ダイオードの順逆特性
多くの電子回路本では最初の方にダイオードのV-I特性の図が挿入されている。ダイオードの順逆特性の図が案外不正確なものが見受けられる。
その最たるものは、原点付近で逆方向の漏れ電流が急増し、不連続になっているものである。大抵、電圧軸、電流軸とも方眼目盛であるが、尺度の記入はまずない。半導体メーカーの出しているデーターシートにもこのような図は存在するが、順方向の電圧目盛は0-2V程度であり、逆方向の電圧目盛は数10Vから数100Vである。
電流の尺度はダイオードの品種により異なるが、逆電流の目盛は順方向より3-4桁程度小さい尺度となっている。
第1象限と第3象限で異なる軸尺度を使用しているので、原点でダイオード特性の不連続が生じる。軸尺度を省略し、原点付近で漏れ電流が急増する図を解説なしに使えば、少なくとも初心者に誤解を与える不親切な表現だろう。
降伏点付近の丸みも問題である。一般のダイオードの降伏電圧は数10V以上あるので、実際の降伏特性は鋭く、方眼目盛なら丸みはほとんど見えない。何故にそのような図を書くのか?疑問を感じる。
順方向のV-I特性の曲線も不正確なものが多い。実ダイオードは放物線のような曲線には決してならない。小信号用ダイオードなら、普通、寄生直列抵抗が無視できる領域で使用するので、120mV/桁程度の強い指数関数となる。整流用ダイオードなら、直列抵抗が寄与する領域まで使うので、指数関数的に電流が流れ始め、大電流領域でほぼ直線となる。
たかが、ダイオードの特性図であるが、そこには著者の見識が現れる。図をなるべく正確に表現し、その後のモデル化に繋げていく。これがアナログエンジニアの意地、拘りである。
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