インバーテッド・ダーリントン
npnトランジスタとpnpトランジスタを組み合わせて電流増幅率hFEの高い等価トランジスタを得る回路手段である。等価トランジスタの極性は初段トランジスタと同じ極性になる。
初段トランジスタのベースが入力端子となり、そのコレクタCは異極性の2段目のベースに接続される。2段目のエミッタEは等価トランジスタのコレクタ、初段トランジスタのエミッタと2段目トランジスタのコレクタは共通接続される。
この接続の利点は、等価トランジスタのVBEが単体トランジスタのVBEと同等で、飽和電圧も単体トランジスタと同等である。品種数の少ない個別パワートランジスタでは、選択肢の狭まるパワーpnpトランジスタを使うことなく、pnpパワートランジスタを得ることができる。
さらに、リニアプッシュプル回路を構成するとき、発熱量の大きい2段目の接合温度の影響を無視してバイアス回路の温度特性を決めることができる。個別トランジスタでは、接合‐ケース間熱抵抗を無視できないので、通常のダーリントン接続では、2段目の接合-ケースの熱抵抗に起因して、バイアス回路の温度特性を正確に、2つの接合温度の和に対応するバイアス回路の温度特性に一致させることは困難である。このため、バイアス回路の温度特性を負の強めの温度特性になるように設計せざるをえない。
しかし、常にインバーテッドダーリントンが有利かといえばそうではないだろう。経験的にインバーテッド・ダーリントン接続の方が発振しやすいと感じている。しかも、布線=パターン依存性がある。このため、アナログエンジニアはインバーテッド・ダーリントンを使う際には、発振止めのRやCを追加できるように、あらかじめ捨てパターンを作成しておくことが多い。
物事には光と影がある。インバーテッド・ダーリントンは便利な回路手段であるが、私は常には使うことはしない。
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