トランジスタの接合電圧
バイポーラトランジスタは2つの接合と3つの端子をもつ。トランジスタをダイオードとして用いるときにはいくつかの結線方法がある。
①C-B接合を用いる(E:開放)
②E-B接合を用いる(C:開放)
③C,Bを結線しE-B接合を用いる。 などの結線が行われる。
もっとも接合電圧が低く、電流依存性が小さい(エミッション係数≒1)となるのが③である。
①、②はエミッション係数が2に近いことが多く、電流の1桁変化に対し約120mVの端子間電圧の変化を生じる。
①、②で逆電圧を掛けて降伏状態で使用すると、②なら8V前後の定電圧ダイオードと同等の定電圧特性を示す。
集積回路中では、接合電圧やその電流依存性が結線方法により変化することを利用し、たとえば出力段のクロスオーバ歪みを抑制するためのバイアス回路に使われる。
単体トランジスタでは、たとえば高速OPアンプの入力保護にも用いることがある。寄生容量が少なく高速であるとの理由である。
E-B接合を長期間降伏させて使用すると、電流増幅率が経年的に劣化するとの記述のあるデータシートが昔はあったが、最近は見かけていない。しかし、アナログエンジニアは多くの場合、トランジスタによるダイオード接続は保護素子としての使い方とカレントミラー回路の一部としてしか使った経験がない。
「ブレークダウン状態のトランジスタの2端子間は本来、負性抵抗をなす」との記述のある本もあるが、私は常にはこの現象を経験していない。
たかが、トランジスタのダイオード接続であるが、電流片対数-電圧グラフを描いてみるとそれなりのドラマがある。
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