差圧伝送器
工業用差圧計は正規化された差圧信号を制御室へ送る機能に着目して「差圧伝送器」と一般に呼ばれる。正規化信号は4-20mAの電流信号(カレントループ)である。
計測対象の汎用性から、差圧伝送器は工業用センサの王様的存在で、1970-1980年頃の高度成長期に各社で開発競争が激しく行われた。
差圧伝送器は20-40MPaの同相圧力(200-400気圧:静圧)の中から、1000Pa-0.1MPa(1000mmH2O-1気圧)の差圧を0.1-0.2%精度で計測する能力がある。しかも、高温、腐食性流体の計測も可能である。間違って、静圧が差圧としてかかっても破損しない保護機能を備えている。測定レンジ(感度)は計器室で校正できるように数倍~10倍程度あり、しかも、0%点を差圧の数倍までシフトする機能を備えている。ゼロ調整機構は容器を開けることなく外部から調整できるようになっているものも多い。
防水・電気防爆・屋外使用が前提で、回路部分は公称-40℃~80℃の周囲環境で動作する。アナログエンジニアの設計した物は短期間なら-60℃~150℃でも機能を喪失しない。
圧力センサを基本センサとして製作されるが、接する流体を薄い耐食性材料(ダイアフラム)を隔て、安定で無害な液体に置換すること、頑丈な本体を使用して極力対称構造化して、高い同相圧力の影響を相殺する。
圧力センサ部の検出方法は、差動容量式、ピエゾ抵抗式、振動線式などが広く知られている。
伝送器は、センサ出力に対応する2端子の定電流源として動作し、電源と信号線を兼用する2線式伝送方式が一般に用いられている。2線式伝送方式により、kmオーダーの長距離の信号伝達も可能である。
差圧伝送器は、センサ本体の製造プロセス技術、センサ材料技術、アナログ回路技術の集合体であり、その開発は各社とも隠れた「プロジェクトX」であったに違いないだろう。
常温で測れて当たり前、そこからが勝負の開発となるのが工業計測である。
現在は、マイコンを内蔵しスマートセンサ化した形態で工業計測機器が製作されている。
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