変形カレントミラー
最も簡単で基本的なカレントミラー回路はWidler形と呼ばれるもので、基準電流I1をダイオード接続したトランジスタQ1と、Q1のベースと共通接続したトランジスタQ2のコレクタが吸い込み電流源I2端子となる形式のものである。
Q2のエミッタに抵抗Rを挿入したらどうなるか。
ΔVBE=VT・ln(I1/I2) VT:熱電圧(常温で26mV)であるから、I1とI2はもうひとつ、ΔVBE=R・I2を満足しなければならない。もちろん2つのトランジスタはVBEとhFEの揃った同一温度のペアであると仮定する。
この連立条件は解析的に解くのは簡単ではないが、R・I2がVTに比べて十分小さければI1≒I2となる。Rが大きければI2は小さくVBE1≒R・I2に漸近する。I2が中間の値でピークを持つことは容易に推測できる。もちろんI1>I2である。
詳細な解析は回路シミュレータに譲るとして、この性質は安定でない基準電流I1から、より小さい吸い込み電流源(pnpの場合は吐き出し電流源)I2を作ることができる。I2がピーク付近になるようにI1とI2を設定すれば、比較的I1が変動しても、I2の変動は少なくなる。
この方法は、抵抗を用いて基準電流を定める回路に使われることもある。
さらに、IC中では基準電流I1を定める抵抗にピンチ抵抗(拡散抵抗に絶縁膜を介して電圧を掛ける感度の鈍いJ-FETのような性質をもつ)を使うことができるので、基準電流I1をより安定化できる。
個別素子でつくるアナログ回路の電源電圧影響を軽減するために、この類似回路を構成することもあるのだ。
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