擬似設計体験
電子回路教育において、回路構成と仕様を与え動作原理を説明し回路定数を求める過程は重要である。しかし、教える側としては、動かない定数、頑健な定数の組み合わせが出現するので、その添削は容易ではない。
部品も種々用意しなければならないし、求めた定数通りになっていない場合や結線ミスも存在するので、動かない場合の指導は大変な労力を要する。
例えば、無安定マルチバイブレータとチャージポンプ式で+電源から軽負荷の-電圧を得る課題では、企業の新人や数年経過した設計者の卵の方でも、2割が全く回路定数を決めることができず、5割が動くが問題を抱えた状態で何とか動作する。実用レベルの設計ができ形道りの試作品を作れるのは3割には満たない。某社での100時間かけての試みの結果である。
実回路を試作させるのは、部品数が少なく解析しやすい回路方式であっても膨大な時間が通常必要である。数人でグループを作って同様な設計を含む回路作りをさせても、あしかけ1カ月程度はかかる。
設計結果を確認する手段としては、回路シミュレータ(SPICE)がある。これは、教える側にとっては、かなりチェックしやすい。結線ミスや回路電圧・電流が即座に分かる。教えられる側にとっては、少ない訓練でシミュレータを使って設計結果を確認できる。(勿論、シミュレータでの対称発振回路の起動法は教えます)
動かない回路がなぜ動かないかの説明は非常に難しい。相手の理解できる概念からの説明になるが、大抵はその素養が不足しているからである。次に、問題点はふつう1か所ではないからである。
A4 1ページに書ける規模の回路で、動かない回路、特性の出ない回路を2-3時間で改良方法を見出すことは、アナログエンジニアもできる。これができなければ、技術指導にはならないのだ。
設計はホビーとは異なる。回路構成、回路定数は与えられない。仕様も必要十分ではなく、不足のこともあれば、過剰で解のないこともある。
設計とは、戦略性を帯びた強い意志を持った創造的作業である。しかし、アナログ回路はいまだに勘と経験がものを言う世界だと思っている管理職が多いのも事実である。
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