消えた回路形式
アイディア倒れの信号処理回路もたまには日の目を見る寸前まで実験されることがある。
自由な発想と実務とは異なる。
消え去った回路形式の概要は、微小信号の同期整流をオペアンプの電源のオン・オフで制御する方式であった。私の作品ではない。
チョッパ素子をオペアンプ電源でスイッチングして精密整流を行うことを骨格とするこの回路は、性能が出るときには良いが、性能のばらつきが大きく性能要因も複雑である。とくに、過渡的なオペアンプの挙動が不明確で、量産の前段階で没になった。没にさせた。
生涯生産ユニット数10万台の回路では、簡明が重要である。1ロット内でポチポチ直せないユニットが出るようだと生産に困難を生じる。
真に合理的・安定な回路はち密な検討の上で、無駄を徹底的に省いたものだろう。
一般的に、量産規模が大きいほど、性能不良品の出現頻度を小さくしておく必要がある。そして、量産規模が大きいほど設計費に比べて部品代・調整コストが大きくなるだろう。
新規に見える回路は、それなりの未知のリスクを伴う。そのリスクをきちんと処理し、制御できる生産工程まで持っていくのがアナログエンジニアの仕事の一つである。
1個のチャンピオンデータだけで、製品を世の中には出せない。学術論文ならそれでもよいかもしれないが、物つくりは顧客を実験台にしてはならない。
回路構成が簡単で部品数の少ない回路は、良い回路の条件の一つである。しかし、その中にも、明解さは求められる。
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