ブリッジ回路の温度補償
ひずみゲージなど抵抗性センサでホイートストンブリッジを組む場合がある。センサ出力に比べ、初期抵抗のばらつきは大きく、厳密には温度係数も十分揃っていない。
この状態から出発して、ブリッジを特定の2つの温度点で平衡させる手法がブリッジ回路の温度補償である。
補償と言うと悪いものをごまかす悪いイメージを持つ方もいるが、立派な回路技術である。
各抵抗が金属線ひずみゲージRiの場合には通常、温度係数が低いので、感温抵抗Xと温度係数の低い抵抗Yを少なくともブリッジの2か所に直列、または並列に挿入する。
測定可能な量は、各抵抗の概略の値、励起電圧、ブリッジの不平衡電圧である。
これを元にして2つの温度点で式のままブリッジの不平衡電圧=0の式を立てる。
この式をX,Yについて解くことがブリッジ回路の温度条件を求めることになる。
解を求める過程では、たとえば級数展開して微小項を省略しないと見通しの良い結果が得られないことが多い。
未知数2つ、式が2つなので解は一意的に求まる。
当然、個々に温度試験する必要がある。この負担があっても、センサとしての性能が上がるので、実用されている。
感度の温度補償や、高性能ピエゾ抵抗素子を用いたセンサの高次の温度補償も行われる。補償方式や、使用素子により補償位置や回路方式は異なっていくるので、温度補償のアルゴリズムや使用素子の詳細が明らかにされることはあまり多くない。
センサにおける各種補償は縁の下でセンサを支える重要な回路技術の一つであろう。
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コメント
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5513こんばんわ
テーマで扱っていただいて光栄です。
なんとか理解できる様に今晩がんばります。
私は現在、高温環境下におかれるアクチュエータの開発に取り組んでいます。その為、センサの温度依存性、補償方式などを理解する必要になり現在、勉強中です。
センサ後段のOPアンプのゲイン設計では、あまり発生しない極低温のせいでS/Nがとれないので制御屋さんに日々おこられています。
投稿: 入門者にゅーきち | 2009年10月23日 (金) 22時04分
5513様
はじめまして。
私は現在、機器に組み込むための引っ張り型ロードセルの設計を手がけているのですが、試作品の温度ドリフトが激しく、ブリッジ回路の温度補償方法を検索していた時に当ブログに行きあたりました。
現在の状態は、普通に4ゲージフルブリッジ(曲げキャンセル法、出力2.4倍)を組んだだけの状態です。
この状態から「各種抵抗等を挿入して温度補償を行う」と言うところまでは理解できたのですが、具体的な関係式や回路図が掲載されている文献等が見つからず手詰まりとなっている状態です。
大変厚かましいとは存じますが、上記記事に掲載されています温度補償方法に関して具体的な関係式や回路図をご教授願えませんでしょうか。又は参考文献等ご紹介頂けないでしょうか。
突然のお願いで申し訳ありませんが、なにとぞよろしくお願いいたします。
投稿: muxo | 2011年6月25日 (土) 11時11分
muxoさん こんにちは
おもに問題になっているのは金属箔ゲージのゼロ点の温度依存性だと思います。
金属箔ゲージは抵抗が低い(120Ω)で、小さい温度係数ですから、銅線とマンガニン線などの微小抵抗を種々作り、それを実測温度ドリフトデーターを元にブリッジの平衡を2点の温度で達成します。
私は、金属ゲージおよび半導体ゲージブリッジの温度補償に関するほぼ完全な解と補償手順を確立しておりますが、この手法はかなりの計算結果を元に、コンサルトは可能です。
なお、ブリッジが不平衡の時には感度(ゲージ率)/起歪体の弾性率の温度変化の干渉項も無視できません。
投稿: 5513 | 2011年6月25日 (土) 12時50分