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2010年3月 1日 (月)

発振回路のシミュレーション

発振回路のSPICEシミュレーションにおいては、回路形式に依存して工夫を要することがある。ヒステリシスコンパレータを内包する回路の場合には大抵、無条件で発振することが多いが、弛緩発振回路や正弦波発振回路の場合には工夫を必要とする。

ウィーンブリッジ発振回路の場合には、自然界のノイズが種となって正弦波が成長し、発振周期に比べかなり長い時間を掛け全振幅発振に至る。SPICE上では、時間刻みを細かく設定し、かつ成長すべき周波数の微小ノイズ源を付加し、発振周期に比べ長いシミュレーション時間を設定する必要がある。

現実のウィーンブリッジ発振回路では、電源投入後ワンテンポ遅れて起動し、かつ振幅がオーバーシュートすることが多いので、この発振の機序で発振が行われていることと合致する。

2石無安定マルチバイブレータでは、早い電源投入による過渡変化+素子の偏差により対称性が崩れ、発振が始まる。

SPICEでは、回路のパラメータを0.1-1%ほど意識的に崩し、立ち上がりの早いパルス電源でシミュレーションすれば2サイクル目から安定に発振する。2個のトランジスタのパラメータを変えることは少し面倒なので普通は受動素子に偏差を与える。

コンデンサに非対称に初期値(残留電荷)を与える方法なら完全対称回路でも発振するが、アナログエンジニアにとってはコンデンサの初期電荷がゼロの場合が現実なので、この方法を使うことはほとんどない。

完全対称回路で遅い電源の立ち上がりで起動する場合には、自然界のノイズが種になり、ループ利得が1を超えたところで短時間正弦波発振した後全振幅発振に至るものと考えている。事実、シミュレーションでも時間刻みを極端に短くして遅い電源立ち上がりで起動すると、トランジスタモデルに組み込まれているノイズで発振し全振幅発振にいたる。

SPICEシミュレーションでは、宣言した素子値が同一なら、完全に対称となるので、無安定マルチバイブレータが発振しにくいのである。DC電源モデルなら、無安定マルチバイブレータのコンデンサを除いてバイアス計算がおこなわれるので、直流での安定状態である両トランジスタがON-ONで発振しない。

シミュレーションでは発振のメカニズムを頭において行わないと、発振しない場合も多々あるのだ。シミュレータは回路の動作の理解なく扱えるものではない。すくなくとも、回路の結果の予想ができる程度の素養がないと、新しい回路、未知の回路の解析結果の解釈を誤る。

しかし、回路シミュレータはうまく使えば未知の回路の動作の理解を深めることに間違いはないと考える。

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電子回路」カテゴリの記事

コメント

いつも興味深く拝見しております.
発振回路のシミュレーションには注意すべき点が多く,苦労しております.
不帰還回路の異常発振についても似たような苦労をしています.
(設計が甘いというのもありますが)

ところで,「トランジスタモデルに組み込まれているノイズで発振し」とありますが,
SPICEの過渡解析において雑音は組み込まれているのでしょうか.
私は,計算時の誤差がノイズの役割をしているのかと
かんがえておりました.

そうでなければ,雑音評価も過渡解析でできるはずなので便利なのですが.

やすひで さん こんにちは
バイポーラトランジスタではKf、Afで、フリッカノイズを組み込むことができます。デフォルトではKf=0になっていますので数値を宣言しない限り計算されません。発振周波数に比べて、かなり短い時間刻みを設定しないとうまくいかないと思います。
正弦波発振させる場合には、発振周波数のノイズ源を注入しても、起動するまでかなり計算ステップが多くかかります。
2石マルチバイブレータで同じトランジスタを宣言すると、計算誤差も同じになる可能性があります。

コメントいただき,ありがとうございます.
BJTのモデル式からすると,Kf, Afは雑音解析に使われるパラメータで,
過渡解析には反映されない様に思えます.
2石マルチバイブレータの件は,いわれてみれば
仰るとおりですね.

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