回路屋の育ち方19
アナログエンジニアは工学部の物理系学科の出身である。学生の時には回路学はわずか2-4単位の訓練しか受けていない。その時は、回路のことはよくわからなかった。
回路屋として自立できたのは、日本の大学向け電子回路教科書ではなく、米国発の分厚い回路本の原書と翻訳本のおかげである。厚い本であるが故に詳細に丁寧に記述してあるとともに、集積回路指向の強い記述方法の書籍である。
従って、私の設計した回路は多く集積回路の手法を取り入れた作品となっている。
なぜ、日本の大学向け教科書に頼らなかったのか?その理由の一つは、トランジスタモデルの構築の方法の相違である。集積回路的手法は、広い範囲の動作領域で成立する回路モデルから出発し、次第に寄生素子や2次的特性を記述しているものが多い。hパラメーターには深入りすることはない。
日本の大学の教科書は、大きく、1960年代ころの東大・東工大の著名な先生の記述法を踏襲しているものが多い。しかし、hパラメータを主体に記述すると、まず、データーシートにhパラメータの記載がほとんどないから、設計をあきらめるか、自力で使う動作領域でのパラメータを測定するしかない。
現実は、特にバイポーラトランジスタにおいては、トランジスタの種々の動作点での特性、たとえば入力抵抗などは理論計算で殆ど間に合う。トランジスタアンプの設計にまず必要なトランジスタの入力抵抗=hieは、=VT/IB (VT:熱電圧、IB:ベース電流)で計算すべきものである。従って、トランジスタのデータシートにはそのデータは記載されていないのである。
トランジスタアンプの増幅率を求めようとすれば、hieすなわちベース入力抵抗rのデータが必要になるが、多くの日本の回路本はこの記載が欠落している。これでは、解析的に設計することはできない。
自分が教える立場になったとき、実務での設計法と大学教科書のギャップが大きく、教えるための教科書選びに苦労した。そこで、自分流の回路教科書を著作したのが、アナログエンジニアの処女作である。
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