オペアンプの温度特性
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オペアンプがDC的に扱える最小電圧を制限するのは、オフセット電圧ドリフトである。通常は温度範囲を示して、μV/℃で与えられる。使用温度範囲×■■μV/℃が誤差となる。
近年は、±0.1μV/℃typ.のものも入手できるので、金属線ひずみゲージアンプなども簡単に構成できるようになった。
このμV/℃は、決められた温度範囲での平均温度係数である。したがって、温度領域によっては、オフセット電圧が2次関数的に変化するものもある。
この限界を超えて微小直流電圧増幅を可能にする手段がある。
その手段は「温度選別」と、たとえば3オペアンプ型計測増幅器などの対称回路によるオフセット電圧相殺回路の使用である。
温度選別はオペアンプ単体を試験回路を装着し、オフセット電圧ドリフトを測定し、オペアンプのペアを作成するのだ。オフセットドリフトが2次関数的に変化するものもあるので、温度測定点は3点使用する。分類のピッチは必要に応じ0.5μV/℃から0.1μV/℃程度が妥当であろう。
アナログエンジニアはこの方法で40年前に、0.05μV/℃のアンプを実用化した。しかも、μパワーオペアンプを使ってである。
分布の中央付近の、μV/℃が小さな物は単体で低ドリフトを要する回路部分用に使用し、高い歩留まりで当時実現できていなかった直結DCアンプを構成した。
測定に要する費用が引き合えば、選別により超低ドリフトアンプを構成する手段がある。
工業計測用途では経年変化も問題になる。そこは、温度を変えて、長期ドリフトの変化の少ない品種を選択した。
この方法を使えば、超高入力インピーダンスと低ドリフトを兼ね備えたDCアンプも容易に構成できる。
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コメント
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こんばんわ。
はじめまして、最近アナログ回路設計者として業務をはじめた者です。
いつも何とか理解しようと拝見させてもらっています。
オペアンプの温度ドリフトについてちょうど業務でかかわっている最中です。
初心者にはppmという表現は飲み込みづらいのは何故なんでしょうか?
温度補償といえばひずみゲージなどにつかうホイートストンブリッジの温度補償の仕組みは、web上に沢山資料はありますが、直感的に理解できる記載は少ないと思います。
投稿: 入門者にゅーきち | 2009年10月22日 (木) 22時18分
にゅーきち さん おはようございます。
>ppm・・・
多くの物性値の温度変化は%より低く、ppm:10^-6を単位として測ると1-1000程度になります。比でから、無次元数/温度になります。対象とする量が小さいので、数値感覚が得にくいと思います。
>温度補償
実務では数式ベースで解きます。ひずみゲージの場合は、温度係数のことなる抵抗を複数個所に入れてゼロ点補正を行います。半導体ひずみゲージでは、産業用途では感度の2-3次項まで補正します。素子を追加して、全体的な温度特性とバランスの連立方程式を解きますので、直感では実用ベースにならないと思います。
投稿: 5513 | 2009年10月23日 (金) 07時58分