ゼロ信号は0V?
センサなどからの信号出力の原点を0Vとすると、センサ回路の電源断の時にもゼロ信号を出す。これでは、ゼロ信号の時センサ回路が生きているのか否かシステム的に判断はつかない。付けようがない。また、0Vあるいは0mAを確実に出すには、回路のダイナミックレンジは負方向に拡張しておく必要がある。
それで、産業用センサの信号出力はふつう4-20mAの+のオフセットを有する電流信号を用いている。ゼロが4mA,100%が20mAである。電流信号にするのは、配線が長くなっても、配線抵抗の影響を受けずに受信端を250Ωで終端すれば、1-5Vの電圧信号に変換できる。信号の極性がユニポーラなので受信計器のA/D変換器をバイポーラ化する必要がない。
電子回路を片極性で組むと、そのダイナミックレンジの下端である0がきちんと出しにくい。しかも、値付けの際、ゼロ信号と振り切れ状態が区別付かないので校正しにくい。ただし、回路的に工夫しないと、ゼロ校正と感度(100%点)の校正が干渉しやすくなる。
4-20mAの信号は小型のトランジスタで楽に扱える電流であり、エネルギーレベルもそこそこに大きいので、外来ノイズに比較的頑健である。オフセットが4mAあるので、低消費電力のセンサの信号処理なら、内部回路を4mA以下で動作させることができるので、センサによって駆動される2端子定電流回路構成にすることも可能である。
アナログエンジニアの出発点は工業計測である。その後、理化学機器は医用機器を経験している。工業計器で屋外で使われる機種の環境温度は少なくとも-20℃から+80℃の範囲をカバーする。長期的でなければ、-60℃から120℃に耐える。一方理化学機器は空調環境下で短期間精度が出れば良い。着目する時間は年単位と分単位である。どちらも、回路の温度係数・安定性から見れば同レベルの品質を必要とする。
精密アナログ回路は動いて当たり前、勝負どころの一つは温度依存性をどこまでコントロールできるかである。
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