無安定マルチバイブレータ
対称定数の無安定マルチバイブレータの発振周期Tのおなじみの公式はT=1.4CRだが、1.4の中身は2・ln2・CRである。(ln2≒0.69)
では、非対称回路ではどうなるか。公式丸暗記ではふつう計算できない。
片方のトランジスタのQ1ベースに接続された抵抗RB1(他端は電源)、容量C1(他端はもう一方のトランジスタQ2のコレクタ)は遷移の瞬間、Q1のベース電位はVccだけ変化する。Q2コレクタ電位がVccから飽和電圧≒0Vまで変化するとすれば、遷移直後のQ1ベース電圧は-Vccとなる。
この状態でQ1ベースはOFFしているので電流は流れない。Q1が再びONになる条件は、Q1が能動状態になることであるからVBE≒0.6VまでC1が充電されたときQ1のオフ期間が終了する。
この時間を、初期値-Vccの容量を電源VccからRB1を経由して充電し、「0V」になる時間を求めると、Vccの項がなくなりT1=ln2・C1RB1となる。同様にして、Q2側のOFF時間T2=ln2・C2RB2となる。従って、発振周期はT=ln2・(C1RB1+C2RB2)となる。
この計算過程のには①飽和電圧がほぼ0、②VBEを0Vと簡略化、③ベース抵抗RBは電源Vccに接続 ④コレクタ電圧は瞬時にVccまで上昇する などの前提項目が含まれる。
2石無安定マルチバイブレータは電源電圧の変動に対し、発振周波数は大きくは変動しない傾向は、この簡略計算でも予想がつく。
しかし、少し異なる条件下ではもう少し詳しい解析が必要になる。②と④の前提は特に崩れやすい。ただし、RCのばらつきの影に隠れて公式の精度を検証する機会は一般に少ない。
職業としてのアナログエンジニアは、公式の前提の成立が不完全な場合の検討も通常行う。物つくりには、公式の前提が崩れた時の検討も必要なのだ。このような検討は、本事例でも結構計算量があるので時間がかかる。大規模アナログ回路の詳細設計には結構長い時間がかかる。検証にも時間がかかる。この辺りの理解が上層部にないと、ますますアナログ回路屋さんは枯渇していくのだろう。
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