SEEP回路の温度補償
SEEP回路(Single End Push Pull)では、静止電流の制御が重要である。リニア増幅器で出力を正負に跨って効率よく出力するためにnpn、pnpトランジスタをB級バイアスで使うが、0付近の出力を安定に得るには、pnpトランジスタとnpnトランジスタを貫流する静止電流を流す必要がある。
この静止電流を広い温度範囲で安定に流すことはSEEP回路にとって重要な課題である。
OPアンプなどの集積回路では、接合電圧2個分のバイアスをダイオード回路で与える。この温度特性を出力段の静止電流に相当する電圧およびその温度係数に精密に合わせるため、バイアス回路は注意深く設計される。互換OPアンプでもこの部分だけは各社のプロセスに合わせた回路としているために、種々のダイオード接続が用いられる。
単にダイオード2個、B-C接続したトランジスタ2個、1個のトランジスタのC-B間及びB-E間に抵抗を接続した回路などが使われる。
静止電流はバイアス回路電圧の120mVの差異により約1桁変化するので、このような回路手段で安定化を図っている。
個別部品を用いたSEEP回路では、バイアス回路と出力段の熱結合を十分密にすることはできないので、バイアス回路と出力段の接合電圧の特性もまた変化する。通常は、出力段に適度なエミッタ抵抗を付与することで安定化している。
もし、出力段が純ダーリントン接続であれば、接合4個分のバイアス電圧とエミッタ抵抗を使うが、奥の手として、接合電圧3個分のバイアス回路を使い、ダーリントン接続の2段目のB-E間に抵抗REを挿入する手段がある。
この方法によれば、静止電流は接合電圧1個分/2REでほぼ決定され、出力電流が大きくなったときに初めてダーリントンの2段目が動作する。
集積回路中では1/1000℃レベルまで各素子が同一温度になることを期待できるが、個別素子では接合-ケースまでの熱抵抗があるために、バイアス回路と出力段の温度は出力依存性を持つ。これを避けるための1手段として上記の回路手段もあり得る。
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