導体抵抗
35μm銅箔パターンを使う基板では0.5mm幅、長さ10cmで導体抵抗は約0.1Ωである。従って、よほどの低抵抗を含まない限り回路屋は導体抵抗を無視して考える。
しかし、セラミック基板上の導体抵抗は通常幅の導体で長さ10cmで数Ωもあり、かつ温度係数も大きい。
導体抵抗が大きい回路では、いたるところに寄生抵抗が存在し、抵抗の絶対値やその温度係数も変わってくる。素子間の共通配線を介し、クロストークも大きくなる。精密回路では、抵抗の絶対値やその温度係数に対する要求水準が高くなるので、導体抵抗の許容水準が高くなる。
スルーホールは孔サイズにも依るが20mΩ程度ある。セラミック基板上ならクロスオーバー、シリコンならエミッタ拡散を使ったクロスアンダー部分なども問題だ。
普段、導体抵抗を無視してレイアウトしている回路が、導体抵抗が大きくなると回路レイアウト技術が回路性能に大きく影響する。
このような状況下では、各抵抗性能の変化やコンデンサへの過渡電流など考慮する必要のある項目が激増する。
アナログエンジニアはセラミック基板上の混成集積回路設計の際に、無視できない導体抵抗の問題に出逢った。
導体抵抗を無視しない回路設計は、レイアウト設計まで回路設計者が責任を持つということだ。導体幅、導体の引きまわし、交差部の設け方など細かい注意と検討が必要になる。
一度、極端な事例に出会うと、導体抵抗あるいは導体インピーダンスの問題に敏感にならざるを得ない。そして、GNDライン、電源ラインの布線方法にも多くの示唆を与えてくれる。
多くのアナログ回路では、パスコンを使って高周波電流を流すループを局在させる戦略をとる。また、電源の給電点とGND位置も重要な課題となる。通常は大電流が流れる出力段周辺に給電点を設ける方式:梯子形レイアウトが有力だが、スター配置を取らざるを得ないこともある。べたアースは電流の流れを把握しにくいので案外効果を上げにくい。
導体抵抗をどこまで考慮するかは、扱う信号レベル(電圧、電流)や周辺回路のパワーにも依存する。
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