トランジスタのオン電圧
バイポーラトランジスタのVCE-IC曲線は1V以下の低コレクタ電圧領域でS字状のカーブを描く。コレクタ電圧VCEが0のときICはほぼゼロで、条件により異なるがVCE=0.1V前後までIC≒0の状態が継続する。さらにコレクタ電圧を上げていくとVCEの増加に対して直線的にICが増加、その後、hFEで決まるコレクタ電流の平坦部が現れる。
IC≒0を保つ電圧の上限はオン電圧と呼ばれている。飽和電圧とほぼ同じ概念だが、オン電圧はベース電流一定の条件でICが極端に少ないVCEなので、一般に飽和電圧(IC/IB=10あるいは5)の測定条件と異なる。
オン電圧は、品種、温度、ベース電流によって若干異なるが、アナログエンジニアが過去に測定した限りでは、数10mVから100数10mVのものが多かったと記憶している。
FETの場合は十分オンさせると、VDS-ID特性が直線的になるので、オン抵抗という概念が成立する。バイポーラトランジスタの場合には、コレクタ電流が減少しても残り電圧があるのでオン電圧と呼ぶものと私は思っている。
オン電圧の測定では、一定のベース電流を供給する定電流源と0VまでmV単位で設定できる安定化電源が必要である。この機材があれば、きれいなSカーブが得られ、オン電圧の意味を体感できる。
信号処理用途では、ベース電流を十分流した逆トランジスタ(コレクタとエミッタを入れ替えて使うトランジスタ)が使われることがある。逆トランジスタでは、オン電圧が1mVを切る条件がある。
VCE-IC曲線の原点付近の挙動は単純な式で表わせないが、美しい曲線である。
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