電子回路の解析精度
電子回路の設計では解析対象にも依存するが手解析、シミュレーションを問わず精度1%を達成するには多くの場合かなりの努力と技術が必要である。
たとえば、1石トランジスタ増幅器の増幅率の計算ではhFE、アーリー電圧、電源電圧、入力抵抗、信号源抵抗、出力負荷、各部の寄生容量などに加えて温度も正確でなければならない。
トランジスタの入力抵抗一つをとっても、ベース電流と温度に依存するし、エミッション係数も厳密に1とは限らない。しかも、自己加熱に伴う温度変化も無視できない。
データシートでは、各パラメータの相互関連の整合性が低いデータも存在する。それ故、アナログエンジニアはメーカーから公表されているデーターシートを鵜呑みにすることはまずやらない。回路製作のどこかの段階で主な項目のチェックを入れる。
通常の小信号トランジスタで1石増幅器を組んだ場合、利得も周波数特性も信号源インピーダンスの影響を強く受ける。
従って、周波数特性の定量的議論をする場合には、少なくとも信号源インピーダンスの明示がなければ、その解析、データーはほとんど意味をなさない。
トランジスタの入力抵抗hieを使った教本が多いが、ふつう、これはデーターシートに記載がない。自分で計算または測定すべき項目である。
多くの電子回路では、オペアンプ回路などの一部を除いて1%精度以下の解析はあまりやらない。それよりも、多くの特性項目のバランスを優先させた設計が重要である。
必要に応じ、必要な精度で回路モデルのパラメータを得る手段をもたなければ回路技術とは程遠い。
測定技術はどの工学でも必須の素養だと考えるが、この技術をもたない、この感性をもたない学卒者が現在は実に多いのである。大学教育はほんとに大丈夫?
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