温度補償形?バイアス回路
電流帰還形エミッタ接地回路に温度補償したと称する回路形式で、電源VCCを抵抗R1とR2で分圧し、分圧点をベースに接続、エミッタ・コレクタに抵抗RE、RCを接続した回路に、R2側にダイオードを挿入した形式の回路。
これで、バイアス回路のVBE温度補償を行えるとされる。
ダイオードの入った分圧回路の温度特性は、(VCC-VJ)R2/(R1+R2)+VJ、整理してVJ・R1/(R1+R2)の温度特性となる。この回路ではR1:R2が10:1前後とやや大きめに取ることになる。すると、ベース端子での温度係数の絶対値はVJの約90%程度となる。
同じ電流なら、通常小信号ダイオードのVJ(順電圧)は小信号用トランジスタのVBEより数10mV大きいので、温度係数差は小さくなる方向で、VJとVBEの温度係数差は10%より小さくなる方向で、補償効果も高くなる方向である。
ダイオードが入っていなければ、R2に掛ける電圧は1.5V-2.0V程度にできるから、REには1V強の電圧を掛けることができ、温度100℃幅で考えた時、無信号時のコレクタ電流の変動は20%程度であり、少なめのエミッタ電圧で目的を十分達成できる。
従って、ダイオードを1石エミッタ接地回路に導入する必然性はほとんどない。それ故、部品数を増やしてまで温度補償はふつう行わない。
アナログエンジニアはこのような選択をすることはない。しかも、この回路を見かけたのは初心者向けの本である。
ダイオード、トランジスタのVBEの温度特性が-2mV/℃という固定概念に縛られているのではないか。VJもVBEもその温度係数は電流密度依存性があり、しかも、同一の温度係数となる順電圧が約50mV異なる。
もちろん、プッシュプル回路ではもっと精密な温度補償を行う必要性を承知している。
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