のレベルをゲートレベルまで下げれば、アナログ回路その物である。しかし、いまどき、ゲート回路からデジタル回路を作る方は、ICメーカーの一部の方だけであろう。

一方アナログ回路は、様々なレベルと速度の信号を扱い、AD変換器を介して正規化された信号まで処理する。その後はLSI化されたハードとソフトにより複雑な機能を簡単に実現できる。

アナログ増幅器の入力は自然界の信号であり、実に多様である。その最適化の目標も用途に応じて多様である。アナログ回路は自然界とロジックの世界をつなぐ架け橋であるが故に、そして先人の様々な工夫の上に成立しているので、ある一定水準を超えた設計をできなければ存在意義が殆どない。結果0-1の世界である。

電源回路もまたアナログ回路であるが、近年ではICプロセスと放熱の制限以下の回路では少数の部品をメーカーの指示に従って選択するのみである。

アナログ回路はまた、ロジックの世界の判断結果をもとに、自然界に働きかける駆動回路も扱う。アナログ回路は自然界の情報を得て自然界に働きかけるフロントエンド、バックエンドとエネルギーハンドリングを扱う。

自然界がアナログベースである限り、アナログ回路はシステムの基本性能を左右する。

ここでは、アナログ回路主体に述べたが、電子回路以外にも多様なアナログの世界は無くならない。しかし、アナログに要求される性能はある水準を超えなければ存在意義がないので、年々アナログ回路にエントリーするハードルは高くなってきている。

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2009年10月13日 (火)

プッシュプル出力段

バイポーラリニア回路のプッシュプル出力段のバイアス回路は結構悩ましい設計となる。

とくに、個別部品で組む回路においてはパワートランジスタとバイアス回路が同一温度であると期待できないから、出力段の損失の増大とともに、VBEが減少し、静止電流の増大を覚悟しなければならない。

純ダーリントン接続の出力段なら、VBE4個分のバイアスをふつう掛ける。

しかし、VBEは電流と温度の関数である。品種によってもかなり異なる。ばらつきもある。通常はバイアス回路の電圧を、ダーリントン接続のトランジスタの静止電流時の電圧より高めになるように、ダイオードの品種と電流密度を選ぶとともに、ダーリントントランジスタに値の小さなエミッタ抵抗をそれぞれ挿入する。

アナログエンジニアは時として、ダーリントントランジスタの初段のエミッタに抵抗を挿入する。初段の負荷電流はあまり多くないので、バイアス回路とほぼ同一温度になる。

プッシュプル回路で静止電流を流す理由は、クロスオーバー歪を低減するためにある。

微小入力時にはダーリントントランジスタの初段のみがアクティブになるように、2BE+αのバイアスを掛ける。2段目のパワートランジスタには電流を流さない方針なので、αは2VBEを超えない。

このような設計方法をとれば、通常の方法に比べばらつきの少ない安定な静止電流が得られる。

アナログエンジニア流のバイアス方式は、VBEの温度係数の電流依存性と、VBEの電流依存性、ダーリントントランジスタのhFEのバラツキに伴う初段トランジスタのVBEの変動による静止電流への影響の考察の結果である。

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2009年10月 9日 (金)

プッシュプルコンバータ

007 ←左招き猫の置物。招福万来。

絶縁型DC-DCコンバータで比較的出力電力の大きいユニットに使われる方式がプッシュプルコンバータである。

この回路形式は、フォワード形コンバータの回生巻き線側もスイッチングした回路形式となっている。1次巻き線のセンタータップから給電し、2個の主SWを接地できる。主SWの駆動を接地基準で行うことができるので、駆動回路のレベルシフトは必要ない。

2つの1次側コイルは密結合でSWから見れば、逆巻きになっているので、2つのSWが同時オンすると急激な電流増加を生じ破壊に至る。

この回路のキーポイントは、2つの主SWを決して同時オンさせないことである。逆にいえば、2つの主SWが両オフの期間を原則として作らねばならない。この場合、SWに逆並列するダイオードにより主SWの両オフ期間の電流の連続性を保たなければならない。

この必須のダイオードを明記していない基本回路と称する図は入門書ほど多い。そのような図と説明を受けても理解することは困難である。

主SWの両オフ期間を作る駆動回路は種々あるが、プッシュプルコンバータではいかにして両オフ期間を確保するかが、主回路の信頼性に影響する。

そして、2次側無負荷の時の励磁電流の挙動をよく把握しておかなければならない。しかし、プッシュプルコンバータは2次側に正負の低インピーダンスの電力を伝えることができるので種々の活用法がある。

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2009年10月 8日 (木)

台風18号

台風18号は本州を北上している。今時分は福島県辺り。茨城では、時々強い風が吹くが、日差しも顔をのぞかせるまで天候が回復した。

幸いにも、関東地方では予想されたよりも被害は少ないようだ。

1953年の台風13号のときには、上陸地点近くの海近くに住んでいたので高潮で床上浸水、潮位の上げ方は非常に早く、家事道具を殆ど退避させる間もなかった。海水による床上浸水なので、後片付けが大変だった。

50年前の伊勢湾台風は最大勢力時800ヘクトパスカル台になった非常に強く暴風域も広い大型台風であった。この時は夜で満潮近くだったので再びの高潮が心配されていたが、床下浸水で済んだ。しかし、風は非常に強く、町では倒壊した家屋もあった。風で飛ばされた瓦の破片が時折トタンの屋根を突き破る。伊勢神宮(内宮)の森は、多くの倒木のためすっかり明るくなってしまった。この地方では数100年に一度の災害であったことをうかがわせる。そして、輪中では多くの人命が高潮により失われた。

1961年の第二室戸台風の時は、昼間で中心が西側をかすめた。瓦に何か物が当たると、パラパラと列をなして瓦が飛び去る。このときも強力な台風であったが、伊勢湾台風の洗礼を既に受けていたので郷里の被害は比較的少なかった。

振り返ってみると、東京周辺に非常に強い大型台風が直撃したケースは近年ほとんどない。備えは大丈夫だろうか。

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2009年10月 7日 (水)

電源シーケンス

003 ↑まだまだ残っているガク紫陽花の花。

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電子回路において複数の電源を使用するときには、電源の立ち上げ、立ち下げ時は危険な時間帯である。設計に際しては、一度は電源の一部が確定していないときの回路挙動を考えてみる必要があるだろう。

多くの場合、制御用電源を先にた立ち上げ、電源を切るときには制御電源を主電源より後で立ち下げると安全である。

主回路が複数の電子スイッチになっている場合は問題を生じやすい。制御電源が確定していない時間帯には、通常とは異なる組み合わせで電子スイッチがオンになる場合があるからである。

このような場合、想定外の過電流が主スイッチに流れ、信頼性を損なう場合があるだろう。

小規模回路では、電源シーケンスを守るため、主電源から制御電源を生成することも多い。大規模回路なら種々のインターロックを掛けられるが、小規模回路では案外工夫が必要である。

魔の時間帯:それは、制御電源が未確定の時に主電源が投入されることだ。

パワー回路で、ノーマリーオン回路が普通使われない理由は、電源シーケンスを安全な状態に保つことが難しいからである。制御電源喪失時にハイパワー状態になり、確実な電源シーケンスを保てないからである。

複数電源使用の電子回路、パワー回路では各電源の立ち上げ順序に留意する必要がある。

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2009年10月 6日 (火)

安定化化電源回路

Img_0001 図は基本的な安定化電源回路例。

この回路で、入力変動幅が大きい場合に入出力電圧差を小さく取ろうとすると、抵抗R2の選択が困難になる。

この状況を認識している方は、解析を基にきちんと回路を設計した経験がある方だろう。

R2は最小の入力時に、Q2、Q3のベース電流をきちんと供給できるようにその抵抗値に上限がある。

入力電圧Viが最大の時、過剰な電流(ほとんどQ3を流れる)が過大にならないよう留意するから、R2には下限がある。条件を欲張ると解が無くなる。Q3のコレクタ電流が大きく変動するとそのVBEの変化により、入力変動除去率も悪くなる。

この課題は、R2を定電流源に置換すると解決でき、他の性能も向上する。

アナログエンジニアはD1にエミッタフォロワを使用し、そのコレクタ電流をカレントミラー回路でR2に代える。回路規模は少し増大するが、設計計算量は激減する。安定化電源回路としての性能も向上する。各部品の電力低格のチェックも容易である。

ドロッパ式安定化電源は、枯れた回路技術であるが、用途に応じ様々な最適化の道が存在する。

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2009年10月 5日 (月)

ダーリントントランジスタの改良

002_2 ←サフランの花。開花のころになると茎が伸びてこのような状態になる。

初段npnトランジスタをQ1、2段目npnトランジスタをQ2とする。標準的なダーリントン接続。初段npnトランジスタのコレクタに1本の抵抗を挿入する。

この挿入した1本の抵抗により、出力側からのサージに対しての耐力がかなり向上する。量産ベースでは、Q2に比べ高速、高耐圧の初段の原因不明の故障が明らかに減少した。

ダーリントン接続の様な簡単な回路でも奥が深い。

アナログエンジニアの想定する改善効果のストーリーは以下。

出力のコレクタから高速のサージパルスが入る。Q2はより大容量なので高速パルスに対しては応答せず、Q1のエミッタに対してダイオード負荷となる。この結果、Q1には大電流が流れ、サージ破壊する。

コレクタに適切な抵抗が入っていれば、サージ電流は制限されQ1の素子破壊にはつながらない。

ダーリントン接続は、よく知られた回路形式であるが、それでも使い方に応じて様々な工夫の余地がある。

たかが基本回路であるが、使用目的に応じて若干の犠牲を伴いながら、たとえば抵抗1本で実使用状態での信頼性を向上する術があるのだ。

良く検討されたアナログ電子回路では、周りからはその意味が判らないだろうけれど細かい改良がなされているのだ。

今回の例では、抵抗の値が大きすぎると周波数特性とダイナミックレンジに悪影響を及ぼすが、定数が適切なら耐サージ性能を顕著に向上させる。

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2009年10月 3日 (土)

魚眼レンズ

003 ←魚眼アダプタ+コンパクトデジカメで撮影した我が家の猫。室内での魚眼撮影はフラッシュが効かないのでうまくとれなかった。魚眼レンズの樽型歪で我が家の猫は可愛くは撮れない。

やはり、屋外で近接撮影しないと面白い画像にはならないようだ。

周辺をトリミングしたので、この分解能ではあまり色収差は目立っていない。

魚眼レンズの先玉は、レンズ枠より突出した凸面と、半球状にえぐれた第2面が必要なようだ。電子図書館で調べてみると、特許の中で収差図が記載されたものがある。色収差はかなり大きい。

1枚目のレンズで大きく光線を曲げるので、周辺視野の色収差や像面歪曲の補正がむずかしいらしい。

画角180度を得るには、レンズに入射する光を最大90度程度曲げる必要がある。また、写像の関係から、周辺が大きく圧縮する必要がある。

たぶん魚眼光学系を用いた1カメラ方式の車のフロンントサイドビュウモニタを採用している車種もある。

これは、フロントサイドビューセンサとしてまったく役に立たない。フロントサイドビューを使う時には、真横からやってくる車や自転車をしかるべき距離で視認できるだけの解像度が必要である。いくら画像ひずみ補正を行ったとしても特に青色のにじみが大きく、視認性が大きく損なわれる。

クレームをつけて、ディーラベースで純正品ではない2カメラ方式のフロントサイドビューモニタに交換して貰ったが、格段に見やすくなった。

純正品はカタログ記載の画角も満足していなかった。

真横を鮮明に見たい用途に、魚眼光学系を使用する発想など、あまりにも素姓が悪くメーカーの工学的センスを疑う。

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2009年10月 1日 (木)

JCO臨界事故から10年

008 ←庭の片隅に咲いた紫の花。写真をクリックすると拡大像になり、産毛がたくさん生えているのが判ります。

JCO臨界事故から、昨日で、はや10年経過した。当日は小雨降る天候。

この事故で、2名が悲惨な死を遂げ、報道によれば1名が今も後遺症で苦しんでいると聞く。

JCO事故の第1報をニュースで聞いた時、商用原子炉で使う核燃料のとしては、異常に少ない量で連鎖反応が開始していたことを記憶している。とっさにこれは普通の商用原子炉向けの核物質ではないと判断した。後に、この燃料が商用原子炉向けではなく、核分裂性ウランの濃度が10倍高い高速増殖炉の実験設備向けのものであったことを知る。

核燃料の取り扱いに際しては、臨界量以下の単位のバッチプロセスで取り扱うこと、細長い形状の容器で連鎖反応の防止を行うのが常識である。

被爆した作業員は普段より1回で扱える量が1/10であること知らされていなかったかもしれない。おまけに裏マニュアルで攪拌はおたまにバケツ。

こんな杜撰な工程と作業を行った組織の長、関係者は実刑に服すべきであろうと今も考えている。会社・官庁を含む組織に対する罪の軽さを感じる。組織は各階層の人間が責任とそれぞれの地位にふさわしい安全意識を持っていただきたいものだ。

アナログエンジニアは原子力を現在では代替案のないエネルギー源の一つであり、必要悪であると考えている。しかし、その前提にあるのは、多重防御された安全システムを順守することが前提である。某発電所では、安全装置の一部が不調のまま運転された。危険性評価レベルは低かったが、やはり関係者の厳しい処罰を望む。さまなければ、上司の要求に逆らい切れず承知のまま、不安全運転をすること、事故隠しも無くならないだろう。

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