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    アナログ電子回路設計入門 (1994.12)、コロナ社: 実践アナログ回路設計・解析入門 (2005.1)、日刊工業: オペアンプ基礎回路再入門 (2005.7)、日刊工業: ダイオード・トランジスタ回路入門 (2005.12)、日刊工業: スイッチングコンバータ回路入門 (2006.9)、日刊工業: これならわかるアナログ電子回路基礎技術 (2007.6)

専門とする事項

  • 電源を含む精密アナログ電子回路の設計・開発、およびその教育、技術指導。センサ・アクチュエータシステムの構築。電子機器の不良解析指導および再発防止指導。解析主導型設計の推進と回路シミュレータの実践的活用指導。技術的側面からのプロジェクト管理指導。

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2010年10月

2010年10月29日 (金)

逆T字型人間

個人技術のタイプは、縦軸に技量を横軸に分野の広がりをとってIの字型、逆T字型、台形型などと表現されることがある。

技量のピークトップは若い時代、具体的には30台前半までに決まることが多いように感じている。そして、他の分野を手掛けたとき、そのピークトップを超えた高さに到達することはかなり困難だろう。

その後は自分のピークトップを軸に、年齢とともに広がっていく。この型が逆T字型であろう。

若い時代に培われた横方向の基礎力を軸に、自分の専門分野:ピークトップから広がるのだと思う。

企業などではIの字型の人間の居場所は少ない。一つのあまり広くないピークトップの仕事が利益を生むことは稀であろう。

早い時期に少なくとも逆T字型、望めるものであればピラミッド型まで広めたいものだ。

選択科目が多くなり、横の系統的訓練の機会が少なくなっている今の大学教育では、ピラミッド型の守備範囲の技術者も枯渇している。

大部分のエンジニアは実社会で活動する反面、学術の世界(I字型であってもかまわない、高さだけが勝負)へいく方は少数派であろう。

いま、産業界ではすくなくともピラミッド型の人間が求められている。学際的な課題や一つの製品がピークトップだけでは物つくりが成り立たないからである。協業作業も重要な仕事のパターンである。

今の時代、技術の細分化の時代であるからこそ、少なくとも逆T字型人間を目指したいものである。

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2010年10月28日 (木)

積分器とヒステリシスコンパレータ

オペアンプによる反転積分器と非反転ヒステリシスコンパレータを用い、それぞれの出力を相手の入力とするループを作ると三角波発振回路を構成できる。きれいな三角波が得られる。

非反転コンパレータは反転増幅器の+、-入力端子を入れ替えた形をしており、上側スレショールドの位置VTHと下側スレショールドVTLの位置はオペアンプの実力最大出力電圧と抵抗比で決まる。

積分器の入力が正なら、積分器の出力は負側に線形に変化していく。出力がVTLに達するとコンパレータ出力は正となり、今度は線形に積分器は正方向に変化していく。積分器出力が上側スレショールドに達すると、コンパレータの出力が短い時間で正に変化する。この繰り返しで発振する。

発振周期は積分器がVTLからVTHまで変化する時間の2倍で、2(VTH-VTL)/CRである。

この回路はコンパレータの計算上のスレショールドがオペアンプの最大振幅より狭ければ動作する。発振周波数の上限は主にコンパレータのスリューレートと振幅で決まる。

汎用オペアンプでも数KHz程度以下では再現性良く製作でき、回路規模も小さいので、学生実験にも向く。

弛緩発振器の一種であるが、積分器出力から得られる三角波とコンパレータ出力から得られる方形波は低インピーダンスなので、出力の観測もやさしい。

アナログエンジニアはこの回路が好きであるが、実践ではあまり使わない。その理由はSW電源などのPWMの元発振器として使うには高速のコンパレータ回路が必要なためである。もっと電力が大きく変調周波数が低い用途であれば実用発振回路として有用であろう。

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2010年10月27日 (水)

回路屋の育ち方20

一つの回路を最も長く扱ったのは、産業用のあるセンサ回路である。足かけ5年くらいやった。その理由はセンサの性能が時間とともに改良されて、回路側も進歩させる必要があったからである。

信号源であるセンサ仕様が変われば、その信号処理回路もまた変化していく。

私が扱ったのはピエゾ抵抗効果を利用した圧力センサであるが、数100気圧から数Paの圧力範囲をカバーするシリーズ製品でもあった。

たとえば、センサの信号レベルは当初のもくろみから大きく低下し結果的に1/100までの低レベルとなった。

1mVの信号を0.1%レベルの精度で増幅することは、低ドリフトオペアンプがなかった時代には苦しかった。そこで考えたのは、マイクロパワーオペアンプのドリフトのペアを作る手法であった。

計測増幅器類似の回路ではオペアンプのオフセットドリフトの差が出力誤差に効いてくる。したがって、ドリフトの等しいペアを組めば、2桁近く改善できるのである。しかし、大幅な改善を行うには、温度ドリフトレートの非線形性まで合わせる必要があった。温度に対する1次項を消去すれば2次項が残る。幸い、2次項が大きなものの出現率が少なかったので3温度点の実測値を元にペア組を行った。30年前の品種で0.1μV/℃レベルを確保できたと考えている。

産業用の特殊な分野であったため、他社の回路特許回避も大きな課題であった。

開発期間が長かったため、センサ特性の先取りと市場で必要な機能をほとんど搭載できたこともあって20年近くの製品寿命となった。

アナログ回路は特にセンサ関連では、基本性能を支配する。センサはアナログ回路と一体である。そして、新しい回路素子が出現するまで、その基本回路は生き残る。

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2010年10月26日 (火)

比喩で説明する

電気は目に見えない。そこで回路を目に見えるように、たとえば簡単な機械に回路動作を模して説明する手段が初心者向けの本などではよく使われる。

オペアンプ反転増幅器では、テコの動作を使った説明がある。力点(入力電圧)、支点(仮想短絡)、荷重点(出力)で、力点と支点の距離がRi、支点と荷重点の距離がRfとすれば、出力変位は、-Rf/Riとなる。ここまでは、反転増幅器の入出力関係を示すが、Rf>Riなら、テコでは、荷重点(出力)は入力より弱い力しか出ない。この段階で、オペアンプ回路の基本的性質である出力が低インピーダンスになることと矛盾する。テコでは入力より弱い力しか出ないのだ。支点、力点、荷重点の順にすれば、変位(電圧利得)は、(Rf/Ri+1)の形となり、非反転増幅器の入出力関係と同一になるが、なぜ支点がその位置になるのか分らない。

比喩を用いた説明の多くは、一見やさしそうに見えるが、回路の種々の性質を同時に説明できることはできない。応用も利かない。場合によっては比喩そのものが分からない。

トランジスタの動作の比喩になると、もっと意味不明になることが多い。

アナログエンジニアはめったに比喩を使わない。その代り、高校数学と高校物理を前提に最初にトランジスタやオペアンプの基本的なモデルを丁寧に説明することにしている。

比喩の多い記述、説明は分かったようで、結局は理解を助けることにならない。

素子モデルを出発点にして、基本的事項・現象を説明し、その後モデルをより精密化していくことが、プロへの近道であろう。

ものつくりは絵解き・図解・比喩の範疇での説明では発展性がないが、「やわらかい本」に見えるので、意外にマーケットが多い。これで良いのか。

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2010年10月25日 (月)

エミッタフォロワ

エミッタフォロワ(コレクタ接地)はベース端子が入力信号となり、エミッタ端子が出力端子となっている。接地端子であるコレクタは入力の基準電位ではなく、かつ、エミッタに抵抗RLまたは電流シンクが接続されている。

GNDからみると、入力信号が増える→VBE電圧が上昇する→コレクタ電流≒エミッタ電流が増える→エミッタ端子電圧が上昇する→VBE電圧を抑制する との負帰還がかかっている。

安直にはVBE電圧+エミッタ負荷電圧=入力電圧となる。

負帰還が掛っているので、hパラメータでの単純表現には不向きである。

エミッタフォロワは信号源から電流をあまりとらないので、入力インピーダンスが高く負荷の変動を比較的受けない利得≒1の正相増幅器となる。

抵抗負荷の場合、大振幅動作させるとVBEの非線形性により波形が歪む。この波形ひずみは、最大電流をI1とし、最小電流をI2とすると、ln(I1/I2)に比例する非線形性を発生する。また、直流的にはVBEだけ出力はレベルシフトされる。

DC増幅/バッファするには、pnpトランジスタとnpnトランジスタで2段のエミッタフォロワを組む。この回路形式で、負荷を定電流化すると非線形性も大幅に軽減される。この方法は集積回路に向くので、たまに、集積回路中で使われることもある。

エミッタフォロワに対応するFET回路はソースフォロワであるが、ソースフォロワは入力インピーダンスが非常に高いが、個別部品で組む場合VGSの非線形性とばらつき、およびゲートに寄生する容量が大きいので使いずらい。

トランジスタの接地形式の中で、負帰還を伴うエミッタフォロワはhパラメータ表現にはあまり好適ではないが、エミッタ接地、ベース接地をhパラメータで説明し、エミッタフォロワを省略してしまうのは混乱の元凶ではないか。

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2010年10月23日 (土)

コキアの丘

017 今、ひたち海浜公園はコキアとコスモスが見ごろ。

昨日、散歩がてら歩いてみた。

写真は紅葉したコキアを丘の上から見下ろした風景だ。

週日なので人が少ないかと思いきや、広い敷地の割に、結構な人出。

普段はあまり行くことがない場所だが、「我が家のさち」と一緒に出かけた。この公園は1.5平方kmととにかく広い。

しかし、こんなに広くとも大抵、誰か知人に出会うのが不思議だ。

広々とした色彩あふれる風景は心を和ませる。

最近、普段の運動量が減っているので、久し振りの長距離歩行となった。

田舎に住んでいると車での移動ばかりなので、とにかく歩く距離が少ない。一家に3-4台の駐車場を備えている家が多いのだ。

東京の町中を移動すると、結構歩かされる。都会人の方が健脚かも・・・・。

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2010年10月21日 (木)

微少電流増幅器

オペアンプの出力から高抵抗Rで-入力端子へ帰還し、その入力端子へ直接信号電流Iを入力、+入力端子を接地すると、反転微少電流増幅器の基本形となる。反転増幅器の入力抵抗を省略した形だ。

微小電流を扱うので、バイアス電流の小さな品種のオペアンプを使用する。入手しやすい部品を使うなら、J-FETトップのオペアンプ(バイアス電流の下限が十分保証されている品種は少ない)が第一選択肢だ。第二選択肢はMOSFET入力段のオペアンプだがノイズレベルは高くなる。

入出力関係は単純にVo=-RIである。温度が室温付近でオペアンプの品種と実装が適正なら、1pAを楽に検出できる。

この回路、信号源の寄生容量が大きい場合が結構ある。オペアンプの+、-入力端子に付く容量は回路の安定性を損なうので、Rに並列にpF~数10pFオーダーの容量Cを付加することも多い。それでも、不十分なときには-入力端子と信号源の間に数10Ωの抵抗Rsを挿入する。

過渡応答を最適化するには、信号源はそのままにし、高抵抗を介し電圧ステップを与える。オペアンプの一次遅れ特性を考慮すると、この回路系ではjωの3次以上の関数となり定数チューニングの方針を立てにくいのでこのような方法をアナログエンジニアは利用する。

C,Rsを大きくすると減衰係数は大きくなる方向である。

フェムトアンペア(fA=10^-15A)台までの電流を検出できるこの回路方式、単純すぎて教科書に記載されることは少ないが、センサの短絡電流を測定できるので種々の用途がある。

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2010年10月20日 (水)

回路と複素数

回路でインダクタンスやコンデンサが含まれているとき、回路の入出力関係は複素数になる。

インダクタンスLのインピーダンスはjωL、コンデンサのインピーダンスは1/jωCである。jは虚数単位で、回路では、iの文字を電流を表すもの量に使っているので、jを虚数単位に用いるのだ。

正弦波交流を扱う時には、オームの法則の代わりにインピーダンスZとしてV=ZIを使って、キルヒホッフの法則で回路方程式を立てる。

この方程式を解くと、回路の入出力関係や各部の電流・電圧が判る。しかし、この解は、正弦波を入力して十分時間が経過した定常状態の値である。

回路での複素数の扱いの背景にはラプラス変換や複素関数論があるが、過渡現象をラプラス変換で求めるには結構な数学的実力がいる。

答えが複素数の3次関数以上になったら、その特性を可視化するのは容易ではない。

このため、回路の過渡特性は往々にして解析がおろそかになる。

ここに、アナログ回路の一つの落とし穴があるのだが、ここでは深入りしない。

1/(1+jωT)の形をしている一次遅れ回路の場合、実部と虚部が等しくなる周波数を折れ点周波数と呼ぶが、この点での振幅Aは1/(1+j)の絶対値をとり、1/√2すなわち20log(1/√2)≒-3dBとなる。

両対数グラフ上で、低域の平たん部と、-45度の勾配で周波数とともに低下する直線との交点でもある。

両対数グラフ上で簡易的にグラフ化するには、折れ点周波数の3倍、1/3倍のところを、3dBの丸みをつけて描けばほぼ現実のグラフになる。

2次式になったら、共振周波数を求め、減衰係数を求めてグラフ化することになる。

3次以上になったら、1次と2次に因数分解することになるが、計算量が多く、回路要素の影響が分かりにくくなるので、多くの場合私は回路シミュレータで計算することにしている。

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2010年10月19日 (火)

電子回路と対数

アナログ電子回路の周波数特性は両対数グラフに描くことが多い。そしてトランジスタのVBE特性では電流片対数グラフに描くことが多い。

対数関数の扱いは高校数学でふつう習う。しかし、対数を扱えない電子・電気技術者も少なからず存在する。アナログエンジニアが経験した例では、対数グラフの書き始めの点を「0」としてグラフを書く例が後を絶たない。

対数や指数関数の中の数値は無次元量でなければならないが、単位付きの数値、式の変形が結構行われる。log(I1)-log(I2)などアンペアの単位をもつ数値の対数をとっている例も見かける。

バイポーラトランジスタでは、基本式がI=Is・ln(VBE/VT)    VT:熱電圧 だから、入力抵抗VT/IB IB:ベース電流 を求める際には自然対数の微分がでてくる。

生データを扱う際には、常用対数から自然対数への底変換も必要である。

dB表示なら、基準となる数値との比の常用対数をとり20倍あるいは10倍する必要がある。

電子回路で対数を扱えないとなると、それぞれの式の結果を丸暗記してもらうしかないが、覚える式の数が増えることは避けられない。

-3dBが1/√2の常用対数の概略値であることも意識する必要がある。

電気は目に見えない。したがって、電流、電圧の測定値とモデル式を比較することで電気を感じ、素子モデル、回路モデルを確認・改良していく。その過程で対数関数や指数関数の扱いが本当は必要になるのだ。

しかし、案外、対数や指数の扱いのできないエンジニアも存在するのだ。

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2010年10月13日 (水)

アナログ回路教育

大学の電子回路教育はアナログとデジタルを含めて、2単位くらいで講義されているケースが多いと理解している。少なくとも工学部の物理出身のアナログエンジニアはそうだった。

この時間数だと、用語や基本回路の機能を理解するのが精一杯だろう。

電気は目に見えない。数式モデルを使って結果を予測し、実験による計測結果と照合し電気を実在のものとして感じているだけだ。

職人技とややもすればいわれ勝ちなアナログ回路だが、モデルと計測がしっかりしているなら10^-6精度までは当たる世界であろう。

その先はノイズによる不確定さが増す。

電子回路たとえばOPアンプ回路やトランジスタを機械現象(目に見えやすい)に例えて「図解」する必然性は少ないと思う。例えの図、比喩の意味が返って理解の妨げになることも少なくない。

アナログ回路の世界を1時間で紹介することも可能だし、1日のセミナーで入門編をやることも可能だがそれなりのことしかできない。

アナログ回路で比較的易しいOPアンプ回路でも、物つくりの技術として伝えるためには1冊の本になる。

読者であった自分の過去を振り返ってみると、今は著者としての視点からどの本のどこがわかりにくかったか良くわかる。

入門としてどこまで一気に伝えるか、教養としての入門か、それとも作る技術の入門とするかで本の内容は大きく変わる。

三冊の専門書を読めばその道の技術用語を用いて専門家と話ができる。30冊読めば一人前の技術者、数100冊読めば本が書ける。どの分野でもそうなのだろうか。

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2010年10月12日 (火)

SEEP回路の温度補償

SEEP回路(Single End Push Pull)では、静止電流の制御が重要である。リニア増幅器で出力を正負に跨って効率よく出力するためにnpn、pnpトランジスタをB級バイアスで使うが、0付近の出力を安定に得るには、pnpトランジスタとnpnトランジスタを貫流する静止電流を流す必要がある。

この静止電流を広い温度範囲で安定に流すことはSEEP回路にとって重要な課題である。

OPアンプなどの集積回路では、接合電圧2個分のバイアスをダイオード回路で与える。この温度特性を出力段の静止電流に相当する電圧およびその温度係数に精密に合わせるため、バイアス回路は注意深く設計される。互換OPアンプでもこの部分だけは各社のプロセスに合わせた回路としているために、種々のダイオード接続が用いられる。

単にダイオード2個、B-C接続したトランジスタ2個、1個のトランジスタのC-B間及びB-E間に抵抗を接続した回路などが使われる。

静止電流はバイアス回路電圧の120mVの差異により約1桁変化するので、このような回路手段で安定化を図っている。

個別部品を用いたSEEP回路では、バイアス回路と出力段の熱結合を十分密にすることはできないので、バイアス回路と出力段の接合電圧の特性もまた変化する。通常は、出力段に適度なエミッタ抵抗を付与することで安定化している。

もし、出力段が純ダーリントン接続であれば、接合4個分のバイアス電圧とエミッタ抵抗を使うが、奥の手として、接合電圧3個分のバイアス回路を使い、ダーリントン接続の2段目のB-E間に抵抗REを挿入する手段がある。

この方法によれば、静止電流は接合電圧1個分/2REでほぼ決定され、出力電流が大きくなったときに初めてダーリントンの2段目が動作する。

集積回路中では1/1000℃レベルまで各素子が同一温度になることを期待できるが、個別素子では接合-ケースまでの熱抵抗があるために、バイアス回路と出力段の温度は出力依存性を持つ。これを避けるための1手段として上記の回路手段もあり得る。

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2010年10月 7日 (木)

整流平滑回路

商用電源から電子回路用直流電圧を得るには、殆どの場合、整流後に平滑回路によりリプル電圧を軽減する。

もっとも多く使われるのが、整流回路の直後にコンデンサCを置く形式の平滑回路である。

C平滑は、起動直後の突入電流が問題になる。10数VAまでなら何も考えないでも全負荷時の電圧不足以外には特段の不都合は殆どでないが、大容量電源になるとあちこちの部品が問題になる。

まず、起動時の突入電流だが、変圧器やダイオードおよび商用電源の抵抗分と平滑用Cで決まるRC回路のステップ応答に近い電流が流れる。厳しいのは商用電源がピーク値を出力している瞬間にSWを投入するときである。このとき、単相AC100V系なら140V/Rの最大電流がながれる。Rが小さいと簡単に数10Aを超える。時定数RCが大きければ何サイクルもこの動作を繰り返す。ダイオードの過渡定格も問題になる。ヒューズの選定も難しくなる。Cが小さいすなわちリプル電流が大きいときには、コンデンサの電流定格が定常状態で問題になる。

安直な解決法は、Cに至るまでの経路に意図的に直列抵抗を入れることであるが、大きな熱損失を生じる。そこで過渡状態ではRを挿入し、起動後しばらく経過してからRを半導体で短絡する手段が使われる。短落用半導体がターンオン失敗のときの安全策(フューズ付き抵抗)が講じられる。この結果、C平滑は実効値の1.4倍ではなくて、1.1~1.2倍くらいの電圧しか得られない。

L平滑は2次側の実効値に近い出力が得られるが、負荷の急変時とくに重負荷から軽負荷への変動や電源OFF時の過渡応答に問題が出やすい。

LC平滑になると、起動時にオーバーシュートを起こしやすい。

したがって、整流・平滑回路は全波/半波波形が入力で、かつ各部のR分を考慮した解析と過渡特性(特にL、LC平滑)の検討が必須となる。

いずれの整流・平滑回路も非線形動作するので、数値解析かシミュレーションが必要である。

単相の整流・平滑回路は実用レベルでの設計は案外難しいのである。

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2010年10月 6日 (水)

実用回路

実用化されているアナログ回路図が記載されている入門書籍が少なからずあるが、記載された範囲では簡単にはその回路の意味を十分できないのが通例である。

その理由はいくつかある。

実回路の情報は各企業の財産であるから、重要な部品の情報を秘匿するのが普通である。したがって、実回路が記載されていても相応の時間をかけ、逆解析しながら秘匿された部分を補わない限りその回路の意味はわからない。

アナログエンジニアは特許で守られた場合しか、回路の本質部を開示することはない。開示することはできない。

アナログ回路は開発に数ヶ月~数年かかる。企業にとって貴重な財産である。その成果が回路図にほとんど記載されるが公開用回路図では一部をブラックボックス化する。

実用回路図の定性的説明付き、定数入りの図があっても、欠落した情報を補完しシミュレーションするなどの積極的努力をしなければ、実回路を理解したことにはならない。

社内伝承用の資料では、もちろんもっと詳細な検討過程を残すが、それでもなかなか回路のポイントは伝わらない。

書物や文献の実回路は、一般の読者には珍重されることが多いが、詳細に解析し性能予測まで行わないと、自己の設計能力の向上には役に立たないだろう。

次善の策として、簡単な仮想課題に対し、その設計過程を示すことまではできる。回路規模が大きいと限られた紙面では十分な説明ができないのである。

実回路例は、少なくともその回路の開発に掛かった時間の数10分の1程度の時間を掛けないと意味がない。そして、入門レベルをはるかに超える読者の実力がないと、参考にすらならないのが現状である。

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2010年10月 5日 (火)

電流増幅率hFE

バイポーラトランジスタのコレクタ電流Icとベース電流IB=Ic/IBが電流増幅率hFEで、厳密にはコレクタ電流とコレクタ電圧および温度の関数である。多くの回路解析では、hFEを一定と簡略化して行い、同時にhFEのばらつきも検討する。

汎用小信号トランジスタでは、近年はhFE≒200位のものが多い。この数値は、厳しい使い方でなければ、コレクタ電流≒エミッタ電流と見なせる値である。

hFEの電流依存性は、一般的に小電流領域では電流の増加とともにhFEも増加する。広い範囲で見れば、数10%変化する品種もある。ただし、常用電流付近や集積回路中のトランジスタでは、hFEがフラットか電流の増加に対し、やや減少する品種もある。電流定格に近い大電流領域ではhFEは電流の増加とともに減少に転じる。

hFEの温度依存性に関しては、温度とともに増加し荒い数値で低温から高温までの温度変化で約2倍変化する。

したがって、厳密にhFEの影響を検討しても多くの回路では意味がなく、hFEのばらつきに対して頑健な回路とする方向で回路設計を行う。

電源電圧影響などを評価するときには、多く、アーリー効果(コレクタ電圧の上昇に伴う電流増加)を考慮する。アーリー効果は電子的なので早い変化である。

hFEはベース電流とコレクタ電流を同時に測定し比を取れば簡単に測定できるが、大電流領域では自己加熱に伴うhFEの増加があるので、パルス測定が必要である。

トランジスタのデーターシートで記載されているhFEやVCE-IC曲線は、連続負荷の場合とパルス測定のものがあるので、注意が必要である。

アーリー電圧の測定となると、接合温度一定の条件でないと良い結果は得られない。

細かい話になってしまったが、hFEがコレクタ電圧、コレクタ電流、接合温度に依存することを心に留めておけば役に立つことも多いのである。

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2010年10月 4日 (月)

エミッタ接地の負荷線

エミッタ接地の負荷線(負荷曲線)の説明図はわかりにくいのが通例であるが、初心者向けや工業高校向けなどの書籍には必ずと言ってよいほど記載されている。

負荷線はIc=(Vcc-VCE)/RL Ic:コレクタ電流、Vcc:電源電圧、VCE:トランジスタのコレクタ電圧 でトランジスタのVCE-IC曲線に重ねて表示される。伝統的に使われるこのグラフで何を伝えたいのか。

能動状態のトランジスタに入出力特性を図解したいのであれば、VBE→IBの正確なグラフが必要だ。

エミッタ接地回路の一般的な回路定数での電圧増幅率は100前後であるが、負荷線に示されるような大振幅動作においては、入力抵抗ri≒VT/IBであり、ベース電流IBが大きく変化し、大きな波形ひずみが生じる。VT:熱電圧 正弦波出力が得られることはない。

能動状態の小信号増幅率を表現したいのであれば、出力電圧(コレクタ電流)が電源電圧に比べて十分小さい図が必要となる。

負荷線で使われるVCE-IC曲線は、データーシートのものが良く使われるが、飽和特性やアーリー効果によるhFEの変化が目立つように記載されている。しかし、その後の増幅率の計算過程ではhFEは定数として扱われている。

もっと問題なのは、入力抵抗ri(hie)の数値の入手方法の記載がないことである。hieは先に述べたように、熱電圧VT/IBで強くベース電流に依存するので通常はデータシートに記載されない。

負荷曲線を使ってトランジスタの増幅率を議論している本の著者は、1石エミッタ接地増幅器を本当に実験したことがあるのだろうか、疑問を感じる。多くの回路解析技術の基礎が含まれているというのに・・・・

負荷曲線を使ったエミッタ接地回路の説明は、日本では伝統的な説明法であるがその効果記述の正確性は乏しい。やさしい説明にもなっていないのである。

なお、エミッタ接地回路がスイッチング用途であれば、直接電圧駆動することはなく、信号源とベース間に抵抗が挿入される。

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2010年10月 1日 (金)

ベース電圧と電流

バイポーラトランジスタ(BJT)のベース電圧とベース電流の関係は非線形である。一般にはその扱い方とモデルが集積回路関連の本ではきちんと記載されていない。

BJTでは Ic=Is{exp(VBE/VT)-1} で広い範囲での特性が表現できる。VT:熱電圧、常温で26mV、VT=kT/q   k:ボルツマン定数、T:絶対温度 q:素電荷 Is:飽和電流

-1項はVBEがVTに比べ十分大きくない場合、VBEが例えば0.1Vなど極端な低電圧間で使う対数増幅器など以外では無視できる。

したがって、扱いやすく広範囲での特性表現には、Ic=Is・exp(VBE/VT)が使われる。対数関数あるいは指数関数の扱いは高校数学で学んでいる筈なので、この部分を絵解きで説明する必要性はほとんどない。

VTが26mVと小さいので、VBEの数10mVの変化で電流は1桁増えるので、方眼グラフに描けば、電圧に対し急峻に電流が立ち上がる曲線となる。

荒い近似をすれば、コレクタ電流Icが変動してもVBEはほぼ一定とみなせる。これがVBEの定電圧近似である。個別部品のBJTでよく使われる電流領域ではVBE≒0.6~0,7Vである。集積回路中ではもっと高い電流密度で使われるので、VBEが0.8Vを超えることも普通にあるという。

ここから出発すれば、入力抵抗r=ΔVBE/ΔIBは簡単に計算でき、r=VT/IBとなる。

同一トランジスタで異なる電流値で使うならΔVBE21=VT・ln(I2/I1)となる。

常温で電流が1桁変化するなら、VBEは約60mV変化する。これも簡単に計算できる。

トランジスタ、ダイオード特性を簡単な数式で比較的精密に表現できる式を用いての説明が、これからのアナログ回路技術の教育には必須であると思うアナログエンジニアである。欧米の本では、40年前からこの方法で記述されている。

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